マツダCX-5 プロトタイプ試乗会【試乗記】
話題の多いSUV 2011.10.05 試乗記 マツダCX-5 プロトタイプ(SKYACTIV-G 2.0搭載車/SKYACTIV-D 2.2ハイパワー搭載車)マツダの次世代技術を満載したという、新型SUV「CX-5」。『webCG』のコンドーと関が、そのプロトタイプに試乗。仕上がり具合をチェックした。
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次世代技術、全部入り
関(以下「せ」):今日テストするのは、まだ発売されてないクルマ。フランクフルトモーターショーでお披露目されたばかりの、「マツダCX-5」です。
コンドー(以下「コ」):う〜ん、白黒ブチのボディーカラーが斬新過ぎるような……!?
せ:これはプロトタイプですから。市販モデルは、鮮やかな青や赤が選べるみたいですよ。今回は、クローズドサーキットで、発売前のお忍び試乗会というわけで。
コ:擬装のせいで面の構成がわかりにくいけど、全体的に躍動感あるね。いかにも“スポーツ・ユーティリティ・ビークル”って感じや。
せ:真横から見ると、フロントフェンダーの盛り上がりやリアに向かって跳ね上がるキャラクターラインなどは「デミオ」にも似てますね。
コ:目つきからして、“ヤル気まんまん”。ホイールもでかいなぁ!
せ:エクステリアデザインのモチーフは、動物のチーターだそうです。その19インチホイールはオプションで、標準はふたまわり小さい17インチ。で、18はナシ。
コ:よう見たら、白黒がチーター模様になってるわ。それにしても、兄貴分の「CX-7」と似てんのは名前だけやな。まぁ、あれからもう5年近くたってるし。「CX-5」はいかにも今風。
せ:インテリアは、ちょっと“今まで風”かなぁ……。わりとコンサバティブな印象です。
コ:奇抜やったらええってもんでもないやろ。でも、はっきりオトコくさい。マツダらしいというか。シフトレバーに「SKYACTIV DRIVE」って書いてあるのは……?
せ:「マツダの次世代環境技術、スカイアクティブ入ってます!」。
コ:ハイブリッドとかの“飛び道具”使わずに、いままでの技術を磨き上げて同じだけの燃費を……ってやつやな。「デミオ」のマイナーチェンジから、新グレードとして盛り込まれてきた。
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せ:9月にマイナーチェンジした「アクセラ」では、その2リッターバージョンも登場しました。ダイレクト感がウリの新しい6段オートマ、「SKYACTIV-DRIVE」も搭載されましたね。
コ:それが「CX-5」にもまるまる載ってるわけや。でも、いままでのは追加グレード扱いやったけど、これは完全なニューモデルなわけやし……。
せ:一連のスカイアクティブ・テクノロジーで最新のメニューとなる、新しい排気系が採用されています。4気筒エンジンの排気管が、4→2→1で連結されていて、アクセラ(12.0)を上回る14.0の高圧縮化を実現したのがポイント(欧州仕様車)。もっとも、レギュラーガソリンが支持される日本向けの仕様は13.0にとどまりますが。
コ:排気管の取り回しまで見据えた新シャシー作ったからできたっちゅうわけか。パワーも燃費も欧州仕様のほうが上行ってるみたいやけど、ランニングコスト考えたら、ハイオクってどうしても抵抗あるよな。
せ:今回はサーキットだから燃費のテストはできませんけど、そこは新設計のニューモデル。マツダの主張する「気持ちのいい走り」がどんなものか、試してみましょう。
「キビキビ」から「しなやか」へ
コ:地味に思えたインテリアも、いざエンジンかかるとコクピットぽくっていい感じ。華はないけどスポーティ。
せ:「CX-5」の開発担当主査は、「(ユーノス・)ロードスター」や「RX-8」の開発にも携わった方なんですよ。
コ:それは関係あるかわからへんけど、加速はなかなかのもん。低速からトルキーっていうだけのことはあるね。
せ:0-100km/hの加速タイムは、ライバル「フォルクスワーゲン・ティグアン」や「トヨタRAV4」の同等グレードをしのぐ9.2秒。自社の「アテンザ」などに使われていたこれまでの2リッター直4ガソリンエンジンに比べても、トルクが全域でアップ。ピーク値は15%も増しているそうです。
コ:いまどきのSUVらしく腰高感はない。せやけど、“コシ”のほうはしっかりある。
せ:コーナリングだけじゃなくて、「走る・曲がる・止まる」のそれぞれについてGの立ち上がりが滑らかになるよう配慮されたということで。
コ:そうそう! いままで、「ロードスター」にしろ「マツダスピードアクセラ」にしろ、スポーティなマツダというと、キビキビし過ぎなところがあった。ワッと加速して、ギュッと切れて……。
せ:ときにわざとらしいというか、不自然に感じられたり。「CX-5」にそういう違和感はないですね。しなやかといえばいいのか。聞けば、コンパクトミニバンの「プレマシー」から、走りの質についての考え方そのものが変わったそうですよ。
コ:新設計のシャシーにも、何か新しいヒミツがありそうや。
せ:プラットフォームを前後に貫く主要なフレームをそれぞれ直線的に配置することで、強度を上げながらも軽く仕上げたそうです。車重は未公表ですけど、前後両端に置かれるバンパーフレームが20%(4.8kg)軽くなったのも大きいとか。
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コ:そらコーナリングに効いてきそうや。「CX-7」もスポーティクロスオーバー名乗ってたけど、見た目だけやのうて、中身もえらい変わってる。
せ:実際、「CX-7」とはロールセンターの位置から違うんですよ。ちなみに「CX-5」の足まわりは、サマータイヤを履く欧州仕様とオールシーズンタイヤの北米仕様の2種類があって、日本は欧州と同じです。
コ:欧州やったらマニュアルも選べるんやろなあ。そういえば、新オートマ「SKYACTIV-DRIVE」って、いままでのとどう違うん?
せ:動力を媒介する主役を、液体を使ったトルクコンバーターから多板クラッチに変えたことで、ロックアップ領域を大幅に増やしてるんです。
コ:スリップ感が抑えられてるわけか。サーキット走ってるとあまり違いがわからへんけどね……それだけ“デキる黒子”になってるゆうことで。
せ:あと、欧州といえばディーゼルモデル。「CX-5」では、日本にもディーゼルが導入されるって噂もありますよ。
コ:ほんまかいな!? それは乗ってみな……!
本命はディーゼル!?
せ:「SKYACTIV-D 2.2」搭載モデル、外観も内装も特にガソリンモデルと変わらないものの――
コ:この加速フィールは、すごいね! ガソリンエンジンから乗り換えると、完全にクラスが違う感じ。
せ:「V8ガソリンエンジン並み」って、いうだけのことはありますね。2基のターボで過給されるディーゼルの最大トルクは42.8kgm/2000rpm。ガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.0」(21.4kgm/4000rpm)の倍の太さで、発生回転数はなんと半分!
コ:スペック見んでも、乗れば納得。ただし、V8サウンドはないけどね。
せ:逆に、低速でもディーゼル特有のガラガラしたエンジン音は気になりません。ガソリンの「SKYACTIV-G 2.0」にしても、音は官能的なわけじゃないから、純粋にパワーの差だけが意識されますね。
コ:ステアリングやブレーキのフィールが自然な感じに仕上がってる「CX-5」だけに、思いのままに加速できるディーゼルのほうが車体に合ってるように思えるな。
せ:ディーゼルはレブリミット低いから、使いきれる満足感も得られるんでしょう。トータルで、ディーゼルのほうが断然気持ちいい。これぞ、Zoom-Zoom。
コ:ディーゼルもしっかりアイドリングストップするしなぁ。復帰のスムーズさも、ガソリンの「i-stop」と変わらへん。もう当たり前の技術になりつつある。
せ:燃費(欧州NEDCモード:発売時目標値)は、最大トルクが38.9kgmと少しだけおとなしい「スタンダードパワー」仕様のディーゼルで22.2km/リッター。ガソリンエンジンの同値は16.6km/リッターですから、3割以上のアドバンテージ。日本じゃ、軽油はレギュラーガソリンよりリッター20円くらい安いし……。
コ:もし発売されたら、めちゃくちゃ魅力的やん。ガソリン車よりも高いやろけど、イチオシ決定やろ。でも、規制とかいろいろあって無理なんちゃう? 周り見ても、ディーゼル車なんてほとんどないし……。
せ:そこが「CX-5 SKYACTIV-D 2.2」のすごいところで。一連の環境技術で、日本の「ポスト新長期」や欧州の「Euro6」といった最も厳しい規制をクリアできてるんだそうですよ。他社が採用しているリーンNOx触媒や尿素SCRシステムにも頼ることなく。
コ:こりゃ、予想以上に大物かもなぁ! それに、よく見れば乗用車としてのポテンシャルも高そうやで。サイドミラーをドアパネルから生やしたりして、Aピラーまわりの視界もバッチリ。路面が滑らかなサーキットじゃ乗り心地はキッチリ評価できへんけど……。
せ:なにげに荷室も広かったりして。リアシートは3分割式(4:2:4)。使えて遊べるSUVとしても、ポイントが高い。
コ:来春発売ってのはじれったいけど、年末の東京モーターショーに出展されるはず。擬装のない姿をチェックしながら、一般道で乗れる日を楽しみに待つとしよか!
(文=webCG近藤俊&関顕也/写真=マツダ、webCG)

近藤 俊

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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