MINIクーパーD クロスオーバー(FF/8AT)
我慢いらずのMINI 2017.06.02 試乗記 フルモデルチェンジでさらに大きくなった「MINIクロスオーバー」に試乗。ベーシックな「クーパーD」グレードで素の実力を……と思いきや、試乗車には100万円分以上のオプションがてんこ盛りで、価格はなんと500万円オーバー! こちらの取捨選択についても真剣に考えた。大きくてもきちんと“MINI”
BMWはSUV(スポーツ・ユーティリティー・ヴィークル)に対し、SAV(スポーツ・アクティビティー・ヴィークル)という独自の呼称を使う。同グループのMINIシリーズにもそのルールを適用、2011年に初のSAV、MINIクロスオーバーを発売した。発売当初、「ハッチバックのMINIですら小さくないのに、これはいよいよMINIじゃない」と嘆く人もいないわけではなかったが、喜んで買う人がその何倍もいて大ヒット。BMWのマーケティングの正しさが証明された。そうあるべきかどうかは別にして。また日本ではクロスオーバーがMINI初のディーゼルモデルとなったので、「ハッチバック」を上回る人気を博した。
初代クロスオーバーは、MINIをそのまま膨らませたようなデフォルメ感があったが、新型はMINIであるということにとらわれず自由にスタイリングしたように見える。もはやハッチバックには似ていない。MINIシリーズの一員としてどうかというより、純粋にカッコイイSUVを目指したらこうなったという感じだ。高い金を出してMINIブランドを手中に入れたBMWにしてみれば、われわれがMINIと呼べば、それはなんであれMINIなのだということなのかもしれない。サイドウィンドウ・グラフィックのリアクオーター部分だけ一段下がっているデザインをはじめ、そこかしこに初代から続くモチーフがちりばめられており、MINI一族だということがひと目でわかる巧妙なデザインだ。
先代クロスオーバーに比べ、全長が195mm、全幅が30mm、全高が45mm拡大した結果、全長×全幅×全高=4315×1820×1595mmに。試乗前の説明では、比較対象として、「メルセデス・ベンツGLA」(同4430×1805×1505mm)、「アウディQ2」(同4200×1795×1530mm)、「フォルクスワーゲン・ティグアン」(同4500×1840×1675mm)が挙げられていた。このあたりがMINIが考えるライバルというわけだ。「プジョー3008」も入れてあげてほしかった。サイズだけでいえば「トヨタC-HR」もここに入る。
ディーゼルエンジンの進化に感服
では乗ってどうか。日本仕様はクーパーD、「クーパーD クロスオーバーALL4」「クーパーSD クロスオーバーALL4」「クーパーS EクロスオーバーALL4」の4モデル。プラグインハイブリッド車のクーパーS EクロスオーバーALL4を除くと、あとはすべてディーゼル。今回は一番ベーシックなクーパーDに乗った。他のMINIですでに感じていたことだが、ディーゼルエンジンの出来が先代クロスオーバーよりも数段よくなった。まず振動が減った。新型のエンジンは、ガソリン直噴4気筒でもこれくらい振動するエンジンはいくらでもあるよねという程度の振動に抑えられている。音もしかり。ガラガラと典型的なディーゼルノックが聞こえていたのも今は昔で、新型は始動直後も、アイドリング時も、高回転まで回したときも静かだ。
角度が立ち気味のフロントウィンドウが良好な視界をもたらすので運転しやすい。ステアリングは相変わらずリムが太めで、昔ほどではないけれどやや重め(アシスト少なめ)でもある。操作に対して忠実な、素直なハンドリングに終始する。あえてラフな操作をしてみても、正確に挙動となって表れるだけで、まず取っ散らかることはない。ハッチバックはどのエンジンを積んだモデルであっても、マジになって山道を駆け回ると楽しいが、見た目からもわかるように、クロスオーバーはそういうのじゃない。ディーゼルの太いトルクを生かして、高速道路を低い回転を保って遠くまで巡航するような使い方がぴったりだ。うれしいことにACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)が全車標準装備。これを使うと使わないとでは目的地へ着いた時点での疲労度が違う。
サイズがアップした分はちゃんと室内空間の拡大に生かされている。先代よりも格段にリアの足元が広い。ハッチバックに毛が生えたようなラゲッジ容量しかなかった先代から打って変わって新型は100リッターアップの450リッターが確保される。リアシートバックは40:20:40の分割可倒式なので、人と荷物によってスペースを配分することができる。新型には「ピクニック・ベンチ」がオプションで用意される。ラゲッジから車外に垂らすように使うのだが、人のお尻と太ももがくるあたりにソフトパッドが仕込まれていて、座りやすい。ここに座って釣りをしたい。1万6000円なのでオススメ。
オプションについて真剣に考察する
MINIのオプション戦略について、いつもは「魅力的なオプションが多数用意されているが、よく考えないでどんどん装着すると高価になるので要注意」と書いてお茶を濁すのだが、今回はテスト車に装着されていたオプションを紹介し、あくまで個人の見解として、自分なら付けるかどうか、じっくり検証してみよう。
まずは内外装関連。「アイランド・ブルー・メタリック」(7万6000円)→ボディーカラーは全7色。うち4色が有償。ひとけた万円なら頑張って好きな色を選びたい。「ホワイト・ボンネット・ストライプ」(2万円)→代表的なカスタマイズだが不要。もう45歳だし。「レザー・チェスター:ブリティッシュ・オーク」(43万7000円)→いい色で肌触りもよく、シートヒーターも付くので欲しいがいかんせん高すぎる。「カラー・ライン:ブリティッシュ・オーク」(1万5000円)→シートと同じ色の内装パーツ。レザーシートを付けるのならこっちも付けてコーディネートしたい。「ピクニック・ベンチ」(1万6000円)→前述した通りこれは欲しい。
続いて操作系。「MINIドライビング・モード」(2万9000円)→ドライビング・モードはドライバーが運転によって変えるべきだ。不要。しかも「DDC(ダイナミック・ダンパー・コントロール)」(7万7000円)とセットで付けないと乗り味はさほど変わらないと思う。なぜかテスト車はオプションてんこ盛りなのにDDCは付いていなかった。「ヘッドアップ・ディスプレイ」(7万6000円)→不要。ガラス投影型なら考えるが、プラスチックに映すタイプはMINIに限らず見やすいと思えない。「パーキング・アシスト・パッケージ」(5万4000円)→駐車時にステアリングを自動で操作してくれるシステム。不要。まだ45歳だし。「アダプティブLEDヘッドライト+LEDフォグランプ」(14万3000円)→これは夜間の視認性が明確に向上するので必要。
あえてボトムグレードを選ぶ理由
そのほかはどうか。「ハーマンカードン製HiFiラウド・スピーカー・システム」(12万3000円)→AMラジオしか聴かないので不要。「アラーム・システム」(5万5000円)→楽しいオプションではないが、シャッター付きガレージがないので必要。そして「PEPPERパッケージ」(19万8000円)→これが関連性のないモノをひとつにまとめたなかなかのくせ者で、PDC(パーキング・ディスタンス・コントロール)リア、リアビュー・カメラ、オートマチック・テールゲート(イージーオープナー機能付き)、ETC車載器、エキサイトメント・パッケージ(オーディオ操作やエンジン回転数などによって丸いセンター・ディスプレイの周囲のLEDがいろんな色に光る仕掛け)の組み合わせ。PDCリアとリアビュー・カメラはどっちかだけでいいのだが。エキサイトメント・パッケージは最も不要。というわけでこのパッケージは選ばず、社外品でいいからETC車載器だけ装着するとしよう。
選んだ4点だけでも29万円の上乗せとなる。テスト車の通りにオーダーすると、実に124万2000円高。価格は大台超えの510万2000円に達する。サイズはともかく価格がMINIじゃない。とはいえオプションを吟味するのは楽しい時間だ。納車前から楽しいのもMINIの魅力のひとつなのかもしれない。好みのオプションをたくさん付けたいがために一番安いクーパーDを選ぶというのも、いわゆるひとつのワイズスペンディングではないだろうか。
(文=塩見 智/写真=田村 弥/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
MINIクーパーD クロスオーバー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4315×1820×1595mm
ホイールベース:2670mm
車重:1540kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:150ps(110kW)/4000rpm
最大トルク:330Nm(33.7kgm)/1750-2750rpm
タイヤ:(前)225/55R17 97W/(後)225/55R17 97W(ブリヂストン・トランザT001)
燃費:21.2km/リッター(JC08モード)
価格:386万円/テスト車=510万2000円
オプション装備:アラーム・システム(5万5000円)/ホワイト・ボンネット・ストライプ(2万円)/ピクニック・ベンチ(1万6000円)/MINIドライビング・モード(2万9000円)/パーキング・アシスト・パッケージ(5万4000円)/ヘッドアップ・ディスプレイ(7万6000円)/ハーマンカードン製HiFiラウド・スピーカー・システム(12万3000円)/カラー・ライン:ブリティッシュ・オーク(1万5000円)/レザー・チェスター:ブリティッシュ・オーク(43万7000円)/ホワイト・ルーフ&ミラー・キャップ(0円)/PEPPERパッケージ<PDCリア+リアビュー・カメラ+オートマチック・テールゲート:イージー・オープナー機能付き+ETC車載器+MINIエキサイトメント・パッケージ>(19万8000円)/アダプティブLEDヘッドライト+LEDフォグランプ(14万3000円)/メタリックカラー:アイランド・ブルー・メタリック(7万6000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト車の走行距離:1539km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
スズキDR-Z4S(5MT)【レビュー】 2026.1.7 スズキから400ccクラスの新型デュアルパーパスモデル「DR-Z4S」が登場。“Ready 4 Anything”を標榜(ひょうぼう)するファン待望の一台は、いかなるパフォーマンスを秘めているのか? 本格的なオフロード走行も視野に入れたという、その走りの一端に触れた。
-
NEW
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。 -
第858回:レースの技術を市販車に! 日産が「オーラNISMO RSコンセプト」で見せた本気
2026.1.15エディターから一言日産が「東京オートサロン2026」で発表した「オーラNISMO RSコンセプト」。このクルマはただのコンセプトカーではなく、実際のレースで得た技術を市販車にフィードバックするための“検証車”だった! 新しい挑戦に込めた気概を、NISMOの開発責任者が語る。 -
ルノー・グランカングー クルール
2026.1.15画像・写真3列7座の新型マルチパーパスビークル「ルノー・グランカングー クルール」が、2026年2月5日に発売される。それに先駆けて公開された実車の外装・内装を、豊富な写真で紹介する。 -
市街地でハンズオフ運転が可能な市販車の登場まであと1年 日産の取り組みを再確認する
2026.1.15デイリーコラム日産自動車は2027年に発売する車両に、市街地でハンズフリー走行が行える次世代「ProPILOT(プロパイロット)」を搭載する。その発売まであと1年。革新的な新技術を搭載する市販車の登場は、われわれにどんなメリットをもたらすのか。あらためて考えてみた。













































