スバル・レヴォーグ1.6GT-S EyeSight(4WD/CVT)/レヴォーグ2.0GT-S EyeSight(4WD/CVT)/WRX S4 2.0GT-S EyeSight(4WD/CVT)/WRX STI Type S(4WD/6MT)
スバルはこうでなくちゃ 2017.07.21 試乗記 商品力を高めるべく、大幅改良が施された「スバル・レヴォーグ」「WRX S4」「WRX STI」。シンメトリカルAWDとターボエンジンが組み合わされた走り自慢の3モデルだが、実際に触れてみると、走り以外にも随所に“スバルらしさ”が見受けられた。似ていないけど実は兄弟
静岡は修善寺のサイクルスポーツセンターで、レヴォーグとWRXシリーズの試乗会が開かれた。5月下旬から7月初めにかけてマイナーチェンジが発表された、いずれもシリーズ最新モデルだ。試乗会といっても、1周5kmの自転車レース用周回路を1台2周というチョイ乗りだったので、試乗記としてまとめられるほどの経験はできなかったが、スバルのアツいエンジニアの話が聞けて、新型アイサイトの新機能も一部体験できた。
そもそもレヴォーグとWRXという、キャラの違うクルマのイベントをなぜ一緒にやるのか。実はこの2台、もともと「インプレッサ」がベースのプロジェクトだから、開発スタッフがかなりオーバーラップしているのだという。インプレッサはまったく別チームだが、レヴォーグとWRXは見た目の似ていない兄弟、みたいな認識が社内にはあるらしい。中川家みたいなものか。
今回、レヴォーグはスバルいわくビッグマイナーチェンジ相当の変更である。主要な機構的リファインのひとつは、あまり評判のよくなかった乗り心地に改善の手が加えられたことである。サスペンションストロークの延長やダンパー減衰力の最適化、あるいはリアスタビライザーの直径を細くしたり、ピローボールをゴムブッシュにデチューン(?)したりするなど、細かな見直しが図られている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
細部に宿る安全思想
新型レヴォーグの説明会を聞いて驚いたのは、これまでの販売モデル構成だ。2016年6月に追加した1.6リッターおよび2リッターの「STI Sport」が、なんと4割以上を占める売れ行きだという。足まわりを強化したSTI Sportは、カタログも別立てになる高付加価値モデルで、新型は1.6リッターで356万4000円、2リッターは405万円する。最初、せいぜい1割強と見積もっていたメーカーとしては、笑いが止まらない誤算だろう。
レヴォーグには、ベンチマークが存在しないという。直接比較できるライバルがいないからだ。300ps(2リッター系)の4WDステーションワゴンというと、「アウディS3スポーツバック」(290ps)と「フォルクスワーゲン・ゴルフRヴァリアント」(310ps)が近いが、どちらも価格は600万円クラスである。
だが、いまでもステーションワゴン文化が残る欧州勢の動きは注視しているという。そんな姿勢を実感させるアップデートのひとつが、荷室の使い勝手向上だ。
荷室側壁のリモートレバーでできる後席の分割可倒が、6:4の2分割から、4:2:4の3分割になった。しかも、バネで倒すメカにシリコンダンパーを入れ、倒れる際、バタンと一気に行くのではなく、途中からゆっくり動くようにしてある。重さのある後席背もたれが倒れる際の“危害性”を最大限排除しようという「安全のスバル」らしい工夫である。
充実装備も過信は禁物
新型レヴォーグとWRXシリーズで新登場したフロントビューモニターを、レヴォーグで体験した。フロント六連星エンブレムの下に埋め込んだ広角カメラで、運転席からはまったく見えないノーズ左右の映像をモニターに映し出す。
車庫が道路に直角に配置されているため、出口に凸面鏡を備え付けている家がよくある。鏡は付けていないが、筆者のところもまさにこれで、「来てたら、鳴らしてね」の他力本願でそろりそろりとノーズを出す。このお悩みを解消してくれるのがフロントビューモニターである。モニターの近くにあるボタンでオン/オフができる。欲を言えば、広角レンズのゆがんだ画像を補正して見せてくれると、なおよかった。
レヴォーグとWRX S4に初めて標準装備された後退時自動ブレーキ(RAB)も試した。リバースギアに入れ、ブレーキペダルから足を放し、クリープのスピードでバックすると、障害物の直前で止まった。かなりの衝撃を伴うパニックストップである。
雑誌の撮影で位置決めをしているとき、停車中の国産高級車の運転席にいて、バックしてくるドイツ製スポーツカーにぶつけられたことがある。両方とも撮影用に借りているクルマだった。予防安全装備てんこもりの高級車でも、こういうケースではまったく無力である。なんで“バリアー”が付いていないんだ! と思った。一方、スポーツカーに後退時自動ブレーキが付いていたら、起きないはずの事故だった。
ただ、RABは万能ではない。このシステムが想定しているのは、壁のような、ソナーが反応しやすい障害物である。人やポールなどを感知するかどうかは保証していない。過信は禁物。転ばぬ先のつえがひそかに装備された、くらいの気持ちでいるのが正しいだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
この姿勢に“スバル”を感じる
周回路では、レヴォーグの「1.6GT-S EyeSight」と「2.0GT-S EyeSight」のあと、WRXの「S4 2.0GT-S EyeSight」と「STI Type S」に乗った。
S4に乗り換えて、まずスラロームを抜け、オープンコースに出た瞬間、やっぱりスバルはこれだあ! と思った。
WRXと「レガシィツーリングワゴン」を掛け合わせたのがスポーツツアラーのレヴォーグである、なんて説明されたって、しょせんはツアラーだ。それと比べたら、WRXはハコのスポーツカーである。思わず笑ってしまうほどの自在感。やはりレヴォーグとWRXはこんなにキャラが違う、ということを実感したのが、個人的にはこの試乗会の一番大きな収穫だった。
308psの2リッターフラットフォーを6段MTで操るWRX STIは、ホイールが新たに19インチ化され、ブレンボのブレーキもさらに強化された。センターデフの差動制御を改良し、結果としてアンダーステアが減り、チーフエンジニアいわく「どこまでもハンドルがきれて、どこまでもアクセルを踏み続けることができる」クルマになったという。
スバルは、ドイツの『アウトモートア・ウント・シュポルト』誌のスラローム試験を操縦性の評価に使っている。技術説明会では、そのスラロームテストで計測した他社AからFまでの6台と新旧STIの比較データが公開された。
新型STIの通過速度69.8km/hは、旧型より1.4km/h速くなった。69km/h台には3台が並んでいるが、その棒グラフで、1台だけ飛び抜けて速いのがF車で、74.4km/hをマークしている。筆者の独自調べでF車の正体は判明したが、それだけの大差で負けているクルマのデータを見せてしまうのがスバルらしいと思ったし、まったくクラスの違うポルシェ911カレラ4(あっ、言っちゃった)まで“見ている”のもスバルらしいと思った。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
スバル・レヴォーグ1.6GT-S EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1780×1500mm
ホイールベース:2650mm
車重:1560kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:170ps(125kW)/4800-5600rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1800-4800rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:307万8000円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
スバル・レヴォーグ2.0GT-S EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1780×1490mm
ホイールベース:2650mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:300ps(221kW)/5600rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-4800rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:13.2km/リッター(JC08モード)
価格:361万8000円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
スバルWRX S4 2.0GT-S EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4595×1795×1475mm
ホイールベース:2650mm
車重:1540kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:300ps(221kW)/5600rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-4800rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:12.4km/リッター(JC08モード)
価格:373万6800円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
スバルWRX STI Type S
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4595×1795×1475mm
ホイールベース:2650mm
車重:1490kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:308ps(227kW)/6400rpm
最大トルク:422Nm(43.0kgm)/4400rpm
タイヤ:(前)245/35R19 89W/(後)245/35R19 89W(ヨコハマ・アドバンスポーツV105)
燃費:9.4km/リッター(JC08モード)
価格:406万0800円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
NEW
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。 -
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る?
2026.10.14デイリーコラムこれまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。 -
第132回:軽EVのデザインを考える(前編) ―「スズキeスカイ」にみる“大衆車メーカー”スズキのスゴみ―
2026.10.14カーデザイン曼荼羅希代の凡作か? 実はすべてが計算のうちか? スズキ初の軽乗用電気自動車「eスカイ」の造形を、カーデザインの識者と考察。つかみどころのないイメージの背景にある、“大衆車メーカー”スズキの慧眼(けいがん)に思いをはせた。 -
先進のSUV「エクストレイル」という選択
2026.10.13SUVのフロントランナー 日産エクストレイルの魅力に迫る<AD>4代・四半世紀にわたって進化を重ね、SUVブームのなかでも開拓者であり続けてきた「日産エクストレイル」。その先進技術がもたらす“乗ればわかる喜び”とは? 最新世代の到達点について、詳しくリポートする。






















































