MINIクーパーS EクロスオーバーALL4(4WD/6AT)
なるべく電気で走りたい 2017.08.25 試乗記 「MINIクロスオーバー」に追加された新グレードにして、MINI一族にとって初のプラグインハイブリッド車である「MINIクーパーS EクロスオーバーALL4」。前輪をエンジンで、後輪をモーターで駆動する独自のパワープラントがもたらすドライブフィールをリポートする。前輪で走ったり、後輪で走ったり
結論からいうと、このクルマに乗っていてゴキゲンなのはリア2輪駆動車になっているときである。つまり電気自動車モード。リアアクスル後ろ側のフロア下にあるリチウムイオン2次電池(総電力量7.6kWh)の電力を使って、電気モーターで後ろ2輪を駆動する。フル充電状態からのEV走行可能距離は、公称値で42.4km。実際の路上でそれが何kmになるかは、もちろん走りかたや交通状況その他による。
今回私がクルマを預かった時点で、リチウムイオン2次電池の電力残量は5%とかそのぐらいだった。動力やエネルギー関係のマネジメントのモードは「AUTO eDRIVE」。簡単な話おまかせモードで、それをそのまんま。
駆動用バッテリーの電力残量が5%ぐらい(かそれ未満)のときでも、発進はFR。電気。スッと速度が乗ったところで内燃機関が目覚め、そっちへ仕事が引き継がれてFF車になる。切り替わりはスムーズで、気持ちいい。赤信号でアクセルペダルから足を離すと、回生ブレーキ。利き具合は、何年か(何年も?)前に乗った「MINI E」の場合(最大0.3G)と比べて弱い。「日産ノートe-POWER」のエコモードと比べても弱くて、つまりワンペダルドライブにバッチリなタイプではない。といってスーッと空走しちゃうのがコワい感じでもなく、要はフツー。平日昼間の駒沢通り→山手通り→目黒通り→円融寺通り……というようなルートを走って、残量は5%あたりから特に目立って増えもせず、減りもせず。サステイナブル。
ファミリーカーとして使える
第一印象、このMINIはずいぶんフツーだなあ、と思った。フツーでイイ。ハンドルの手応えなんかもふくめて、いわゆるゴーカートフィーリング系とはちょっとかもっと、違う感じ。“クーパーS”なのに。乗り心地に関しては、大容量のバッテリーや電気モーターが搭載されたことによるバネ上重量の増大が効いている印象がある。タイヤの感じもイイ感じ。車検証記載の車両重量は1770kgで、うちわけはフロント930kg+リア840kg。そこから計算して小数点以下第2位を四捨五入すると、52.5対47.5。車重1.8t弱で前後重量配分の数字の額面がFR車のそれみたいなMINIは、あまりフツーではない。
MINIはテーマパーク性の強いクルマである。ただの道具ではなく、いわばMINIランド。それがよくて買い、乗る。このクロスカントリーも大筋しっかりそのセンに沿ったものではあるけれど、ただしやはり、いろいろとフツー。一家に1台のクルマとして使えるようになっているところも、そのフツーさの一部といえる。一家に1台のクルマとは、すなわちファミリーカー。例えばの話、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」にガチで競合できそうなクルマをMINIのなかから1台あげるとしたら、それはクロスオーバーであろう。あるいは、ポルシェにおける「カイエン」や「マカン」のような存在だと考えてもそんなに大間違いではないはずだ。MINIのクセしてミョーにデカい。クロスオーバーの場合、そのデカさは必要なデカさだといえる。
“駆動方式が変わる”ことのジレンマ
MINIって、こんなもんなのか? 高速道路を走っていて、そう思った。具体的には、頭が左右に揺すられるのが気になる。フラッフラッ。それと、ビシッと真っすぐ走ってくれる感じがいまいち足りない印象もある。わかりやすいようにいってしまうと、乗っていて酔いそうになる方向。車体がしっかりしている感じとか、1.8t弱もあるのに1.5リッター+ターボでまあちゃんと走るとか、感心のしどころはある。あるけれど、いいほうの印象というのはある意味、残らない。あるいは、意識の表面に近いほうへ出てきにくい。よくてアタリマエ、的な。
ただし、電気自動車モードで走ると印象が一変する。内燃機関車モードで走っていたときとはちょっと別モノみたいにピシッと真っすぐ走るし、それと頭の揺すられる感じがなくなる。酔いそうな感じが消えて、アタマがスッキリ。その違いが一番わかりやすいのは高速巡航で、もっというと80km/hから100km/hにかけてのあたり。内燃機関車モードで走って残念なところが一番わかりやすいのがそのへん、ということでもある。内燃機関車モードでも、もっと速度を上げてしまえば、ツラさのピークを超えてラクになる。
せっかくプラグインハイブリッドなのだから、できるだけEVモードを有効活用したい。それはアタリマエとして、このクルマの場合はもっと切実にそう思わせるものがある。高速巡航の時間をどれだけ長く電気自動車モードですごせるか。MINIのPHEVを気持ちよく使うにあたっては、そこがひとつキモになる。
前後重量配分の数字の額面だけをみたらFR車としか思えないようなクルマが、あるときはリア2輪駆動車として走り、あるときはFF車として走る(内燃機関+電気機関のタンデムで4輪駆動車になるときもある)。走りや乗り心地の仕上げの焦点をどこにどう合わせるか。シロート考えでも難しい仕事っぽい。どの状態だろうとバッチリなのがベスト。いうのは簡単。
(文=森 慶太/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
MINIクーパーS EクロスオーバーALL4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4315×1820×1595mm
ホイールベース:2670mm
車重:1770kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:136ps(100kW)/4400rpm
エンジン最大トルク:220Nm(22.4kgm)/1400-4300rpm
モーター最高出力:88ps(65kW)/4000rpm
モーター最大トルク:165Nm(16.8kgm)/0-3000rpm
システム最高出力:224ps(165kW)
システム最大トルク:385Nm(39.3kgm)
タイヤ:(前)225/50R18 99W/(後)225/50R18 99W(ピレリPゼロ)
燃費:17.3km/リッター(ハイブリッド燃料消費率、JC08モード)
価格:479万円/テスト車=582万6000円
オプション装備:ボディーカラー<メルティングシルバー・メタリック>(7万6000円)/レザー クロスパンチ カーボンブラック<スポーツ・フロントシート 左右>(38万8000円)/PEPPERパッケージ<アラームシステム+オートマチックテールゲート・オペレーション[オープン/クローズ]+PDC[パークディスタンス・アラート]リア+リアビューカメラ+MINIエキサイトメント・パッケージ+自動防眩(ぼうげん)ドアミラー>(19万8000円)/18インチアロイ ピンスポーク ブラック<7.5J×18 225/50R18>(1万3000円)/harman/kardon製Hi-Fiラウド・スピーカーシステム(12万3000円)/リアスポイラー(2万6000円)/カラーライン サテライトグレー(1万5000円)/ピクニックベンチ(1万6000円)/MINI Yoursインテリアスタイル ピアノブラック・イルミネーテッド(5万円)/パーキングアシスト・パッケージ(5万5000円)/ヘッドアップディスプレイ(7万6000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2201km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:329.1km
使用燃料:24.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.4km/リッター(満タン法)/13.8km/リッター(車載燃費計計測値)
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森 慶太
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