スズキ・エスクード1.4ターボ(4WD/6AT)
全方位的に優秀 2017.09.13 試乗記 スズキのコンパクトSUV「エスクード」に、1.4リッター直噴ターボエンジンを搭載した新グレード「1.4ターボ」が登場。その仕上がりは、欧州仕込みのスポーティーな走りに優秀なパッケージング、そして充実した装備と、セグメント随一のオールラウンダーと呼ぶにふさわしいものだった。スズキの新しい最上級エンジン
これまで1.6リッターのみだったエスクードに追加された1.4リッターターボは、日本市場では初出し……にして、熱きスズキマニアにとっては待望かつ大注目のエンジンだ。
その73.0mmというシリンダー内径は、スズキ小型車の主力である1.2リッター4気筒や1リッター3気筒ターボと共用。これらはすべて最新世代エンジンファミリーの「K」型に属しており、新開発1.4リッターターボには「K14C」という型式名が与えられる。
つまり、K14Cは現在のエスクードや「SX4 Sクロス」、あるいは従来の「スイフトスポーツ」で上級エンジンとして多用されてきた、1.6リッターの「M」型とは別系統である。
スズキにはかつて2.7リッターや3.2リッターのV6、2.4リッターの4気筒もあった。しかし、エスクードは先代より階級をひとつ下げており、旗艦サルーンの「キザシ」も一昨年末に生産終了。北米市場への復帰もなさそう……といったスズキの現状や今後の商品戦略を見るかぎり、新世代スズキの最上級エンジンはこの1.4リッターターボになる可能性が高い。それより設計の古いM型は徐々にフェードアウトしていくのだろう。
スズキマニアにとって現在最大の話題は間もなく発売されるはずの新型スイフトスポーツだが、その新型スイスポもどうやら1.4リッターターボを積むらしい……というのが公然の秘密となっている。その意味でも、このK14Cエンジンはスズキマニア的に絶対スルーできない存在というわけである。
エスクードに搭載されている1.6リッターにしても、今回の1.4リッターターボにしても、どちらも日本的な感覚では中途半端な排気量であるところが、いかにもスズキ……というか、ほぼ全機種がグローバルで収支を合わせるスズキの小型車らしいところだ。
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モダンな技術がテンコ盛り
1.6リッターが遠くない将来にフェードアウトするのは確実だが、そうはいっても、現時点ではまだ現役。1.4ターボが登場したエスクードも、1.6リッターを積む素の「エスクード」がしばらく併売となる。小型SUVの国内市場は1.5リッター自然吸気あたりが売れ筋のひとつだから、それに準じる1.6リッターを簡単に手放すわけにもいかないだろう。
エスクード1.4ターボは欧州では1.6リッターの「ビターラ」と差別化された「ビターラS」という車名で販売されており、日本仕様も海外向けの「S」に準じたものとなる。外観ではフロントグリルやアルミホイールが、そして内装でもシート表皮や随所の赤いアクセントなどが1.4ターボ専用となる。
注目のK14Cエンジンは、直噴、高圧縮比、排気マニホールド一体ヘッド、ウェイストゲートが開いた状態をデフォとする“ノーマルオープン制御”などの基礎技術を、1リッターの「K10C」と共有しており、最新のトレンドに沿った技術がテンコ盛りのエンジンである。で、“2リッター級の性能”をうたうスペックは、現時点ではフォルクスワーゲン系の1.4 TSIエンジンよりは、少しばかり控えめなチューンとなる(指定燃料も国産ブランド車らしくレギュラーガソリン)。
そのK14C単体のフィーリングは、ざっくりいうと“実務型”といったところ。現代ターボらしく、低回転からモリモリとトルクを供出して、6段ATがMレンジでも自動的にシフトアップする5800rpmまで、なんの引っかかりもなく、水平線のようなフラットトルクのまま回り切る。
ただ、あえて意地悪くいうと、マニアの琴線をくすぐるようなドラマや演出には欠ける。ノーマルオープン制御のウェイストゲートの影響もあってか、絶対的なチューンがそれほど高くないわりに、右足を踏み込んでからトルクが立ち上がるまでに、わずかだが明確な“間”が残るタイプではある。
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潔いまでにスポーティー
というわけでエスクード1.4ターボは、たとえば同等のエンジンを積む「アウディQ2 1.4 TFSI」より100kg近く車重が軽いにもかかわらず、絶対的な動力性能ではQ2ほど活発には感じない。1.6リッターのエスクードよりは当たり前のようにハッキリ速くて力強いが、その走りは事前の期待よりは穏当だ。
もっとも、そうした穏やかな乗り味は、エスクードの優秀なシャシーと4WDによるところも大きい。
1.4ターボのタイヤは銘柄もサイズも1.6リッターと同じで、1.6リッターの記憶を呼び戻しても、シャシーチューンに大きなちがいはなさそうだ。エスクードのフットワークは現代SUVとしては基本的にガッチリ系のチューンである。昨今のSUVは強力なスタビライザーでロールだけを抑制しつつ、各輪のバネは柔らかめにして乗り心地や路面追従性を高めるのがトレンドだが、エスクードのそれは、ある意味で古典的で、素直にバシッと締め上げられたタイプ。1.6リッター程度のパワーではまるで何も起こらないエスクードは、最高出力で16%アップ、最大トルクで約4割増しの1.4ターボも完全に支配下に置いている。
市街地を転がしているだけだと少しばかり古くさいゴツゴツ感があるのだが、スピードが増すほどにアシさばきはハッキリとしなやかに、そして上屋の上下動がきれいにおさまっていく。いわゆる昔ながらの“欧州風味”で、こういう分かりやすい味つけは、いかにもここ10年ほどのスズキの小型車っぽい。
もっとも、エスクードと共通のプラットフォームで、先ごろマイナーチェンジでタイヤや地上高がエスクードと共通化されたSX4 Sクロスは、もっとソフトで快適でモダンな仕立てである。これはSクロスのほうがロングホイールベースで全高も低い……といったディメンションの都合と、商品企画のちがいによるものだろう。エスクードはSクロスより明確にスポーツテイストが押されている。
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コーナリングで気分がアガる
1.4リッターのターボエンジンを1.6リッターの自然吸気と大差なく、見事に御しきっているエスクードだが、もちろん、細かい部分での差異がないわけではない。
エスクードには各種制御を「オート」「スポーツ」「スノー」「ロック」という4つのモードから選べる「ドライブモードセレクト」がある。これは4WD機構だけでなく、エンジンやATなどを統合的にコントロールするものである。
今回のように舗装路メインの走りで選ぶのはオートかスポーツになるわけだが、1.6リッターではシャシーが勝ちすぎていて、どっちのモードでもその差がほとんど感知できないのが正直なところだった。
ところが、1.4ターボになると、よりFFに近い制御となるオートでは、コーナーで頑張りすぎるとじわりとフロントが膨らむ兆候が見られるようになる。またスポーツで山坂道を積極的に踏んでいくと、フロントの食いつきが増すと同時に、リアからの蹴り出しをより明確に感じられるようになる。
このようにドライビングモードのちがいが体感できる走りをすると、いよいよシャシーそのものも真価を発揮し始める。硬めのフットワークは生気を帯びてストロークするようになり、メリハリのあるスロットルワークで曲がりの特性が変わっていくのだ。
このときのエスクードはまさにホットハッチ……とまではいわなくても“ウォームハッチ”くらいにはテンションが高まり、楽しくなる。昨今は曲がり性能を売りにする小型SUVも数多いが、必要以上に重厚でなく、カラッと軽快で、素直に躍動的な身のこなしはエスクードならではの魅力だろう。
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クラスきってのオールラウンダー
エスクードは、分かりやすく古典的なスポーツテイストの走りでありながら、妙にクーペ気取りの前衛スタイルではなく、ほどよく背高で生真面目なパッケージレイアウトが組み合わせられているのが特徴であり美点である。
全長はライバル比でもかなり小さい部類に入るが、乗員を小高く健康的に座らせるレイアウトなので、室内の実効空間は多くのライバルに負けていない。荷室も全長のわりには前後に長いうえ、天地にも深く、飛び道具はないが使い勝手はいい。それに、さすがはオフローダー経験が豊富なスズキだけに、ボンネットの見切りなどの車両感覚のつくりこみにも伝統の良心がうかがえる。
「スポーツカーを追いかける走りはほしいけど、せまい路地での取り回しや見晴らしの良さは妥協したくないし、トランクや後席もちゃんと使いたい」といった全方位によくばりなニーズに、国産ブランド(正確にはハンガリーからの輸入車だけど)の小型SUVでもっともバランスよく回答できているのは、もしかしたらエスクードかもしれない。
この中身で、このお値段はお買い得
エスクード1.4ターボの本体価格は、既存の1.6リッターより24万円強のアップとなるが、動力性能があからさまに増強されているだけでなく、燃費もほぼ同等で自動車税は割安。しかも1.6リッターにはない側突系エアバッグのほか、ルーフレールに前席センターアームレストも追加され、さらにスピーカー数も2個から6個に増設されるなど、デザイン以外の装備も充実しているので、率直にいって割高感はない。
また、本体価格だけを取り上げると「トヨタC-HR」や「ホンダ・ヴェゼル」といった国産小型SUVの売れ筋より高く見えがちだが、それにも裏がある。
輸入車のエスクードには細かなメーカーオプションはなく、ツルシ状態で自動ブレーキや車線逸脱警告、アダプティブクルーズコントロール(ACC)などが標準装備。ナビ/オーディオ関連以外はほぼフル装備で、高級な純正ナビを追加しても300万円を切る。
まあ、ACCが全車速対応でなく、自動ブレーキに歩行者検知機能がない……などのツッコミどころもなくはないが、高出力ターボ、4WD、そして月販目標100台(1.6リッターを含む)という希少性を考えれば、これはぜんぜん高くないよなあ……とスズキびいきの私は勝手に納得する次第である。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
スズキ・エスクード1.4ターボ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4175×1775×1610mm
ホイールベース:2500mm
車重:1220kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:136ps(100kW)/5500rpm
最大トルク:210Nm(21.4kgm)/2100-4000rpm
タイヤ:(前)215/55R17 94V/(後)215/55R17 94V(コンチネンタル・コンチエココンタクト5)
燃費:16.8km/リッター(JC08モード)
価格:258万6600円/テスト車=289万4292円
オプション装備:ボディーカラー<ブライトレッド5 ブラック2トーンルーフ>(4万3200円) ※以下、販売店オプション フロアマット(2万0142円)/スタンダードメモリー8インチナビセット(18万9594円)/ETC車載器(1万9656円)/ドライブレコーダー(3万5100円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:891km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:337.3km
使用燃料:26.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:13.0km/リッター(満タン法)/13.6km/リッター(車載燃費計計測値)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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