第434回:2030年も内燃機関は健在!?
マツダ・技術開発長期ビジョン説明会の会場から
2017.09.12
エディターから一言
マツダが2030年を見据えた技術開発長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言 2030」を発表。その目玉である次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブX)」の仕組みを、生方 聡が解説する。
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次世代エンジンSKYACTIV-Xを2019年に導入
2017年8月にトヨタとマツダが資本業務提携を行うことが発表され、注目を集めているのはご存じのとおり。その内容についてはニュースをご覧いただきたいが、記者会見の席でマツダの小飼雅道社長が「2030年、2050年に向け、走る歓びを先鋭化させたクルマづくりと、マツダらしいブランド価値経営により、小さくともより際立つ独自のブランドを築き上げていきます」と話していたのが印象的だった。
そうなると、将来に向けてマツダがどんなクルマをつくっていくのか気になるわけだが、記者会見の直後というタイミングで、マツダが新しい技術開発長期ビジョンを発表するというので、その説明会の場に足を運んでみることにした。
ここで発表されたのは、まさに2030年に向けたマツダの技術開発長期ビジョンであるサステイナブル“Zoom-Zoom”宣言 2030。同社は長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」を2007年に発表し、「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」の両立に取り組んできたが、自動車産業を取り巻く環境の変化にあわせて、より長期的な視野のもと、新たに策定したのが2017年バージョンのサステイナブル“Zoom-Zoom”宣言 2030ということになる。
その概要もすでにニュースで採り上げられているとおりだが、注目は、その実現のためにマツダが次世代エンジンのSKYACTIV-Xを2019年から導入するという点だ。
ガソリンとディーゼルのいいとこ取り
SKYACTIV-Xの特徴は、ガソリンエンジンでありながら、ディーゼルエンジンのように燃料を自己着火する方式を世界で初めて実用化したこと。ご存じのとおり、ガソリンエンジンではガソリンと空気からなる混合気をスパークプラグの火花で点火する「火花点火」を用いる。一方のディーゼルエンジンではシリンダー内で圧縮して高温になった空気に軽油を噴射して自己着火する「圧縮着火」が使われている。
この圧縮着火をガソリンエンジンで行うのがエンジニアの悲願だった。そうすることで、ガソリンエンジンの長所であるパワフルさやクリーンな排気性能に、ディーゼルエンジンのような低燃費と豊かなトルク特性、レスポンスの良さが加わるからだ。そのため、自動車メーカー各社はガソリンエンジンの圧縮着火の実用化に向けて研究を進めてきたわけだが、安定して燃焼する領域が狭いうえに、必要に応じて圧縮着火と火花点火を安定して切り替えるのが難しいという壁に阻まれ、これまで実用化にこぎ着けられずにいた。
しかしマツダは、独自の技術により、極低温時を除いたほぼすべてのケースまで圧縮着火燃焼の領域を広げることを可能にしたというのだ。説明会ではその詳細については明らかにされなかったが、圧縮着火と火花点火を併用するためにどうしても必要になるスパークプラグを、圧縮着火をコントロールするために用いるのがキモなのだという。
マツダはこの「SPCCI(SPark Controlled Compression Ignition=火花点火制御圧縮着火)」により、ガソリンで圧縮着火を実現するSKYACTIV-Xを実用化。“X”はガソリンとディーゼルのクロスオーバー、すなわち両者の“いいとこ取り”という意味なのだ。
内燃機関はまだまだ主流
では、SKYACTIV-Xの実用化で何が変わるのか? 「走る歓び」を提供したいとするマツダは、現行型ガソリンエンジンの「SKYACTIV-G」に比べて、SKYACTIV-Xではアクセル操作に対するレスポンスが向上し、また、高回転まで伸びのある加速が得られることによる走りの良さをアピールしている。それでいて、エンジン単体の燃費はSKYACTIV-Gに対して最大で20~30%改善され、最新のディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」と同等の燃費を達成するという。しかも、これまでのガソリンエンジンと比べて、低燃費の領域が広くなるため、例えばギア比を低くして走りを優先させても燃費への影響が少なく、走る歓びと燃費を両立しやすくなるというのだ。
トヨタとの資本業務提携により、電気自動車(EV)の共同技術開発を進めるというマツダだが、2030年の時点では内燃機関やこれにモーターを組み合わせたハイブリッド/マイルドハイブリッド、プラグインハイブリッドがまだまだ主流と予測する彼らにとって、その基本となるSKYACTIV-G/Dや今回発表したSKYACTIV-Xを磨き上げることが「走る歓びを先鋭化させたクルマづくり」には不可欠というわけだ。
ところで、説明会では質疑応答の時間が設けられず、SKYACTIV-Xのコストやデメリットなどについては触れるチャンスがなかった。しかし、海外ではすでに試乗会が行われるなど、少しずつ詳細が明らかになりつつある。筆者も実際に触れられるときを心待ちにしている。
(文=生方 聡/写真=webCG/編集=藤沢 勝)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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