第442回:落札総額は80億円
イタリア本社のフェラーリ70周年イベントを観る
2017.09.22
エディターから一言
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フェラーリが2017年で創業70周年を迎えた。その祝賀イベントが世界中で催されており、去る9月9日と10日、そのハイライトともいえる本社イベントが、聖地マラネッロで盛大に開催された。オークションでは10億円超えのクラシックフェラーリが現れるなど、見どころは満載! 2日間の模様をリポートする。
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目玉はオークションとコンクールデレガンス
フェラーリが誕生してちょうど70周年という節目となった2017年。「ドリブン・バイ・エモーション」と銘打ち、世界各地で70周年を祝うイベントが開催されてきた。日本でも10月12日から3日間にわたって、東京・両国国技館をスタートするオーナー参加型ラリーツーリング形式の祝賀イベントが開催されるという。
日本での開催に先立つこと1カ月。イタリアは聖地マラネッロで、ひと足先に今年のハイライトというべき祝賀イベントが開催された。それは、70年の歴史をぎゅっと凝縮するのと同時に、現在から未来への展望の明るさを見事に表現した、フェラーリファンにとってはたまらないイベントであった。
戦後間もない1947年にイタリアはモデナで誕生したこのスポーツカーメーカーは、ミッレミリアをはじめとするモータースポーツの世界でめきめきと頭角を現し、アッという間に世界屈指のスポーツカーブランドへと成長した。それゆえ、跳ね馬の歴史を振り返ってみれば、黎明(れいめい)期から現在に至るまで、たとえ経営危機に見舞われた暗黒の時代においてさえ、自動車史にとって重要な“名馬たち”で埋め尽くされているという感がある。
聖地中の聖地というべき“ピスタ・ディ・フィオラーノ”に展示された何百台ものフェラーリを一目見るだけで、その歴史の彩りとすごみを、ひしひしと感じることができるというものだ。
そして、マラネッロイベントには、自身のきらびやかな歴史をあますところなく振り返るべく、さまざまな企画や演出が用意されていた。中でも注目されたのは、RMサザビーズによるフェラーリオークションと、本社主催のコンクールデレガンスの、2つのビッグイベントだろう。
マラネッロの街がフェラーリ一色に
9月9日の土曜午後。マラネッロの市街地に入るにしたがって、人とクルマ、しかも多くはフェラーリ、で溢(あふ)れかえりはじめた。フィオラーノサーキットで開催される公式イベントは招待の事前申込制だったから、それ以外の観客たちはというと、祝賀ムードいっぱいのマラネッロの空気を味わいに来ただけに違いない。ヨーロッパ各地から集まってきたフェラーリ・ツアーラリーや、コンクールデレガンス出場車両によるパレードもあったから、目の前を通り過ぎる何百台ものフェラーリを観るだけでも価値はあっただろう。マラネッロの街角でカフェを飲みながらの街見物でも、十分に満足できたはずだ。
もっとも、この日にこの場所に来てその誕生日を祝うという行為そのものが、真のフェラーリファンの証しだったといっていい。マラネッロには、やはり聖地的な空気が漂っている。やっぱり特別な場所なのだ。
そんなお祭りムードいっぱいの街の人ごみに紛れ込んで楽しんでみたい、という衝動に駆られつつも、盛りだくさんのプログラムが待ち受けるメイン会場へ急ぐ。普段はめったに通れないスクーデリアフェラーリの通用門を潜って、フィオラーノサーキット内に入った。
つい2カ月ほど前に、「812スーパーファスト」試乗会のためやってきたばかりだったが、そのときとは雰囲気が一転していた。いつもはどこか緊張感の漂うサーキットは、大きなサーカスがいくつもやってきたかのような景色になっていて、ちょっとたじろぐ。
岐阜の納屋で発見されたデイトナが登場
コース脇にはコンクールデレガンスの参加車両が100台以上も並んでいる。コースのはるか向こうには、数々のテントと、巨大なステージ、特設スタンドが見えていた。自前のサーキットならではの、贅沢(ぜいたく)なイベント設営だろう。
土曜日のメインメニューは2つ。まずは日本でも話題になった、RMサザビーズ主催によるフェラーリオークションだ。
岐阜県で発見されたバーンファウンド(納屋物件)のアルミボディー「デイトナ」は、当然、現地でも注目を集めていたが、出品された42台の跳ね馬はいずれ劣らぬ名馬ばかり。邦貨に換算して約11億円という最高落札額を記録した「ラ フェラーリ・アペルタ」はチャリティーだったから脇に置くとしても、「250GTカリフォルニア スパイダー」の約10億円や、「250GTカブリオレ」の約6億円など、連なる山脈のような“高値の華”がステージに現れては落札されていく。ローリングストーンズのキース・リチャーズが最初のオーナーという「400i」に至っては、相場の5倍、4000万円で落札され、もうあぜん。
最初から最後まで眺めていたけれど、結局、ため息をつくばかりで、しまいには切なくなってしまった。クラシックカーマーケットが落ち着きを見せるなか、フェラーリだけは相変わらず別格だ。
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ジャミロクワイも70周年を祝福
夜になって雨が降りだし、気温がぐっと下がってきた。雷まで鳴り響き始める。それでも、席を立つ客は少ない。降りしきる雨のなか、『ロッソ70』と称する、歴史的跳ね馬が主演のミュージカルが始まった。まずはGTロードカーの歴史を、ライフスタイルの変遷とともに振り返る。特設ステージ上には、最初期モデル「125S」に始まって、250GTカリフォルニア スパイダーや「BB」など、時代を代表する跳ね馬が、雨をものともせずに登場する。
GTカーの次は、当然、歴代コンペティションモデルによるショーだ。歴代のフェラーリF1チャンピオンへのオマージュや、ミハエル・シューマッハーのビデオトリビュート、現役ドライバー2人、キミ・ライコネンとセバスチャン・ベッテルの登壇に、最後はマルク・ジェネによるステージでのF1走行まで、鳴り響く雷や降りしきる雨すら光と水の演出だと思えるほどのステージ進行で、観客たちを飽きさせない(とても寒かったけれど!)。
そして、シークレットショーには、熱烈なフェラーリマニアとして知られるジャミロクワイが、ノリノリのライブパフォーマンスで、観客たちを熱狂させた。
翌日の日曜日は、いよいよ「コンクールデレガンス」の表彰だ。ジョン・エルカンやセルジオ・マルキオンネといったVIPが見守るなか、20に分かれたクラスから3ベストが発表されていく。事前に自分の目でチェックして、“これだ!”と思っていた個体が舞台に上がると、何だか自分のことのようにうれしくなってしまう。クラス表彰が終わると、ステージの前にはずらりとクラスベストが並んでいた。その中から“ベスト・オブ・ショー”を選ぶという趣向だ。
午後3時過ぎ。まずはGT部門のベストが発表される。審査委員長を務めたアドルフォ・オルシが読み上げた車名は、なんとワンオフの「テスタロッサ スパイダー」。元ジャンニ・アニエッリの愛車である。そして、最後を締めくくったのは、フェラーリらしくレースカー部門のベスト・オブ・ショー、「340MMスパイダー ヴィニャーレ」だった。
(文=西川 淳/写真=フェラーリ/編集=竹下元太郎)

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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