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フォルクスワーゲン・ポロ1.0 TSIハイライン(FF/7AT)

ゴルフキラー現る 2017.09.29 試乗記 渡辺 敏史 成長したのはボディーサイズだけにあらず。6代目となる「フォルクスワーゲン・ポロ」がいよいよ登場。“MQB”世代のコンポーネンツが用いられた新型は、Bセグメントのスタンダードを塗り替えるほどの実力を持ち合わせていた。
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“5ナンバー”の枠を超えて

1974年の初代登場以来、累積生産台数は1400万台を超えるなど、フォルクスワーゲンにとっては「ゴルフ」「パサート」と並ぶクリーンナップに位置づけられるポロ。インドやブラジル、中国といった新興国での伸びしろを鑑みれば、今後の同社の屋台骨を支える中核といっても大げさではないだろう。ここ日本でも近年は月に1000台前後をコンスタントに売り続け、その数を車型同士で比較すればゴルフの5ドアハッチバックとほぼ同じだという。

それほどまでに日本に溶け込んでいることもあって、注目する向きも多いだろうポロのフルモデルチェンジは8年ぶりのこと。現行5代目が思いのほか延命されることになった背景には、フォルクスワーゲンのモジュラー戦略に沿って世界の工場に設備更新が迫られたことや、その最中にディーゼル問題発覚からの経営陣の刷新や、開発プロセスの見直しに見まわれ――といった内的事情も絡んでのことだろう。

その間、Bセグメントを取り巻く状況は文字通り「大きく」変わった。4mを切る全長、1.7mを切る全幅のいわゆる5ナンバー寸に2470mmのホイールベースという現行型の成り立ちは、「ホンダ・フィット」と肩を並べるか、むしろ若干小さいレベル。一方で「ルノー・ルーテシア」あたりをみれば、そのサイズは完全にポロより大きく、Cセグメントの側に近づきつつある。

この格差を是正しつつ、ゴルフとの距離感も測りつつ……ということで、6代目となる新型ポロの車寸は、全長4053mm、全幅1751mm、ホイールベース2564mmと、現在のBセグメントのど真ん中に収まった。すなわち5ナンバー寸ではなくなったわけだが、「トヨタ・アクア」より全幅がちょっぴり広い程度となれば、その取り回しに大きな影響はないだろう。一方で、キャビンは全体的にゆったりと仕上げられており、特に前後席間が歴然と広くなったことは乗ればすぐに分かるはずだ。ちなみに、荷室容量も351リッターと現行型比で25%ほど増えている。

8年ぶりのフルモデルチェンジによって登場した5代目「ポロ」。新たにフォルクスワーゲンのモジュール戦略「MQB」のプラットフォームをもとに開発された。
8年ぶりのフルモデルチェンジによって登場した5代目「ポロ」。新たにフォルクスワーゲンのモジュール戦略「MQB」のプラットフォームをもとに開発された。拡大
インストゥルメントパネルまわりは従来モデルから大きくデザインを変更。運転中の視線移動を減らすため、メーターとインフォテインメントシステムのディスプレイは同じ高さに、横並びに配置された。(写真はMT仕様)
インストゥルメントパネルまわりは従来モデルから大きくデザインを変更。運転中の視線移動を減らすため、メーターとインフォテインメントシステムのディスプレイは同じ高さに、横並びに配置された。(写真はMT仕様)拡大
インフォテインメントシステムについては、8インチカラーディスプレイに対応したことで、従来モデルよりコネクティビティーや利便性の高い機器を搭載可能となった。
インフォテインメントシステムについては、8インチカラーディスプレイに対応したことで、従来モデルよりコネクティビティーや利便性の高い機器を搭載可能となった。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4053×1751×1446mm。従来モデルと比べると、全高は若干低められたものの、全長と全幅は大幅に拡大した。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4053×1751×1446mm。従来モデルと比べると、全高は若干低められたものの、全長と全幅は大幅に拡大した。拡大
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“MQBファミリー”の仲間入りを果たす

新型ポロのシャシーには、「ゴルフVII」以降のアーキテクチャーのコアを担う「MQB」モジュールをコンパクトカー用にリファインした、最新版の「MQB A0」を採用。総合的な車体剛性を、現行比で30%近く向上させている。サスペンションは前がストラット、後ろがトーションビームとなり、さらにオプションでスプリング、ダンパー、スタビの専用チューニングで車高が15mm低くなるスポーツサスを、さらにドライブモードセレクターと連動する電子制御可変ダンパーも選択できる。タイヤサイズにも15~17インチが用意されるが、まず日本に導入されるグレードはコンフォートライン&ハイラインのみの構成となり、サス設定はノーマルのみ、タイヤサイズは16インチのみとなる予定だ。

同様に搭載されるエンジンバリエーションも幅広い。基本となるのは「up!」用に開発された「EA211」系1リッター直3ユニットで、自然吸気(NA)とターボを用意。さらにターボにはチューニングの違いで95psと115psが設定される。興味深いのはこの1リッターターボをベースにCNGとガソリンのバイフューエル化を果たした「TGI」が設定されていることだが、これについては日本導入の予定はない。加えて、1.5リッターのライトサイジングターボや1.6リッターディーゼル、「GTI」用として200psを発生する2リッターターボなどの4気筒ユニットもラインナップされるが、日本仕様には95psの1リッターターボが7段乾式DSGとの組み合わせでラインナップされることになる。その動力性能は0-100km/hが10.8秒、最高速は187km/hとなり、これは初代「ゴルフGTI」とほぼ同じだという。

ホイールベースは2564mmと、従来モデルより10cm近く拡大。後席を中心に、居住性が大幅に改善されている。
ホイールベースは2564mmと、従来モデルより10cm近く拡大。後席を中心に、居住性が大幅に改善されている。拡大
タイヤには仕様に応じて複数のサイズが用意されているが、まず日本に導入されるサイズは16インチのみとなる予定。今回の試乗車には、17インチサイズのタイヤとホイールが装着されていた。
タイヤには仕様に応じて複数のサイズが用意されているが、まず日本に導入されるサイズは16インチのみとなる予定。今回の試乗車には、17インチサイズのタイヤとホイールが装着されていた。拡大
日本仕様にも搭載される予定の1リッター直3ターボエンジン。95psの最高出力と175Nmの最大トルクを発生する。
日本仕様にも搭載される予定の1リッター直3ターボエンジン。95psの最高出力と175Nmの最大トルクを発生する。拡大

各所に感じられる進化とこだわり

新型ポロの大きなトピックは、ADAS(先進運転支援システム)系装備の充実だろう。現行型でもオプションで選択できた全車速追従型ACCは、自動発進・停止機能付きへと進化。歩行者検知機能付きプリクラッシュブレーキを全車標準装備としたほか、新たに後退時接近車アラート付きのブラインドスポットアシストや、10km/h以下での駐車時に障害物を検知して制動介入するマニューバリングブレーキ付き駐車支援システムなども用意。そのバラエティーはクラストップとなる。その他、スマートフォンとのワイヤレス接続&充電を可能とした最新のインフォテインメントシステムや、すでにゴルフなどにも採用されている全面液晶ディスプレイのメーターなど、最新世代のデジタルデバイスを選択可能とした。

新型ポロに乗り込む前から伝わってくるのは、作り込みに対するもはや偏執的とも言える執着だ。繊細なプレスラインが幾重にも引かれており、要求される生産や組み付けの精度はゴルフよりシビアだろう。このためにフォルクスワーゲンは各地の工場に1000億円単位の投資を行い、工機などの設備を一括的にコントロールしているわけで、これを仕向け地によらず均質に実現できるという前提もまた、MQBのすごさだと納得せざるを得ない。

併せて内装の質感も高まっているが、これは時とともにキャッチアップされていく事項だ。むしろ喜ぶべきは、空調のアウトレットの位置を下げてインフォテインメントのモニターをメーターと同レベルに持ち上げたことによる、必要情報の視認性向上だ。シートのサイズもひと回り大きくなった印象で、このあたりも現行型とは完全に車格感を違えたという印象の一因となっている。

大幅に強化された運転支援システムも新型「ポロ」の特徴。自動発進・停止機能付きの全車速追従型ACCなど、上級モデルから導入が進められている先進装備が多数採用された。
大幅に強化された運転支援システムも新型「ポロ」の特徴。自動発進・停止機能付きの全車速追従型ACCなど、上級モデルから導入が進められている先進装備が多数採用された。拡大
新たに採用されたスマートフォンの非接触充電機能。ワイヤレスでスマートフォンを車載アンテナに接続する機能も用意されている。
新たに採用されたスマートフォンの非接触充電機能。ワイヤレスでスマートフォンを車載アンテナに接続する機能も用意されている。拡大
乗車スペースについては、前後席間の距離やヘッドルームを広げるなどして居住性の改善が図られている。写真は「ハイライン」に装備されるスポーツコンフォートシート。
乗車スペースについては、前後席間の距離やヘッドルームを広げるなどして居住性の改善が図られている。写真は「ハイライン」に装備されるスポーツコンフォートシート。拡大

ライバルは身内にあり

95psを発生する1リッターターボユニットは、バランサーレスとは思えないほど低中速域での音・振動のマナーが良い。また、多用する2000rpm前後のトルク感もリッチで、大きくなった体躯(たいく)を余裕をもって引っ張るなど、このあたりのドライバビリティーは現行型の4気筒よりむしろ扱いやすいと思わせるところがある。

一方で、高速道路の合流のような場面ではさすがにアクセルを大きく踏み込むことになるが、その際に放たれる3気筒独特のサウンドは好みが分かれるところだろう。それに伴う5000rpmを超える高回転域での若干の微振動に、4気筒ユニットの優位を感じる人もいるかもしれない。実用域にフォーカスした設定であることは間違いないが、ここにもう少し高回転域でのパワーの乗りが加われば、音や微振動のクセも気にならなくなるかもしれない。そういった期待も込めて、日本仕様に115psの導入を検討してもいいのかなと思うところはあった。

いずれにせよ、長足の進化を遂げたと実感できるのはライドフィールだ。現行型は車格に見合わぬ高速スタビリティーの反面、低中速域ではちょっと粗い横揺すりや跳ねが現れるところがあったが、新型では低中速域でのフラット感が歴然と高まり、180km/h付近の最高速に至るまでその乗り心地の印象がシームレスにつながってくれる。ゴルフのベースグレードに比べても、車格なりに順当に劣るところが見当たらない。

都市部とその近郊を中心とした試乗は好天に恵まれ……ることなく荒天に見舞われ、大きく進化しただろうダイナミクスは断片的に確認したのみだが、これもまたゴルフに比するだろうという片りんは十分にうかがえた。新型ポロは、その総合力でBセグメントのスタンダードを塗り替える実力を備えていることは間違いなさそうだ。そしてデイリーユース時々ロングドライブを前提とする日本の多くのユーザーにとっては、ポロを検討する上で最も悩ましい相手は、実はサイズ面でも歩み寄ったゴルフということになるのではないだろうか。

(文=渡辺敏史/写真=フォルクスワーゲン・グループ/編集=堀田剛資)

動力性能については、日本に導入される予定の95ps仕様の1リッターターボ車で、0-100km/h加速が10.8秒、最高速が187km/hと公称されている。
動力性能については、日本に導入される予定の95ps仕様の1リッターターボ車で、0-100km/h加速が10.8秒、最高速が187km/hと公称されている。拡大
新たに採用されたデジタルメータークラスターの「アクティブインフォディスプレイ」。表示画面は、ステアリングホイールのスイッチによって切り替えることができる。
新たに採用されたデジタルメータークラスターの「アクティブインフォディスプレイ」。表示画面は、ステアリングホイールのスイッチによって切り替えることができる。拡大
ラゲッジルームの容量は351リッターと、従来モデルより71リッター拡大している。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
ラゲッジルームの容量は351リッターと、従来モデルより71リッター拡大している。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)拡大
本国仕様の価格は、今回試乗した「1.0 TSIハイライン」の7段DSG仕様で1万9575ユーロ(約255万円)。日本導入は2018年夏の予定となっている。
本国仕様の価格は、今回試乗した「1.0 TSIハイライン」の7段DSG仕様で1万9575ユーロ(約255万円)。日本導入は2018年夏の予定となっている。拡大

テスト車のデータ

フォルクスワーゲン・ポロ1.0 TSIハイライン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4053×1751×1446mm
ホイールベース:2564mm
車重:1180kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:95ps(70kW)/5000-5500rpm
最大トルク:175Nm(17.9kgm)/2000-3500rpm
タイヤ:(前)215/45R17/(後)215/45R17(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:4.7-4.6リッター/100km(約21.3-21.7km/リッター 欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
 

フォルクスワーゲン・ポロ1.0 TSIハイライン
フォルクスワーゲン・ポロ1.0 TSIハイライン拡大
渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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