プジョー508SWアリュール(FF/6AT)【試乗記】
マニアから一見さんまで 2011.08.29 試乗記 プジョー508SWアリュール(FF/6AT)……409万円
1.6リッターターボエンジンを搭載する新しいフラッグシップモデル「508」。ワゴンモデルでその走りと乗り心地を試した。
プジョーファンの憂鬱
facebookを眺めていたら、「プジョー406ブレーク」に乗る知人が「バカンスを前に、AL4に警告灯点滅(苦笑)」と近況報告していた。ご存じの方も多いと思うけれど、AL4とはPSAプジョー・シトロエングループとルノーが共同で開発したあまり評判のよくない4段AT。知人は、仕方ないので行きつけのガレージに持ち込むという。つまり、まだまだ乗るということだ。
行間を読めば、406ブレークの代わりになるクルマがないということだろう。さらに深読みすれば、「『407』じゃダメなのよ」ということだと思う。そういえば、やはり406ブレークに乗るカメラマンの知り合いも、「後継車がない……」とコボしていたっけ。
控え目ながら端正なルックスの406が好きな人の目には、407の「なんぼのもんじゃー」的なお面は下品に映るはず。406のしとしとの乗り心地に慣れると、407のぱっつんぱっつんのフィーリングは体の芯に響くだろう。
ま、愛車に長く乗り続けるのはいいことだ。いいことではあるけれど、「好きだから乗り続ける」のと「仕方がないから乗り続ける」との間には、暗くて深い川がある。
てなことを考えていたら、たまたま「508SWアリュール」の試乗の順番が回ってきた。ちなみに「Allure(アリュール)」とはファブリックのシートや16インチのホイールを装備する標準仕様。上級仕様の「Griffe(グリフ)」では、レザーシートと17インチホイールが備わる。
矛盾に満ちたエンジン
いろいろなところで書かれているように、プジョーの旗艦モデルである「607」シリーズの守備範囲もカバーする任務を負う508シリーズは、先代の407より大きくなっている。SW同士で比較すると、「508SW」は「407SW」より3cmほど長くなっている。けれど、不思議と見た目にデカくなった感じはない。
おそらく、前輪より前の部分(フロントオーバーハング)が407より短くなっていることと、お利口さんぽくなったフロントマスクのおかげだろう。
排気量わずか1.6リッターの4気筒ターボエンジンは、小排気量の割によくやっているというよりも、むしろ積極的に選びたくなるエンジンだ。
まず、低い回転域ではむっちりとしたトルクで車体を引っ張る。そして回転が上がると、乾いたイイ音を響かせながら小気味のいいパワー感を伝える。粘り強さを発揮しながら、同時に軽快さも兼ね備えるという矛盾に満ちたエンジンだけれど、こういう矛盾なら大歓迎だ。
とはいえ、ここでエンジンだけを誉めるのはズルい。第2世代に進化したというアイシン製の6段ATが実にいい仕事をしている。
普通にアクセルペダルを踏むような運転だと、比較的早いタイミングで「すん、すん、すん」とシフトアップする。いかにも効率がよさそうで、しかもショックはほとんど感じない。
アクセルペダルをがんと踏みつけると、「そこだ!」というタイミングで素早くシフトダウン。パドルシフトが標準で備わるけれど、アクセルペダルの踏み加減で自在にギアのコントロールができることがわかってからは、ほとんど触れることはなかった。6段ATの出来のよさに、AL4で苦労している知人の顔が思い浮かんだ。
|
16インチを選びたい
乗り心地はいい。406シリーズのしとしと感が戻ってきた。荒れた路面に突入しても、アシが絶妙に伸び縮みして、地面からのショックを吸収してくれる。荷物を満載してはるかかなたを目指す、いかにもステーションワゴンらしい使い方にぴったりの足まわりだ。16インチの60扁平(へんぺい)という、このサイズのクルマとしては比較的温和なタイヤの影響もあるだろう。しかもふわんふわんするわけでなく、コーナーを曲がる時の横傾き(ロール)も丁寧にチェックされている。
|
ただし、以前に別の取材で乗った17インチを履いたセダンは、路面からの突き上げを比較的ダイレクトに伝えていた。これが16インチと17インチのタイヤの違いなのか、あるいはセダンとワゴンのセッティングの違いなのかは、同条件で直接乗り比べてみないことには自信を持って断言はできない。なので、ここから筆圧を下げてキーを打ちますが、SWを買うなら16インチがいいと思います。
パッと見は地味だけど、よくよく見ると整ったフォルム。何百kmでも疲労を感じないと思われる、快適な乗り心地と素晴らしいシート。ただ広いだけでなく、スクエアな形状で実に使いやすい荷室。
大きくなったサイズという問題はあるにせよ、昔からのプジョーファンの受け皿ができたと言っていいだろう。帰ってきた私のプジョー。パワートレイン(特にトランスミッション)も世界中どこに出しても恥ずかしくないレベルになったから、一見さんでも大丈夫だ。
|
(写真=サトータケシ/写真=郡大二郎)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。































