ルノー・メガーヌ GTライン(FF/CVT)【試乗記】
穏やかなルノースポール 2011.08.24 試乗記 ルノー・メガーヌ GTライン(FF/CVT)……275万円
ホットモデル「ルノースポール」をラインナップする「メガーヌ」シリーズにおいて、「GTライン」とはどんな存在なのか? 「プレミアムライン」とも比べながら考えた。
日本人好みのメガーヌ
ルノーのスポーツモデルというと「ルノースポール(RS)」を思い浮かべる人が多いと思うが、本国ではそれ以外に「GT」というシリーズもある。わが国で現在販売されている「トゥインゴ」のほか、「メガーヌ」や「ラグナ」にもラインナップされていて、両車は先代モデルから売られていた。
このうち先代の「メガーヌGT」には、昔フランスで乗ったことがある。『webCG』でも試乗記を掲載したので、記憶にある読者がいるかもしれない。「メガーヌRS」と同じ2リッターターボエンジンを搭載しながらもチューニングは穏やかで、シャシーを含めてRSと普通のメガーヌの中間に位置することが分かる性格だった。
6段MTしか選べなかった先代モデルは、2ペダルがメインの日本市場ではRSと存在がカブるためか、輸入はされなかった。でも本国では人気だったようで、新型では普通のメガーヌと同じエンジンを積む車種にも、パッケージオプションの形で選べるようになった。これが「GTライン」だ。BMWの「M3」に相当するRSに対し、GTラインは3シリーズの「Mスポーツパッケージ」に近い存在と言えるかもしれない。
最近の日本のユーザーは、パワートレインについてはイージードライブでありつつ、デザインやハンドリングではスポーティなテイストを求める人が多い。メルセデス・ベンツの「アバンギャルド」や日産の「ハイウェイスター」人気がそれを証明している。GTラインの成り立ちは、こうしたトレンドに合致している。
しかも新型は、2リッターエンジンとコンビを組むトランスミッションが、時代遅れと揶揄(やゆ)されてきた4段ATから、CVTに代わった。こちらもまた、わが国のユーザーに受け入れやすい。つまりGTラインは、もっとも日本人好みのメガーヌかもしれない。
抜群のスポーツシート
新型メガーヌのデザインは、「すばらしい」と「つまらない」に評価がハッキリ分かれているようだ。ちなみに僕は「すばらしい」派である。
たしかに先代のリアスタイルのような強烈な個性はない。でもボンネット左右の峰からAピラー、リアウィンドウ左右からコンビランプへのラインなど、ディテールへのこだわりは並ではない。「目立つデザイン=いいデザイン」ではないことを教えてくれる。
しかもGTラインの前後のバンパー形状は、もう1台の「プレミアムライン」とは別物。16インチから17インチにサイズアップしたアルミホイールやグレーメタリックのドアミラーのおかげもあって、かなり「走りそう」に見える。
両車はインテリアの作り分けも明確で、カラーはプレミアムラインのベージュに対しダークカーボン、速度計は同デジタルに対しアナログとなるほか、前席にはスポーツシートが用意される。歴代RSがそうだったように、十分なサポート性能を備えつつ、ラグジュアリーセダン顔負けの快適性も併せ持つ。このシートだけでGTラインに決めてしまいそうなほどだ。
逆に後席は、センターコンソール背面のエアコン吹き出し口やセンターアームレストが省かれるなど、プレミアムラインよりやや簡素になっているけれど、荷室を含めて先代より広くなった空間は同じだ。
その空間を走らせるパワートレインは、日産の「デュアリス」や「エクストレイル」と基本的に共通。たしかに常用域では静かかつ滑らかで、5000rpm以上で快音を響かせるエンジンの感触は近い。CVTも同様で、わが国の道路状況に合ったマナーを備えている。
Dレンジに入れっぱなしだと、アクセルを開けた際のエンジンの回転上昇は大きめで、レスポンスは穏やか。どちらかというとプレミアムラインにお似合いの性格ではある。でもマニュアルモードを駆使すれば、ルノースポール開発のシャシーに見合った、小気味いい加速を味わうことができた。
理想の落としどころ
歴代RSは、ハンドリングと乗り心地のバランスの高さに定評がある。RSの名こそ冠してはいないものの、同じくルノースポールが手掛けたGTラインも例外ではなかった。
低速ではバネの硬さを感じるものの、鋭いショックは抑えられているし、50km/hあたりで世界が変わり、そこから上ではほれぼれするほどのフラット感が堪能できる。省燃費タイヤの固さが目立つプレミアムラインより、こちらのほうが快適に思えたほどだ。そういえば、以前フランスでインタビューしたルノースポールのエンジニアは、「シートとシャシーを同じ部門で開発している」と話していた。その言葉どおり、GTラインの望外な乗り心地は、シートによるところも大きいという感じがする。
電動パワーステアリングは、先代の初期型にあった妙な癖は一掃されていて、自然な切れ味。そしてコーナーに入ると、しっとり接地する足がもたらす抜群のロードホールディングに圧倒される。それは硬い足と太いタイヤで作り出した無機質な速さではない。4輪の様子が手に取るように伝わってくる、血の通った走りなのである。
試乗会でルノー・ジャポンのスタッフに聞いたところ、サスペンションは形式こそ先代と共通であるが、フロントのサブフレームにダンパーを追加したり、リアサスペンションのブッシュに2種類のゴムを使い分けたりして、乗り心地とハンドリングの両立を図ったという。何でも電子制御で安直に処理しようとするメーカーが多い中、こういうエピソードを自慢できるクルマづくりは貴重だ。
日本車的な加速感とルノースポールのハンドリングの融合に、最初は違和感を覚えた。でもしばらくして考えが変わった。ルノースポールの走りの世界が2ペダルで味わえる。これこそ多くのユーザーが望んでいたクルマではないか。メガーヌにはプレミアムラインもあるし、頂点にはRSが君臨している。両車の中間に位置する車種として、理想の落としどころではないかという結論に至ったのである。
(文=森口将之/写真=菊池貴之)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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