フォルクスワーゲンe-ゴルフ(FF)
EVもゴルフでなきゃという人に 2018.01.10 試乗記 100%電気自動車(EV)の「フォルクスワーゲンe-ゴルフ」に試乗。“Cセグメントのベンチマーク”とも評される「ゴルフ」は、電動化によっていかなるクルマへと変化したのか。約250kmの試乗を通じて得られた、リポーターの結論とは!?省エネ運転に徹した結果の走行可能距離は!?
品川のフォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)を電池満タンで走りだしたら、200kmを超えたところで「走行可能距離」が41kmになった。電気を食う高速道路は控えて、8割以上は下道を走った。2日間とも寒い日だったが、いつもより着込んで、早朝もシートヒーターどまり。エアコンのヒーターはほとんど使わなかった。「ノーマル」「エコ」「エコ+」の3段階がある運転モードは、もっぱらエコより上の節電モードで走った。つまり、かなり努力して省エネ走行した結果の航続距離は、240kmくらいと判断された。e-ゴルフのカタログ値は301km(JC08モード)。燃費データと同じく、EVの航続距離においても輸入車はそんなに“盛っていない”と感じた。e-ゴルフより1割容量の大きい電池を積む新型「日産リーフ」は400kmを豪語するが、米国環境保護局(EPA)のデータでは240km(150マイル)である。
走行可能距離が30km台まで減ると、エコモード以上が選択され、ノーマルモードには入らなくなる。エネルギー回生と節電を強める運転へと自動的に切り替わるわけだ。EVが完全に自動運転化されたら、お掃除ロボットのように充電器まで勝手に帰っていくのかもしれないが、まだそこまでのEVはない。カーナビで充電ポイントを検索すると、近くのホームセンター駐車場にCHAdeMOの急速充電器があった。213km走っていた。webCG編集部のFさんが自分のスマホでやりとりをして機械を起動させ、30分のクイックチャージを開始する。
さすが“ゴルフファミリー”といえる走行品質
ついにe-ゴルフが日本にやってきた。本国では2015年の夏に発売されたフォルクスワーゲン初の100%EVである。燃費不正問題のつまずきがなかったら、もっと早く導入されていたかもしれないが、24.2kWhバッテリーの初期型は航続可能距離が160kmしかなかった。それでは使い物にならなかったはずだから、倍近くまで延びた最新型(35.8kWh)は待った甲斐(かい)ありといえる。とはいえ、初回輸入は100台で、2017年12月25日までのネット受け付けのみに限られた。つまりもう買えない。本格的に販売されるのは2018年に入ってからになる。
e-ゴルフを求める人は、おそらく「ゴルフのEV」がほしい人だろう。とすると、今回走ってみたe-ゴルフは、期待を裏切らない出来である。床下にリチウムイオン電池をフラットに収めて、車重は1590kg。1.2リッターターボを積む「トレンドライン」の340kg増し、プラグインハイブリッドの「GTE」より10kg重いが、乗り心地はしなやかで、ドテっとした重さはない。「いいクルマだなあ」と感じる走行品質の高さは、ほかの“ゴルフVII”と同じである。
かなりの省エネ運転に徹した今回の実航続距離は、前述のように「240kmくらい」だったが、車載ディスプレイの情報によると、ノーマルモードに入れ、ヒーター使いっぱなしの運転をしても200kmは超えたと思われる。とすると、現実的な航続距離性能は、旧型リーフと新型リーフのあいだくらいではないだろうか。
節約よりも使うほうが楽しい!
EVが遅かったためしはないが、e-ゴルフも快速である。ノーマルモードで低い速度から加速すると、髄液の水面が傾くかと思うほどのダッシュをみせる。透明な加速Gを実感させるようなこの感覚は、EV特有の速さである。とても最高速が150km/hどまりのクルマとは思えない。ちなみに150km/hで走り続けると、150km、つまり1時間でバッテリーがきれる。VGJの関係筋からそう聞いた。
エコ、エコ+と、節電運転を強めるにつれ、回生量が増え、アクセルペダルの反応も鈍くなる。運転モードの切り替えとは別に、セレクターレバーの操作で減速時のエネルギー回生量だけを4段階に加減することもできる。強度を上げるにしたがい、モーター(発電)ブレーキの効果が増し、アクセルオフ時の“エンジンブレーキ感”が強くなる。邪魔になるものでもないので、今回はほぼずっと3段階目で走った。
だが、たまにその足かせを取り払って、ノーマルモードで思いっきり走ってみると、e-ゴルフは格別である。やっぱりエネルギーは、節約するより使うほうが楽しい。ノーマルモードでは駆動系のフリクションが最小になり、アクセルを戻しても速い。スピードが落ちないのだ。鉄のレールの上を鉄輪で走っているようなこの滑走感が、e-ゴルフならではの魅力かもしれない。
ひとつ気になったのは、ブレーキだ。信号停止へ向けての減速中に、一瞬キュッと制動力が高まることが250kmの試乗中2回あった。靴底に伝わるペダルのフィールがときどき微妙に変わることもあった。モーターブレーキと機械式ブレーキとの協調など、ブレーキには改良の余地があると思う。
EVでなくてもいいのかも……
試乗記だから、さらにリアルな報告をしなければならない。ホームセンター駐車場の急速充電器でクイックチャージをした。30分の一充電で80%近くまで回復するはずが、なぜか40%くらいまでしか入らなかった。走行可能距離も90km台に戻っただけである。充電器のせいなのか、クルマとの相性なのか、理由は不明だが、品川までは帰れるので、不問に付す。発展途上のEVでは、こういうこともありである。
充電量は8.0kWhで、料金は1620円だった。このときe-ゴルフ試乗車の直近電費は、7.2km/kWhだったから、60km弱分である。いわゆる“フリの客”として使うと、急速充電器の電気は高いのだ。
この時期にデビューしたEVとして、リーフとの比較は避けられないが、根本的な違いは、e-ゴルフが“改造EV”である点だろう。EVとして専用開発されたリーフのほうが、演出を含めて「夢の乗りもの」感に富んでいるし、実際、ドライブモードや回生モード情報の見せかたなどは、わかりにくいを通り越して、ちょっと不親切だと思った。だから、やはりe-ゴルフは「EVもゴルフでなきゃ」という人のクルマである。
だが、2018年中にはディーゼルも入ってくる。ほかのガソリンモデルも、“ゴルフ7.5”と呼ばれる最新型で完熟に完熟をきわめている。ほかにいい内燃機関ゴルフがいっぱいあるのに。筆者はそう思った。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲンe-ゴルフ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4265×1800×1480mm
ホイールベース:2635mm
車重:1590kg
駆動方式:FF
モーター:交流同期電動機
最高出力:136ps(100kW)/3300-11750rpm
最大トルク:290Nm(29.5kgm)/0-3300rpm
タイヤ:(前)205/55R16 91Q/(後)205/55R16 91Q(ブリヂストン・トランザT001)
一充電最大走行可能距離:301km(JC08モード)
交流電力量消費率:124Wh/km(JC08モード)
価格:499万円/テスト車=520万6000円
オプション装備:テクノロジーパッケージ<デジタルメータークラスター“アクティブインフォディスプレイ”、ダイナミックコーナリングライト、ダイナミックライトアシスト、ダークテールランプ、LEDテールランプ>(17万2800円) ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアムクリーン>(4万3200円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:166.3km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(8)/高速道路(2)/山岳路(0)
テスト距離:245.7km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:7.5km/kWh(車載電費計計測値)
拡大 |

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
BMW iX M70 xDrive(4WD)【試乗記】 2026.3.23 BMWが擁するSUVタイプの電気自動車「iX」。そのハイパフォーマンスモデルが「iX M70 xDrive」へと進化を遂げた。かつて、BMWの志向する次世代モビリティーの体現者として登場した一台は、今どのようなクルマとなっているのか? その実力に触れた。
-
BMW i5 eDrive35LエクスクルーシブMスポーツ(RWD)【試乗記】 2026.3.21 BMWの「5シリーズ ロング」は知る人ぞ知る(地味な)モデルだが、実はエンジン車のほかに電気自動車(BEV)版の「i5 eDrive35L」も用意されている。まさに隙間産業的にラインナップを補完する、なんともニッチな大型セダンの仕上がりをリポートする。
-
日産リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2026.3.20 民生用電気自動車のパイオニアである「日産リーフ」が3代目へとフルモデルチェンジ。シャシーや電池、モーターなどすべての要素を刷新し、もはやスペック上は何の不安もない水準にまで進化している。360km余りのドライブで実際のところを確かめた。
-
モト・グッツィV7スポルト(6MT)【レビュー】 2026.3.18 イタリアの名門、モト・グッツィのマシンのなかでも、特に歴史を感じさせるのがロードスポーツの「V7」だ。ファンに支持される味わい深さはそのままに、よりスポーティーにも楽しめるようになった最新型の実力を、上級グレード「V7スポルト」に試乗して確かめた。
-
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)/RAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】 2026.3.17 「トヨタRAV4」が6代目へと進化。パワートレインやシャシーの進化を図ったほか、新たな開発環境を採用してクルマづくりのあり方から変えようとした意欲作である。ハイブリッドの「Z」と「アドベンチャー」を試す。
-
NEW
今やジャパニーズBEVもよりどりみどり 国産6ブランドのBEV&PHEVにまとめて乗った
2026.3.25デイリーコラム「ニッポンのBEVはまだまだ」のイメージをぬぐうべく、国産6ブランドがタッグを組んで計8モデル(一部はPHEV)を集めたメディア向け試乗会を実施。各社が目指す未来を学ぶとともに、最新モデルの仕上がりをチェックした。 -
NEW
第106回:さよならワグナー(前編) ―メルセデス・ベンツのデザインを変えた傑物の去就―
2026.3.25カーデザイン曼荼羅長年にわたりメルセデス・ベンツのデザインを指揮してきたゴードン・ワグナー氏が、ついに退任! 彼はドイツが誇る高級車ブランドになにをもたらしたのか? カーデザインの識者とともに、希代の傑物の足跡とメルセデスデザインの今昔を振り返る。 -
NEW
スズキGSX-8T(6MT)【レビュー】
2026.3.25試乗記昨今のネオクラシックブームに乗り、いよいよスズキからも新型車「GSX-8T」が登場。しかし実車に触れてみると、既存のライバルとはちょっと趣の異なるマシンとなっていた。スタイリッシュないでたちとスズキらしい実直さが融合した、独創の一台を報告する。 -
「空力性能」を追求すると、最終的にどのクルマも同じ形になってしまうのか?
2026.3.24あの多田哲哉のクルマQ&Aスポーティーな車種に限らず、空力性能の向上は多くのクルマの重要課題。しかし、それを突き詰めれば、どれも同じような形になってしまうのではないか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんはこう考える。 -
日産セレナe-POWERハイウェイスターV(FF)【試乗記】
2026.3.24試乗記販売台数ではトヨタ勢に差をつけられながらも、日産の屋台骨として奮闘する「セレナ」。現行型の登場から3年、マイナーチェンジで磨きがかかった最新の「e-POWERハイウェイスターV」に試乗すると、人の感性に寄り添う開発陣のこだわりと良心が見えてきた。 -
第56回:走行16万kmでも電池の劣化なし! -20℃でもエアコンが効く! 新型「日産リーフ」のスゴイところを聞く
2026.3.23小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ航続距離が伸びたり走りの質がよくなったりで話題の3代目「日産リーフ」だが、本当に見るべき点はそこにあらず。小沢コージが開発エンジニアを直撃し、ジミだけど大きな進化や、言われなかったら気づかないような改良点などを聞いてきました。
















