アウディRS 4アバント(4WD/8AT)
時代を感じる高性能 2018.02.13 試乗記 フルモデルチェンジで4代目となった、新型「アウディRS 4」に試乗。最高出力450psのV6ターボエンジンを得て、ハイパフォーマンスワゴンの走りはどう変わったのか。スペインはマラガから報告する。アウディのアイコンとなる一台
450psのパワーを、フルタイム4WDシステムを介して4輪に伝達。結果、0-100km/h加速をわずか4.1秒というタイムで実現する……というのは、決してフェラーリでもランボルギーニでも、そしてマクラーレンでもない。これはアウディの量販モデル、しかもステーションワゴンのハナシなのだ。
こうした凄(すさ)まじいスペックをアピールするのは、2017年秋のフランクフルトモーターショーで披露された、アウディの最新スポーツモデルである新型「RS 4アバント」である。
日本でも、わずかな台数に限って販売された、2000年デビューの初代モデルから数えて4代目。さらにその直接の先祖といえる、アウディとポルシェのコラボレーションによって生み出された「RS 2アバント」(1993年)も含めると、すでに四半世紀近い年月を積み重ねているのだ。
そんな歴史と伝統に育まれたさまざまなブランドは、自身のヒストリーの中に必ずやアイコンとなるモデルを携えるもの。アウディの場合、RS 4アバントは間違いなく、その代表例と呼べる一台となっている。
伝統のV8エンジンに別れ
一時はセダンやカブリオレにまでバリエーションを拡大しながらも、その後、クーペに独立した名称「5」が与えられるなどの車種ラインナップの再編もあって、2012年にデビューした従来型RS 4のボディー形式は、再度ステーションワゴン限定となった。
そうした流れは、今回紹介する最新モデルでも踏襲されている。新型もRS 4はステーションワゴン、すなわちアウディ言うところのアバントに限られるのだ。「A4アバント」シリーズの中で最もスポーティーでありながら最もゴージャスなモデル、という位置づけも、もちろん変更はない。
かくしてこのモデルには、高性能車の証しである開口部の大きさを強調したフロントマスクや、ディフューザー形状が目を引くリアバンパーが装着される。そして、歴代モデルに共通する外観上最大の特徴でもあるブリスター状に大きく膨らんだリアのフェンダーなど、専用のエクステリアデザインが随所に見受けられる。インテリアも、ホールド性を追求したことがひと目で明らかなフロントシートや、レザーやアルカンターラを多用した特に上質な仕立てが印象的。さらに、専用グラフィックを採用したメーターなどが標準で採用されている。
そんな新型ならではの最も大きなトピックは、完全に刷新された心臓が搭載されていることだ。先代、先々代と使われてきた、4.2リッターという大排気量の高回転・高出力型自然吸気V8エンジンとは決別。新たに採用されたのは、レスシリンダー化しつつ2.9リッターへと大幅なダウンサイジングを実行したV6ユニットだ。
90度バンクの内側に2基のターボチャージャーをアドオンすることで、従来型同等の最高出力と、170Nmもの最大トルク上乗せを実現させたそんな新エンジンを、従来型の7段DCTに換えて8段のステップATと組み合わせた。いかにも「記号性よりも実利を選んだ」と思える、“いま風”パワーパックの持ち主となった。
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底なしのトルク感
そんな新型RS 4アバントの心臓は、「パナメーラ」や「カイエン」など、最新ポルシェ車の一部にひと足早く搭載されたユニットと基本を共にするアイテム。実は、「フォルクスワーゲン・グループ内のV型ガソリンエンジンは、8気筒がポルシェ主導、6気筒がアウディ主導で開発および生産を行う」というコンセンサスがすでに取れているという。
そんな“アウディ純正エンジン”を搭載する新型で、まずは国際試乗会の基点となったスペイン南部の街、マラガ中心部のホテルをスタート。平日の朝方ということでそれなりに混雑している道を、新しいRS 4アバントは、ダウンサイズによるネガを感じさせることなく十分活発に駆け抜けてくれた。
4.2リッターから2.9リッターへと1リッター以上もの排気量ダウンが行われたものの、そんなことを意識させられる場面は事実上皆無。こうした街乗りシーンでのターボブーストの立ち上がりはごく自然で、かつ滑らか。「とても3リッター以下の排気量とは思えない」という表現がふさわしい。
混雑した市街地を抜け出し、アクセルペダルにより力を込められる状態になってくると、キックダウンを行うまでもなく低いエンジン回転数のままに得られる太いトルク感は“底ナシ”のよう。さらにアクセルペダルを踏み込んでエンジン回転数が上昇すれば、パンチ力あふれる怒涛(どとう)の加速力を得ることができる。
いずれにしても、従来の自然吸気V8時代からすれば、「高い回転数に依存せず同等以上の力強さが得られる」のが大きな相違点。ちなみにアウディは、初代RS 4アバントがツインターボ付きのV6エンジンを搭載していたことから、最新モデルの心臓を説明する際に“原点回帰”という表現も用いている。
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コーナーは終始オン・ザ・レール
今回の国際試乗会で設定されていたルートは、マラガ郊外の一般路。「RSモデル」だからと期待したサーキット走行は設定されず、前述の一般路も都市部に近いため交通量が思いのほか多かったため、強い横Gを連続して受けながらの走りまで確かめることはかなわなかった。
とはいえ、そうした限られた条件下で得られたハンドリングの第一印象は、「徹頭徹尾、オン・ザ・レール」というもの。タイトなコーナーでもフロントヘビーを意識させず、むしろアクセルオンによって積極的に曲がろうとする意思も感じさせられた。それは、今回テストを行った個体が、減速側のみならず駆動側でもベクタリング効果を発揮するリアのスポーツディファレンシャルや、電子制御式の可変減衰力ダンパー「DRC」などからなる、「RSダイナミックパッケージ」をオプション装着していたことと無関係ではなさそうだ。
フロントシートにいるときは、「基本は硬派であるものの、意外にもストローク感が豊かでフラット感も強くなかなか快適だナ……」と思えた乗り味は、後席に移動すると大きく印象が変わった。“揺すられ感”がはるかに強く、前輪側を軸としたピッチモーションが終始絶えない。端的に言って、前席と後席でこれほどまでにテイストが異なるモデルは、最近では珍しいと感じた。
そんな今回の国際試乗会に用意されたRS 4アバントは、すべてが日本ではまだなじみのうすいハンコック製タイヤを装着していた。前述のように、性能のピークまでは試せていないが、街乗りシーンなどでの静粛性やユニフォーミティーの高さなどを含めて、まずは「さすがはアウディスポーツの認証を取っているだけのことはある」と思えた。
ダウンサイズにレスシリンダーを決断した心臓に、韓国ブランド製タイヤの純正装着……と、何かにつけて時代を感じさせられる最新のホットなアウディ車であった。
(文=河村康彦/写真=アウディ/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
アウディRS 4アバント
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4781×1866×1404mm
ホイールベース:2826mm
車重:1715kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:450ps(331kW)/5700-6700rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1900-5000rpm
タイヤ:(前)275/30R20 97Y /(後)275/30R20 97Y(ハンコック・ヴェンタスS1エボ2)
燃費:8.8リッター/100km(約11.4km/リッター 欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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