アストンマーティンDB11ヴォランテ(FR/8AT)
粋で優雅なオープンGT 2018.03.15 試乗記 「アストンマーティンDB11」のラインナップにオープンモデルの「ヴォランテ」が加わった。510psの4リッターV8ツインターボユニットがもたらす速さは、もちろんこのクルマの魅力には違いない。しかし、ヴォランテならではの魅力は、優雅に走ってこそ際立ってくるだろう。南フランスのニースで試乗した。目下絶好調のアストンマーティン
2017年のアストンマーティンは年間で5117台を販売、これは対前年比で58%増――と、そういうリリースが届いたのはつい先日のこと。それにしても5000台オーバーとは……と思いきや、これは「ヴァンテージ」や「DBS」などのモデル群がきれいに出そろった2008年以来のことだという。
数字的にみればマクラーレンやランボルギーニよりは多く、フェラーリよりは少ないといったところで、希少性と収益性を今日的感覚で両建てするにはちょうどいいラインかなと思うところもある。
が、今年はフルモデルチェンジしたヴァンテージのデリバリーが始まり、来年には「DBX」とうわさされるSUVが登場……とあらば、その数字は2020年に向けて拡大の一途となるに違いない。なにせ現在の社長は、直近までカルロス・ゴーンの右腕として日産の副社長を務めていたアンディ・パーマーである。広報から発表されるファイナンシャルリポートも詳密さが増したように感じるのは気のせいではないだろう。投資対象として魅力的な高収益企業へと成長させるというのも、氏に託された重要なミッションのひとつだ。
8気筒がもたらす強み
そして今年、ヴァンテージと並んでアストンマーティンのラインナップに追加される新しいモデルがDB11ヴォランテだ。ヴォランテとは軽快感や開放感を表すイタリア語で、彼ら流の伝統的なオープンカーの呼称でもあるわけだが、よりライトでカジュアルでスポーティーなヴァンテージのオープンカーには「ロードスター」という一般的な呼称を用いている。すなわち、アストンマーティンにとってもヴォランテとは特別なラグジュアリー性をわざわざ示すものなのだろう。
初代「ヴァンキッシュ」以来、改善を重ね続けて第5世代となる最新のVHプラットフォームをコアに、2+2シーターのスペースユーティリティーを備えるDB11ヴォランテのディメンションやジオメトリー関係はベースとなったクーペと違いはない。ただし搭載エンジンをV8のみとすることで生まれた前端部のスペースにクロスメンバーを加え、サイドシルやサス取り付け部に補強を施すなどの強化策により、車体ねじり剛性は先代にあたる「DB9ヴォランテ」に対して40%の向上をみている。
対して重量はベースとなったクーペの12気筒モデルとほぼ同等に収められた。電動油圧開閉式の幌(ほろ)は部位によっては7層と強力な耐候性をもたらしながら、裁断等の工夫もあってルックス的にはスリークにまとめられている。そのシステムをインテグレートした上での前後重量配分は47:53と、鼻先の軽さを利す8気筒の長所はそがれていない。
滑らかでしなやか
搭載されるエンジンはAMGとの共同開発なるホットVマウントツインターボの4リッターV8で、最高出力は510psを発生、ZF製の8段ATとの組み合わせで最高速は300km/h、0-100km/h加速は4.1秒をマークする。
自慢の新型12気筒を搭載しなかった理由は、現状のカタログモデルである「ヴァンキッシュSヴォランテ」とのカニバリという点も大きいだろうが、動力性能的には大差なく、ユーザーのニーズには十分沿うものとして判断されたようだ。
エンジンスタート時のさく裂音は相変わらずながら、その後のアイドリングや低回転域での走行では音量が抑え気味にしつらえられているのはいかにも最新のスーパースポーツらしい。ゆえにDB11ヴォランテは、街中では優雅なキャラクターが突出して表れるように思う。
3モードのアダプティブダンパーを緩めての走りは滑らかで、ロードノイズを含む足まわりからの侵入音も丁寧に整理されている。そして大きな目地段差のような凹凸を踏んでもスカットルはじめ車体側に不快なシェイクは一切伝わってこない。丸くしなやかなこの乗り心地は従来のアストンマーティンにはなかった魅力といってもいいだろう。
パワーではなく心意気で乗るクルマ
搭載されるV8ユニットはピークパワーのみならず、低回転域からのトルクもリッチで、オープン化による重量増を補って余りあるほどの力感をもたらしていた。アップダウンの続くワインディングロードを走ればブレーキング時のバランスやアンダーステアの少なさに、優れた重量配分の片りんがうかがえる。AMG版のV8サウンドはスポーツモードではたけだけしく感じられるほどの力強いサウンドだが、対すればアストンに搭載されるそれは若干ながら伸びやかで澄んだ音質に仕立てられているようだ。
とはいえ、スポーツカー同然に振る舞えるというのはあくまで余技である。DB11ヴォランテは前席のシートバックにオーナメントスペースが仕込まれている。サテンウッドやカーボンなど内装トリムと連動した素材がそこにはまり、幌を下ろせばチラリとその化粧がみえるというわけだ。いかにもイギリス人らしい粋、それがDB11というクルマを支える芯であることは間違いない。
(文=渡辺敏史/写真=アストンマーティン/編集=竹下元太郎)
テスト車のデータ
アストンマーティンDB11ヴォランテ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4750×1950×1300mm
ホイールベース:2805mm
車重:1870kg(EU装備重量)/1812kg(EU最低許容重量)
駆動方式:FR
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:510ps(375kW)/6000rpm
最大トルク:675Nm(68.8kgm)/2000-5000rpm
タイヤ:(前)255/40R20/(後)295/35R20
燃費:--リッター/100km
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
NEW
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。











































