第508回:ウエットグリップ性能が長持ち!
雨に強い新タイヤ「ミシュラン・プライマシー4」を試す
2018.06.22
エディターから一言
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ミシュランのプレミアムコンフォートタイヤ「プライマシー」シリーズが第4世代に進化。「摩耗しても高いウエットグリップ性能を発揮する」といううたい文句は本当か? 散水路を含む特設コースで、新製品「ミシュラン・プライマシー4」の実力を試した。
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同じような見た目でも性能は全然違う
「タイヤなんて、サイズが合って溝さえあれば何だってOKでしょ?」……と、半ばそんな考え方から、摩耗が進んでいざ交換という際に“安さオンリー”で商品を選択するユーザーが少なからず存在するという。
とはいえ、少なくともこのサイトを目にする人にぜひもう一度認識してほしいのは、「唯一路面と接触する部品」であるタイヤとは、“車体を支える”という機能を筆頭に、“走り・曲がり・止まる”という運動性能や、静粛性、乗り心地といった快適性など、他に類を見ない多くの、しかも重要な役割を担っているということだ。
当然それは安全にも直結しているし、日々のカーライフをゆううつにも、あるいは楽しくもしてくれるアイテムといって過言ではない。極端に言えば、それひとつでクルマのキャラクターさえも一変させてしまうのが、1本当たりわずかハガキ1枚ほど――すなわち4本すべてでもA4サイズのコピー紙1枚ほどの面積だけで路面と接している、タイヤという代物なのである。
そんなタイヤは、乱暴に説明すれば、ゴムを中心とした練り物を成形した後、金型に入れて加熱・加圧することで化学反応させた工業製品である。となれば、その“練り物”自体にどのような物質を混ぜ込むかや、どんな温度や圧力で、どの位の時間化学反応させるか等々、そこで生かされるアイデアやノウハウはまさに無限大。それこそがタイヤメーカーの技術の見せ所である。
一見、皆同じように思える黒くて丸いタイヤというのは、1種類ごとにすべて固有のキャラクターを備えている。今回紹介する「ミシュラン・プライマシー4」の試走でも、そうしたタイヤという工業製品の特色を感じずにはいられなかった。
長く持続するウエットグリップ性能が特徴
世界No.1の販売本数を誇るわが日本のブリヂストンと、老舗として名を知られるフランスのミシュラン――規模の大きさや技術力の高さから、“世界のタイヤ両巨頭”とも紹介され、時にモータースポーツの世界でもしのぎを削ってきた双璧の一方であるミシュランが、この6月18日に日本に導入したのが、コンフォートタイヤ「プライマシー4」だ。
名称からも想像がつくように、このモデルは「プライマシー3」の後継として開発されたもの。当初は16インチから19インチまでの計36サイズの設定で販売されるが、2013年に発売されたプライマシー3との世代交代を行うために、順次バリエーションが拡大されていくという。
ヨーロッパ地域で2018年2月に発売されたこの製品の開発作業は、主として本社のあるフランスにおいて行われた。一方で、“プレミアムコンフォート”をうたう商品ゆえ、静粛性や快適性に関する部分では、「日本からの意見も反映されている」とのこと。走ればある程度のノイズが出るのは当たり前というヨーロッパ側の考え方に対し、静かさや乗り心地に対する見方は「やはり日本のユーザーが一番シビア」であるという。
回転方向性を持たないトレッドパターンはオーソドックスで、一見したところではプライマシー3と変わらないようにも思えるものの、摩耗時の溝体積減少を抑制するべくストレートグルーブのサイド壁部分を垂直に近づけたり、横断面の溝面積を周方向で均一化することでパターンノイズの音圧変動を抑える工夫を盛り込んだりと、実は“フルチェンジ”と呼ぶにふさわしい進化を遂げている。低温時の柔軟性を高め、ウエットグリップを向上させる配合剤として知られるシリカも、プライマシー3に対して「配合量をかなり高めている」という。
そんなプライマシー4のセリングポイントは「履き始めから履き替え時までウエットブレーキング性能の向上を実現させたタイヤ」というもの。かくして、テストのための舞台には、さまざまなバリエーションのウエット路面が用意されていた。
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うたい文句に偽りなし
テストイベントが開催されたのは、駆動系部品のサプライヤーであるGKNドライブラインが栃木県に所有するプルービンググラウンド。散水設備を備えたハンドリング路も擁するこの場所は、日本のミシュラン開発拠点のひとつでもあるという。
プライマシー4の実力の一端をまず垣間見たのは、ウエット路面上でのフルブレーキング時の挙動である。新品と残り溝2mmの摩耗品をプライマシー3との比較でチェックしたのだが、やはり摩耗品同士では制動距離の差が歴然としていた。特に205/55R16サイズを履いた「フォルクスワーゲン・ゴルフ」を用いての、初速80km/hからのウエットブレーキテストでは、減速Gの違いを体感できるほどだった。
一方、散水されたハンドリング路での、215/55R17サイズを履いた「トヨタ・クラウンアスリート ハイブリッド」での走行では、コンフォートタイヤらしからぬグリップ力の高さが印象に残った。
また、絶対的なグリップ力の高さもさることながら、限界を超えた際の挙動の穏やかさも注目に値するポイントで、「そろそろ前輪がグリップ力のピークだな」と感じられた後、あえてさらにステアリングを切り込んでいっても、急激にグリップ力を失うようなそぶりは見せなかった。雨の高速道路出口ランプへとオーバースピード気味に進入してしまったシーンを想像してもらえれば、こうした特性がそのまま安全性に貢献していることがイメージできるだろう。
プライマシー4のもうひとつの売り物である静粛性や乗り心地に関しては、今回のテストフィールドのみではなかなか判定が難しかったというのが正直なところ。それでも、荷重が高まってもパターンノイズが急増することがなかったのは、バンク下のフラット部分で横Gが高まった際に確認できた。
総じて、「幅広い車種とのマッチングが取りやすそうな、ウエット路面にすこぶる強いコンフォートタイヤ」というのが、今回のテストで得られた実感である。その仕上がりぶりは、なるほどミシュランの主力商品の一翼を担うに十分な実力という印象だ。
(文=河村康彦/写真=日本ミシュランタイヤ、webCG/編集=堀田剛資)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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