第514回:POTENZAの新フラッグシップタイヤに試乗
優れたグリップ性能と快適性の“バランスの妙”に触れた
2018.07.12
エディターから一言
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ブリヂストンのスポーツタイヤブランド「POTENZA」から、新たなフラッグシップタイヤ「S007A」が登場。高いドライ性能だけでなく、ウエット性能と快適性にも配慮したというグローバルモデルの出来栄えを、一般道とテストコースで試した。
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バランス型プレミアムスポーツタイヤ
低燃費性や、耐摩耗性の高さなど、いわば街乗りシーンでの基本的なポテンシャルに照準を合わせた「ECOPIA(エコピア)」や、昨今増殖が著しいプレミアムSUV市場を意識して開発された「ALENZA(アレンザ)」。さらには、静粛性に富んだ高級タイヤとして認知されて久しい「REGNO(レグノ)」に、“楽に走れる”という新しい価値観を訴求する「Playz(プレイズ)」などなど、キャラクターや対象とする車種によって、微に入り細をうがったワイドなバリエーション展開を誇るブリヂストン。
そんな世界屈指のタイヤメーカーが手がけるスポーツタイヤのブランドが「POTENZA(ポテンザ)」である。まずはドライ舗装路面での高いグリップ力に特化して開発が行われた、このブランド第1号のモデル「RE47」の誕生は1979年のこと。すなわち、間もなく40年という長い歴史の持ち主が、今や世界的にも著名なこのブランドの作品であるわけだ。
そんなPOTENZAの最新モデルが、2018年6月1日に発表、7月1日に発売されたばかりの「S007A(エスゼロゼロセブン)」。従来モデル「S001(エスゼロゼロワン)」の発売が2010年2月だったので、“8年半ぶりのニューモデル”ということになる。
前述のように、そもそもはサーキット走行に焦点を絞り、ハイグリップスポーツタイヤとしてスタートしたのがPOTENZAの起源。しかし現在では、ピュアスポーツカーに装着してのサーキットユースに重きを置いたものや、コンフォート性能なども重視し、高級スポーツカーでの上質なツーリングを意識したもの、さらには、ミニバンや軽自動車への装着で、よりダイミナミックな走りのテイストが気軽に味わえるもの……と、同じブランドの中にあってもキャラクターの細分化が図られている。
そうした中にあって、S007AはS001と同様に、快適性や静粛性、そして転がり抵抗の小ささなどにも配慮をした“バランス型”ともいえるキャラクターが狙いどころ。同時に、S001に対してはドライグリップ力を大幅に引き上げることで、POTENZA元来といえるスポーツ性能をより明確にアピールする姿勢を打ち出しているのが特徴となっている。
スッキリとした操縦感覚を志向
快適性や耐摩耗性などはS001と同等以上をキープした上で、「コーナリング時のグリップ力はもとより、ターンイン初期の応答性や直進安定性など、主にドライ路面での運動性能を大幅に引き上げることを狙った」とうたわれるS007A。
そのために採用された手法は、まずサイド部分の剛性を上げることで横力を受けた際のタイヤ全体の変形を抑制してコーナリング時の接地性を向上させ、より大きなコーナリング力を実現させたり、センターブロックから溝を排したリブやブロック幅を拡大させることで剛性を高めたパターンの採用などで、よりシャープな運動性能を実現させたりするという点にあったという。
新たに採用されたトレッドコンパウンドは、「シリカの含有率はS001用と同等で、硬度はむしろより高いものを採用」とのこと。より高いドライグリップ力を目指しつつも、こうして必ずしもソフトなコンパウンドを用いたわけではない点に、単純に粘着力の高いゴムの力で路面を捉えるのではなく、ブロックの倒れ込みやタイヤケースの変形を抑えることで、よりリニアでダイレクトなコントロール性を備えた、スッキリとした操縦感覚を持つスポーツタイヤに仕上げていこうという設計の思想を感じとることとなった。
タイヤの“丸さ”が感じられる
そんなS007Aのチェックはまず、ブリヂストン所有の黒磯プルービンググラウンド周辺での、高速道路を含んだ一般路の走行。次いでテストコースへと戻り、ドライとウエットのハンドリング路を用いての、S001との比較というメニューで行った。
一般道を、「アウディA4」と「ジャガーXE」で走行した際に共通して感じられた事柄は、まず「真円度が高く、上質なタイヤである」ということだった。“タイヤが丸い”のは当然と思われるかもしれないが、完全な真円で、しかも一周の中で重量が均質な製品を作るには、実はここにこそ高い技術力が必要とされるのだ。
そしてS007Aは、まさにそうした基本がよくできているというテイスト。同時に、ロードノイズが必ずしも小さいタイヤではないという印象も、両車で共通して感じられた事柄だ。
一方、POTENZAとはいっても乗り味に特にハードな印象は伴わない。これならば、幅広い車種に対してマッチングが良さそうだ。
ウエット路面でのポテンシャル向上は大々的にはうたわれていないものの、「ジャガーXE」を使ったS001との乗り比べでは多少ながらもより高いグリップ感が得られたというのが実際のところである。
さらに、「アウディA4」と「トヨタ86」を用いてのドライハンドリング路面では、S001との印象の違いはより鮮明だった。ターンイン時点での応答は、S007Aのほうが“過敏に至らない範囲でよりシャープ”だし、コーナリング時のグリップ力のピークも明確により高い感覚。そもそも、スキール音が発生するポイントがより遅い点でも、スポーツ派のドライバーにはより歓迎されることは間違いないだろう。
これまでS001に対して、特に不満を抱くことはなかったのだが、S007Aと比べ(てしまっ)た後には、「これだと『POTENZA』の名を語るには、ちょっと物足りないかな……」と思えてしまったのは事実。端的に言えば両者の間には、“スポーティー”と“スポーツ”ほどの感覚の違いがあったということだ。
絶対的なドライグリップ力のレベルとしても「このタイヤなら、スポーツ車種との組み合わせでサーキット走行にトライしてみたいナ」と、そんな印象を抱かされたニュータイヤであった。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸、ブリヂストン/編集=近藤 俊)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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