第15回:スバル・フォレスター(前編)
2018.12.05 カーデザイナー明照寺彰の直言 拡大 |
「あまりにもデザインが代わり映えしない!」と、評判がいまひとつの新型「フォレスター」。キープコンセプトは決して悪いことではないが、これじゃ購買意欲が湧かないという意見にもうなずける部分はある。プロの目から見た新型フォレスターはどうなのか。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
強さは出ているんだけど……
明照寺彰(以下、明照寺):昔からですけど、ヒット車の次期型はデザインするのが非常に難しい。どうしても保守的になりますから。前のフォレスターは、北米を中心にヒットしましたよね。だから、なかなかガラッと変えるのは難しかったんだろうと思います。それに、こうやって少しずつ進化させるデザインのやり方については、個人的に肯定的ではあるんです。「ポルシェ911」みたいに。
永福ランプ(以下、永福):新型フォレスター、進化してますか?
明照寺:進化のポイントというかデザイナーの意図は、おそらく硬質な面やボリュームのあるフェンダーなどで、先代より“強さ”を出そうとしたことにあるんじゃないでしょうか。
永福:強そうになってますかねぇ。
明照寺:新型と先代を比べると、見分けがつきづらいのも確かですけど(笑)、先代のほうがタイヤが大きく感じませんか?
永福:うーん、そう言われれば。
明照寺:タイヤのサイズはあまり変わらないはずなんだけど、新型のほうが少し小さめに見えるでしょう。
ほった:(カタログを調べつつ)あんまりじゃなくて、タイヤサイズ、まったく変わってないですね。先代も新型も225/60R17か225/55R18です。
明照寺:新型の方が前後のオーバーハングが“重たい”から、その分タイヤが小さく見えるんですよ。
ほった:新型のフロントは、特に四角張って見えますしね。
明照寺:先代より顔が大きいのは確かです。
永福:それはバランスが崩れたってことじゃないんですか。
明照寺:プラス、フェンダーの断面も先代より“強さ”を出していますね。結局、ボディーのボリュームがかなり高いところにあるんですよ。その分、タイヤとボディーのボリュームのある部分との距離が長くなって、タイヤが小さく見えてしまう。デザイン的にはそこがもったいないですね。
デザインに見え隠れする“良心”
ほった:素朴なギモン、なぜタイヤサイズを上げなかったんでしょう?
永福:まあ、ユーザーとしてはタイヤサイズはあんまりむやみに大きくしてほしくはないですけどね。大きいほうが見た目はカッコよくなるけど、タイヤ交換のコストがどんどん上がっていく。偏平(へんぺい)率をどんどん下げるのも困ります。
ほった:フォレスターにとっては雪道もすごく重要なので、スタッドレスへの交換率も高いでしょうしねえ。
永福:そういう意味では、タイヤサイズを据え置いたのは良心的だよね。
明照寺:ただ、デザイナーとしてはもっと大きなタイヤサイズを希望していたはずです。
永福:なるほど。じゃ、ユーザーのニーズを考えて据え置いたってことかな? だとしたらスバルらしい質実剛健さだけど。
明照寺:例えば、フォレスターと競合する「ホンダCR-V」は、もっとタイヤの直径が大きいはずですよ。
ほった:CR-Vのタイヤサイズは、235/60R18ですね。日本仕様は。
永福:えーと、2まわり上って感じかな。
明照寺:タイヤの直径が大きい分、バランス的にもスポーティーに見えますよね。
永福:確実にスタイリッシュに感じます。でも、フォレスターのタイヤの小ささも嫌いじゃない。なにかこう、スバルらしい不格好なカッコよさという感じで。初代「レオーネ」なんかそうだったじゃないですか。あれは本当にカッコ悪くて、でも雪国で見ると逆にカッコよく見えた。
明照寺:僕は年代的に、初代レオーネの実体験はほぼないですけど(笑)。良心的といえば、フォレスターは実際に運転席に座ってみると視界がいいんですよ。非常に実用性を重視しているんだと思います。こういうSUVって、北米だと高齢者とか女性ユーザーも多い。日本でのコンパクトカーとか軽自動車とか、そういうターゲットに結構近かったりするんです。視界にこだわるところは、スバルというメーカーの良心でしょうね。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
あのトキメキを返して!
永福:新型フォレスター、日本のクルマ好きとしては、ターボが廃止されてMTもなくなったっていうのが非常にガッカリだったわけですけど、なんだかんだいって「カタチは、まぁこれはこれでいい」っていう感じじゃないでしょうか。ただ、2015年の東京モーターショーでお披露目された「ヴィジヴ フューチャーコンセプト」がとてもカッコよかったじゃないですか。あれが次期フォレスターになるという予想があったんで、出てきたら「えっ、全然違うじゃん」という期待外れ感はありました。
ほった:まぁ、スバルは「あれが次期フォレスターになる」とは一度も言ってないんですけどね。雑誌とかに書かれてただけで。
永福:あれが次期フォレスターなら、スバルのデザイン革命が進行中なんだろうと思ったけど、実際に出てきたクルマは、あまりにも普通で代わり映えしなくて、逆にビックリしましたね。あれをフォレスターにするのは無理だったんでしょうか?
明照寺:それはメーカーの考え方次第でしょうけど(笑)。あれは全幅がかなり広くないと無理でしょう。
ほった:「ボルボXC40」くらい?
明照寺:全幅1900mmくらいあれば、あのプロポーションにできるのかなと思います。
永福:あれだけの踏ん張り感や、上屋の小ささが醸し出すスタイリッシュ感は、それくらいの全幅がないとできないですか。
明照寺:前から見ると、大きめのグリルがあって、ボディー色が見えて、その外側に横長のヘッドライトがあるので、どんどん外に膨らませていかざるを得なくなります。全幅をフォレスター並み(1815mm)に抑えるなら、モチーフを再考する必要があるでしょう。
ほった:それでもムリにあれに近づけたら、居住性がメタメタになるでしょうね(笑)。
(文=永福ランプ<清水草一>)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

明照寺 彰
さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。
永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。
webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。
-
第41回:ジャガーIペース(後編) 2019.7.17 他のどんなクルマにも似ていないデザインで登場した、ジャガー初の電気自動車「Iペース」。このモデルが提案する“新しいクルマのカタチ”は、EV時代のメインストリームとなりうるのか? 明照寺彰と永福ランプ、webCGほったが激論を交わす。
-
第40回:ジャガーIペース(前編) 2019.7.10 ジャガーからブランド初の100%電気自動車(EV)「Iペース」が登場。SUVのようにも、ハッチバックのようにも見える400psの快速EV。そのデザインに込められた意図とは? EVデザインのトレンドを踏まえつつ、現役の自動車デザイナー明照寺彰が語る。
-
第39回:アウディA6 2019.7.3 アウディ伝統のEセグメントモデル「A6」が、5代目にモデルチェンジ。新世代のシャシーやパワートレインの採用など、その“中身”が話題を呼んでいる新型だが、“外見”=デザインの出来栄えはどうなのか? 現役のカーデザイナー明照寺彰が斬る。
-
第38回:三菱eKクロス(後編) 2019.6.26 この“顔”はスポーツカーにもよく似合う!? SUV風のデザインが目を引く、三菱の新しい軽乗用車「eKクロス」。迫力満点のフロントマスク「ダイナミックシールド」の特徴とアドバンテージを、現役の自動車デザイナー明照寺彰が語る。
-
第37回:三菱eKクロス(前編) 2019.6.19 三菱最新のデザインコンセプト「ダイナミックシールド」の採用により、当代きっての“ド迫力マスク”を手に入れた「三菱eKクロス」。そのデザインのキモに、兄弟車「日産デイズ」や同門のミニバン「三菱デリカD:5」との比較を通して迫る。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。














































