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第15回:スバル・フォレスター(前編)

2018.12.05 カーデザイナー明照寺彰の直言
スバル・フォレスター
スバル・フォレスター拡大

「あまりにもデザインが代わり映えしない!」と、評判がいまひとつの新型「フォレスター」。キープコンセプトは決して悪いことではないが、これじゃ購買意欲が湧かないという意見にもうなずける部分はある。プロの目から見た新型フォレスターはどうなのか。

北米を中心にスバルの販売を支える基幹車種「フォレスター」。5代目となる現行型は、2018年のニューヨークモーターショーで発表された。
北米を中心にスバルの販売を支える基幹車種「フォレスター」。5代目となる現行型は、2018年のニューヨークモーターショーで発表された。拡大
225/55R18サイズのタイヤを履いた先代「フォレスター」。
225/55R18サイズのタイヤを履いた先代「フォレスター」。拡大
同じく225/55R18サイズのタイヤを履く現行型「フォレスター アドバンス」。前後のオーバーハングのボリューム感に注目。
同じく225/55R18サイズのタイヤを履く現行型「フォレスター アドバンス」。前後のオーバーハングのボリューム感に注目。拡大
現行型「フォレスター」のフロントフェンダー。ホイールアーチの上の高い位置にプレスラインがあり、フェンダーまわりに強いボリュームを持たせている。
現行型「フォレスター」のフロントフェンダー。ホイールアーチの上の高い位置にプレスラインがあり、フェンダーまわりに強いボリュームを持たせている。拡大
こちらは先代「フォレスター」のフロントフェンダー。現行型と比べると、ボリューム感、強さ感がずいぶんと違う。
こちらは先代「フォレスター」のフロントフェンダー。現行型と比べると、ボリューム感、強さ感がずいぶんと違う。拡大

強さは出ているんだけど……

明照寺彰(以下、明照寺):昔からですけど、ヒット車の次期型はデザインするのが非常に難しい。どうしても保守的になりますから。前のフォレスターは、北米を中心にヒットしましたよね。だから、なかなかガラッと変えるのは難しかったんだろうと思います。それに、こうやって少しずつ進化させるデザインのやり方については、個人的に肯定的ではあるんです。「ポルシェ911」みたいに。

永福ランプ(以下、永福):新型フォレスター、進化してますか?

明照寺:進化のポイントというかデザイナーの意図は、おそらく硬質な面やボリュームのあるフェンダーなどで、先代より“強さ”を出そうとしたことにあるんじゃないでしょうか。

永福:強そうになってますかねぇ。

明照寺:新型と先代を比べると、見分けがつきづらいのも確かですけど(笑)、先代のほうがタイヤが大きく感じませんか?

永福:うーん、そう言われれば。

明照寺:タイヤのサイズはあまり変わらないはずなんだけど、新型のほうが少し小さめに見えるでしょう。

ほった:(カタログを調べつつ)あんまりじゃなくて、タイヤサイズ、まったく変わってないですね。先代も新型も225/60R17か225/55R18です。

明照寺:新型の方が前後のオーバーハングが“重たい”から、その分タイヤが小さく見えるんですよ。

ほった:新型のフロントは、特に四角張って見えますしね。

明照寺:先代より顔が大きいのは確かです。

永福:それはバランスが崩れたってことじゃないんですか。

明照寺:プラス、フェンダーの断面も先代より“強さ”を出していますね。結局、ボディーのボリュームがかなり高いところにあるんですよ。その分、タイヤとボディーのボリュームのある部分との距離が長くなって、タイヤが小さく見えてしまう。デザイン的にはそこがもったいないですね。

デザインに見え隠れする“良心”

ほった:素朴なギモン、なぜタイヤサイズを上げなかったんでしょう?

永福:まあ、ユーザーとしてはタイヤサイズはあんまりむやみに大きくしてほしくはないですけどね。大きいほうが見た目はカッコよくなるけど、タイヤ交換のコストがどんどん上がっていく。偏平(へんぺい)率をどんどん下げるのも困ります。

ほった:フォレスターにとっては雪道もすごく重要なので、スタッドレスへの交換率も高いでしょうしねえ。

永福:そういう意味では、タイヤサイズを据え置いたのは良心的だよね。

明照寺:ただ、デザイナーとしてはもっと大きなタイヤサイズを希望していたはずです。

永福:なるほど。じゃ、ユーザーのニーズを考えて据え置いたってことかな? だとしたらスバルらしい質実剛健さだけど。

明照寺:例えば、フォレスターと競合する「ホンダCR-V」は、もっとタイヤの直径が大きいはずですよ。

ほった:CR-Vのタイヤサイズは、235/60R18ですね。日本仕様は。

永福:えーと、2まわり上って感じかな。

明照寺:タイヤの直径が大きい分、バランス的にもスポーティーに見えますよね。

永福:確実にスタイリッシュに感じます。でも、フォレスターのタイヤの小ささも嫌いじゃない。なにかこう、スバルらしい不格好なカッコよさという感じで。初代「レオーネ」なんかそうだったじゃないですか。あれは本当にカッコ悪くて、でも雪国で見ると逆にカッコよく見えた。

明照寺:僕は年代的に、初代レオーネの実体験はほぼないですけど(笑)。良心的といえば、フォレスターは実際に運転席に座ってみると視界がいいんですよ。非常に実用性を重視しているんだと思います。こういうSUVって、北米だと高齢者とか女性ユーザーも多い。日本でのコンパクトカーとか軽自動車とか、そういうターゲットに結構近かったりするんです。視界にこだわるところは、スバルというメーカーの良心でしょうね。

ほった:「ボディーサイズは拡大したのに、なんでタイヤサイズは据え置きにしたんですかね」
明照寺:「デザインの段階では、もうちょっと大きいタイヤを想定していたかもしれませんね」
(写真=荒川正幸)
ほった:「ボディーサイズは拡大したのに、なんでタイヤサイズは据え置きにしたんですかね」
	明照寺:「デザインの段階では、もうちょっと大きいタイヤを想定していたかもしれませんね」
	(写真=荒川正幸)拡大
雪上コースを走行する現行型「フォレスター」の試作車。タイヤは大きいほうがスポーティーに見えるが、冬季にタイヤを履きかえる降雪地のユーザーにとっては、交換費用が頭痛の種となる。
雪上コースを走行する現行型「フォレスター」の試作車。タイヤは大きいほうがスポーティーに見えるが、冬季にタイヤを履きかえる降雪地のユーザーにとっては、交換費用が頭痛の種となる。拡大
2018年8月に発売された「ホンダCR-V」のタイヤサイズは235/60R18。「フォレスター」より3~4cmタイヤの外径(直径)が大きい。
2018年8月に発売された「ホンダCR-V」のタイヤサイズは235/60R18。「フォレスター」より3~4cmタイヤの外径(直径)が大きい。拡大
1971年に登場した初代「レオーネ」。写真はその「エステートバン」で、スバルファンの間では、初めて水平対向エンジン+4WDの駆動システムが採用されたクルマとして知られている。
1971年に登場した初代「レオーネ」。写真はその「エステートバン」で、スバルファンの間では、初めて水平対向エンジン+4WDの駆動システムが採用されたクルマとして知られている。拡大
疲れにくい、運転しやすい設計を通して事故のリスクを減らす“0次安全”の一環として、運転席からの視界のよさを重視するスバル。その伝統は現行型「フォレスター」にも受け継がれている。
疲れにくい、運転しやすい設計を通して事故のリスクを減らす“0次安全”の一環として、運転席からの視界のよさを重視するスバル。その伝統は現行型「フォレスター」にも受け継がれている。拡大

あのトキメキを返して!

永福:新型フォレスター、日本のクルマ好きとしては、ターボが廃止されてMTもなくなったっていうのが非常にガッカリだったわけですけど、なんだかんだいって「カタチは、まぁこれはこれでいい」っていう感じじゃないでしょうか。ただ、2015年の東京モーターショーでお披露目された「ヴィジヴ フューチャーコンセプト」がとてもカッコよかったじゃないですか。あれが次期フォレスターになるという予想があったんで、出てきたら「えっ、全然違うじゃん」という期待外れ感はありました。

ほった:まぁ、スバルは「あれが次期フォレスターになる」とは一度も言ってないんですけどね。雑誌とかに書かれてただけで。

永福:あれが次期フォレスターなら、スバルのデザイン革命が進行中なんだろうと思ったけど、実際に出てきたクルマは、あまりにも普通で代わり映えしなくて、逆にビックリしましたね。あれをフォレスターにするのは無理だったんでしょうか?

明照寺:それはメーカーの考え方次第でしょうけど(笑)。あれは全幅がかなり広くないと無理でしょう。

ほった:「ボルボXC40」くらい?

明照寺:全幅1900mmくらいあれば、あのプロポーションにできるのかなと思います。

永福:あれだけの踏ん張り感や、上屋の小ささが醸し出すスタイリッシュ感は、それくらいの全幅がないとできないですか。

明照寺:前から見ると、大きめのグリルがあって、ボディー色が見えて、その外側に横長のヘッドライトがあるので、どんどん外に膨らませていかざるを得なくなります。全幅をフォレスター並み(1815mm)に抑えるなら、モチーフを再考する必要があるでしょう。

ほった:それでもムリにあれに近づけたら、居住性がメタメタになるでしょうね(笑)。

(文=永福ランプ<清水草一>)

先代「フォレスター」の2リッターターボ車。フルモデルチェンジにより、フォレスターのラインナップからはターボ車やMT仕様が消滅した。
先代「フォレスター」の2リッターターボ車。フルモデルチェンジにより、フォレスターのラインナップからはターボ車やMT仕様が消滅した。拡大
2015年の東京モーターショーで発表された「ヴィジヴ フューチャーコンセプト」。
2015年の東京モーターショーで発表された「ヴィジヴ フューチャーコンセプト」。拡大
「ヴィジヴ フューチャーコンセプト」のスポーティーな意匠に、一部ギョーカイ関係者の間では「スバルの中でデザイン改革が進んでいるか?」と大いに盛り上がった。
「ヴィジヴ フューチャーコンセプト」のスポーティーな意匠に、一部ギョーカイ関係者の間では「スバルの中でデザイン改革が進んでいるか?」と大いに盛り上がった。拡大
横長のグリルにコの字形のヘッドランプ、さらにその外側に張り出したフェンダー……。「ヴィジヴ フューチャーコンセプト」のデザインは、かなり車幅を要する構成となっていた。
横長のグリルにコの字形のヘッドランプ、さらにその外側に張り出したフェンダー……。「ヴィジヴ フューチャーコンセプト」のデザインは、かなり車幅を要する構成となっていた。拡大
現行型「フォレスター」のフロントビュー。(写真=荒川正幸)
現行型「フォレスター」のフロントビュー。(写真=荒川正幸)拡大
明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。

永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。

webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。

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