アウディQ2 35 TFSIシリンダーオンデマンド スポーツ(FF/7AT)
もうホットハッチと呼びたい 2019.01.09 試乗記 既存のヒエラルキーの外にあるという、野心的なポジションで誕生した「アウディQ2」も、日本での販売開始から1年半の時が経過した。あらためてステアリングを握り、ワインディングロードに連れ出すと、導入初期のモデルでは気付かなかったものが見えてきた。1年半たってあらためて見ると
思い出してみれば、2016年3月にジュネーブモーターショーで発表された後、日本でのデビューが2017年6月だったから、実に1年半ぶりにステアリングを握ることになる。しかもその間に車名も変わった。アウディのSUVラインナップで最もコンパクトなモデルとなるQ2である。
試乗車は最高出力150psという実力の1.4リッター直4エンジン搭載モデル。これまでは「1.4 TFSIシリンダーオンデマンド スポーツ」と呼ばれていたが、今後は「35 TFSIシリンダーオンデマンド スポーツ」となるらしい。車名における排気量表記をやめ、出力を示す二桁の数字でグレードを示すのだという。
「35」は最高出力147psから161psまでのエンジンに使用される数字で、よってこのクルマはQ2 35 TFSIになるわけだ。35になんらかの意味がない点は気になるが、これはQ2に限ったことではなく、アウディの全モデルシリーズにおける新ルールである。35という数字を見て、150ps前後の最高出力だと思い出せたら、それはなかなかのアウディ通ということだろう。記憶力が年々怪しくなってきている自分には、到底その自信などはないが。
そうした名称ルールの変更もニュースであるいっぽうで、1年半前よりもクルマの完成度が上がった印象を持ったことも報告したい。Q2は、コンパクトで軽量なボディーを生かしたキビキビした走りがセリングポイントだが、小さくて安い、もっと失礼な言い方をすればデビュー時のそれは、“変わったデザインのチープなアウディ”という印象だった。質感もまたしかり。ルックスはこれまでのラインとは違ったユーザー層にアピールすべく、デザイン的チャレンジを行ったことは理解しても、インテリアをはじめとする全体の質感がそれに追いついていない。アウディという高級ブランドを名乗るにしてはどうかと思った……という記憶がある。
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既存ラインナップと一線を画すデザイン
目下、このクラスはSUVの中でも激戦区である。Q2はCセグメントと呼ぶには小さいものの、次の愛車候補としてオーナー気分で価格とボディーサイズを総合してみると、比較してみたくなるモデルが実に多いのだ。国産勢では「トヨタC-HR」や「ホンダ・ヴェゼル」のほか、「マツダCX-3」や「三菱エクリプス クロス」、最近登場した「レクサスUX」もライバルと言えそうだ。
輸入車勢は、「BMW X2」や「ボルボXC40」に加え、「メルセデス・ベンツGLA」や「フォルクスワーゲン・ティグアン」も価格面からのライバルになろう。特にX2は、コンセプトもターゲットもガチの勝負を繰り広げそうだ。「いやいや、X2のほうが排気量もボディーサイズも大きいだろう」という指摘はごもっともだが、ダウンサイジングという言葉と概念が浸透した今、排気量やサイズだけでクルマは単純に比較できない。
そうしたライバルたちに比べ一回り小さなボディーサイズは、クルマがどんどん大きくなっている昨今、反対にQ2のアドバンテージだと言えるかもしれない。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4205×1795×1500mmと、コンパクトゆえに機動性が高く、立体駐車場もためらいなく使用できる。フォルクスワーゲンの「ゴルフ」あたりのサイズ感を考えているのなら、Q2に目が行く場合もありそうだ。事実、リアシートをさほど重要視しない層というのも確実にいて(自身もかつてはそのひとりだった)、4ドアでありさえすれば多少リアシートが狭くても愛車候補になり得るのだ。
ポイントは、アウディの他モデルと一線を画すこの凸凹したエクステリアデザインを承服できるかどうかだ。Q2のデザイナーは“まだ角の取れていない上流の石”を意識したというが、複雑な面構成を、アウディらしくないと思われる可能性は否定できない。
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記憶を上書きするに十分な質感
アウディらしからぬチャレンジングなデザインと導入初期モデルの質感にネガなコメントを漏らしつつも、久しぶりに乗ったQ2は、しかし記憶の中にあるそれらを上書きするに十分なポテンシャルを持っていた。決して『webCG』でもおなじみのイタリア在住である大矢アキオさんに、「欧州ではQ2の人気が高い」と聞いて、言いくるめられたからでもイタリアにコンプレックスがあるからでもない。
ルックスが良好な印象に転じた理由のひとつには、時間の経過もあるだろう。多少見慣れたせいか、アウディファミリーにあって個性的なエクステリアデザインも、今となっては違和感を覚えるほどではない。それは例えるなら、AKBと乃木坂はギリ理解できても、欅坂ってなんだよ、と言っていた自分がはるか遠い昔のことのように感じるのに少し似ている。最近ではすっかり、不機嫌な表情で踊る彼女たちのロックというかパンクな感じ(違うか?)もアリだと思っている。
ハナシを冒頭に戻せば、完成度は確実に上がったと感じる。ドアの開閉音しかり、ステアリングやシフトレバーといった操作系のタッチもそうだ。宗旨替えも甚だしいのは承知の上だが、正直に言えば「こんなにシッカリしていたっけ?」とさえ思う。
ただし、完璧ではない。ドアまわりにアウディらしからぬ固いプラスチックパーツが使われたりしているのはそのままだ。オプションとなるBang & Olufsenのブランドネームがドアスピーカーのカバーについているが、そこの部分だけは、「ラジカセかよっ」と突っ込みを入れたくなるほど残念だ。Bang & Olufsenがよく了承したな、と余計なことを思うほどである。
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価格が購入者を選ぶ
質感向上は再発見だったが、キラリと光る走り味を持っているのも同時に思い出した。1.4リッター直4ターボエンジンは、言ってしまえばたかだか150psの最高出力である。しかし、ターボエンジンなのに上まできっちり使って味わえる加速フィールや、アクセルレスポンスの良さは健在。フォルクスワーゲングループで使用されるこの1.4リッター系のエンジンは、ひとりで勝手に名機だとそう信じている。
その存在同様忘れがちな、低負荷時に4気筒のうち2気筒分を休止させ、燃費向上を図るという車名にもある「シリンダーオンデマンド」は、相変わらずいつ作動しているのかを気取られない黒子的なハイテクである。一定速度を保ち、恐らくは2気筒で走行中であろうという瞬間にアクセルを踏んでも、キックダウンから加速という一連の動きを違和感なくやってのける。
Qシリーズゆえに“ホットハッチ”という紹介こそはばかられるが、180mmという最低地上高をネガにしない走りは、フツーに走りも楽しみたいから、より重心の低そうなSUV以外のハッチバックモデルにしたほうがベター、という思い込みや常識を払拭(ふっしょく)するものだ。軽快でいながらしっかりとしたハンドリングは、なかなか熱いのである。
フロントノーズが軽く、ステアリング操作に対してスッと頭が入っていく感じは、MQBプラットフォーム採用モデルからも感じ取れる美点だが、それらの中でもショートホイールベース傾向にあるQ2は(実は「ポロ」のほうがさらに45mm短いとはいえ)、特に魅力的なハンドリングを持っている。
日本導入時に比べ質感が上がり、個性的なデザインも理解でき、ハンドリングも申し分ないとくれば、コンパクトなSUVを考えている人におススメしたい……ところだが、405万円という価格(試乗車はオプション込みで495万円だ)は、いかにプレミアムブランドとはいえやはり購入者を選ぶ。したがってもしも街でQ2 35を見かけたら、オーナーを羨望(せんぼう)し、さまざまな理由で尊敬の念を抱いてしまいそうだ。
(文=櫻井健一/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
アウディQ2 35 TFSIシリンダーオンデマンド スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4205×1795×1500mm
ホイールベース:2595mm
車重:1340kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/55R17 94W /(後)215/55R17 94W(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:17.9km/リッター(JC08モード)
価格:405万円/テスト車=495万円
オプション装備:オプションカラー<ベガスイエロー>(6万円)/オートマチックテールゲート(7万円)/アシスタンスパッケージ<サイドアシスト+アクティブレーンアシスト+トラフィックジャムアシスト+リアクロストラフィックアシスト+プレセンスベーシック+ハイビームアシスト>(13万円)/ナビゲーションパッケージ<MMIナビゲーションシステム+TVチューナー+8スピーカー+スマートフォンインターフェイス>(35万円)/Bang & Olufsenサウンドシステム(12万円)/パーシャルレザーシート(12万円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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