第133回:コンビニアイスにフェラーリを見た!
2019.05.14
カーマニア人間国宝への道
コンビニアイスに脱帽!
人は時に、五感から大いなる感動を得る。五感とは視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚のことである。
先日私が得た感動は、味覚だった。
それは、セブン―イレブンで大量に売られていた、「MOW(モウ)」というアイスクリームである。MOWとはモーモー鳴く牛さんの鳴き声だろうか。
パッと見、パッケージにはかなりの高級感があるが、製造元は森永乳業。値段は1コ173円。ブランド的にも価格的にも非常に庶民的ゆえ、大きな期待は抱かなかった。
が、ひと口食べて私はシビレた。濃厚な風味がパア~~~ッとお口の中に広がって、思わず陶然としてしまったのだ!
「ななななな、なんだこのうまさは!」
パッケージをよく見ると、私が食べたのは「MOW」のスペシャルシリーズ「ラムレーズン~バターの香り~」だった。バター風味のアイスの中に、ラムレーズンがかなり多めに入っていて、それがものすごぉ~くゼイタクな味わいだったのだ! 調べると、セブン―イレブン限定販売らしい。さすがセブンパワー。
思えばアイスクリームという食べ物は、これまでの生涯で2度、私に大いなる感動を与えてくれた。
1回目はチビッコの頃。当時、中野ブロードウェイの中にあった洋食屋さん(詳細は忘却)へ家族で食事に出掛けた際、食後に食べたアイスクリームである。
それは、レトロなステンレスの器に載り、缶詰のミカンやさくらんぼが添えられた、当時の典型的な「お店で食べるアイスクリーム」だったが、父がアイスをスプーンで練るとあら不思議。ものすご~~~くおいしくなった!
「ソフトクリームみたい!」
子供たちは一同感動して、「私のもやってやって~~!」と、父にねだった。
フツーのアイスをスプーンで練ると、食感がミルクっぽく滑らかになり、確実においしくなる。これは、安めアイスのほうが効果が高いような気がする。
173円で味わえるゼイタク感
2度目の感動は、確か中学生の頃。生まれて初めて「レディボーデン」を食べた時のことである。
私は、そのあまりにも高級かつ濃厚な味わいに、「こんなものがこの世にあったのか!」と思いました。それまで食べていたカップアイスとはレベルの違う、異次元のおいしさ。カローラとベンツの差みたいなもんでしょうか。
レディボーデンは、当時「アイスクリームの芸術品」というキャッチフレーズを打ち、日本にホームサイズの高級アイスを広めた商品。私はレディボーデンで、この世の奥深さを知りました……。
そして、生涯3度目のアイスクリームによる感動が、齢(よわい)57で訪れたというわけだ。
今回は、「値段が安いわりにメチャメチャおいしい」という、新しい形の感動だった。そのおいしさは、アイス全体よりも、主にラムレーズンの濃厚な味わいによったものというのも新しかった。
パッケージの側面を見ると、種類別という欄に「アイスミルク」と書かれている。
調べてみると、乳固形分や乳脂肪分のパーセンテージが高い順に「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」「氷菓」となっている。アイスクリームの代表が前述のレディボーデンやハーゲンダッツで、氷菓の代表がガリガリ君である。
アイスミルクは上から2番目。決して頂点ではない。ハーゲンダッツにもアイスミルクに分類されるものもあるらしいけど、とにかくMOWは値段が安い。ハーゲンダッツなら1コ300円近くするのに、たったの173円(税込み)なのだ! 173円で頂点に迫るうまさ! コスパは非常に高い。
神レベルのうまさ
「これはフェラーリだな……」
私は感動すると大抵、「これはフェラーリだな」と口走るのだが、今回はMOWスペシャル ラムレーズンに、フェラーリを感じました! それは簡単に言えば、コスパが高いってことです。
フェラーリは中古でも値段が高いけど、なにせ値段が下がらないので、長い目で見れば非常に安い。維持費だってたいしてかからない。少なくとも、私の場合はかかってない。なのに、満足度はクルマ界の頂点。
私の脳内におけるフェラーリは、若い頃に体験した「テスタロッサ」と「348tb」がベースとなっている。つまり、ダメダメ時代の堕天使フェラーリだ。
総合的なパフォーマンスはまったく高くないので、サーキットを走ったら遅いし危ないが、あまりにも芸術的な音や振動、その他もろもろのアトモスフィアにより、乗る者を心底シビレさせ、βエンドルフィンがドバドバ分泌。神を見てしまう。それはアイルトン・セナが見た神と同じ神である(断言)。
考えてみれば、フェラーリの中でもテスタロッサと348tbは、中古価格が安い。テスタは一時暴騰しましたが、現在はかなり落ち着いております。348tbは、一時はサンキュッパくらいで買えました。現在はゴッキュッパくらいしますが、それでもミドシップ2シーターフェラーリの中では断然安いです。
たったの173円ながら、私に大いなる感動を与えてくれたMOWラムレーズン。これはフェラーリだ! フェラーリ348tbの香りがする! すばらしいぜMOWラムレーズン! ありがとうMOWラムレーズン! ハーゲンダッツを毎日食うのはバチが当たりそうだけど、MOWラムレーズンならお値段控えめだから大丈夫だしネ!
あ、でもテスタや348tbは毎日乗らないでください。フェラーリ様は毎日乗ると消しゴムみたいに減りますヨ! 年間走行距離は最大でも2000kmに抑えようネ!
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第333回:毛が生えようが、ハゲようが 2026.4.13 清水草一の話題の連載。「ジープ・アベンジャー」に追加設定された4WDモデル「アベンジャー4xeハイブリッド」で夜の首都高に出撃した。ステランティスで広く使われるマイルドハイブリッドパワートレインと4WDの組み合わせやいかに。
-
第332回:クルマ地味自慢 2026.3.30 清水草一の話題の連載。最近、年齢とともに地味なモデルが大好きになった。そんななか、人気の「フォレスター」や「クロストレック」の陰にひっそりと隠れたスバルを代表する地味モデル「インプレッサ」に試乗。果たしてその印象は?
-
第331回:デカいぞ「ルークス」 2026.3.16 清水草一の話題の連載。首都高で新型「日産ルークス」の自然吸気モデルに試乗した。今、新車で購入される軽ハイトワゴンの8割はターボじゃないほうだと聞く。同じターボなしの愛車「ダイハツ・タント」と比較しつつ、カーマニア目線でチェックした。
-
第330回:「マカン」のことは忘れましょう 2026.3.2 清水草一の話題の連載。JAIA(日本自動車輸入組合)主催の報道関係者向け試乗会に参加し、「T-ハイブリッド」システムを搭載する「911タルガ4 GTS」とBEV「マカン ターボ」のステアリングを握った。電動化が進む最新ポルシェの走りやいかに。
-
第329回:没落貴族再建計画 2026.2.16 清水草一の話題の連載。JAIA(日本自動車輸入組合)が主催する報道関係者向け試乗会に参加し、最新の「マセラティ・グレカーレ」に試乗した。大貴族号こと18年落ち「クアトロポルテ」のオーナーとして、気になるマセラティの今を報告する。
-
NEW
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.20試乗記本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは? -
NEW
ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン社長に聞く 日本での展望とスポーツカーの未来
2026.4.20デイリーコラム2025年8月に着任した、ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン新社長。彼の目に日本はどう映り、またどのような戦略を考えているのか? 難しい局面にあるスポーツカーや電気自動車の在り方に対する考えを含め、日本における新しいリーダーに話を聞いた。 -
スバル・ソルテラET-HS(前編)
2026.4.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル&STIでクルマを鍛えてきた辰己英治さんが、“古巣”スバルの手になる電気自動車「ソルテラ」に試乗。パワートレインの電動化以外にも、さまざまな試みが取り入れられた一台を、ミスター・スバルはどう評価するのか? -
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃
2026.4.18小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。 -
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.18試乗記2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。 -
谷口信輝の新車試乗――ディフェンダー・オクタ編
2026.4.17webCG Moviesブーム真っ盛りのSUVのなかで、頂点に位置するモデルのひとつであろう「ディフェンダー・オクタ」。そのステアリングを握ったレーシングドライバー谷口信輝の評価は……? 動画でリポートします。









