第139回:見た目も足もマシュマロマン
2019.08.06 カーマニア人間国宝への道第一印象は百貫デブ!
ついこの間まで、日本で販売されているシトロエンには、「C3」と「C4スペースツアラー」の2車種しか御座いませんでした。そこに「C5エアクロスSUV」(以降、SUVは割愛)が加わったので、シトロエンファンのはしくれとして試乗させていただくことにいたしました。
我が家には現在、“シトロエン”の「DS3」がいる。いまは別ブランドになったDSだけど、我が家のはギリギリだかなんだかよくわからないがとにかくシトロエン。そんな崖っぷちシトロエンオーナーのC5エアクロスの第一印象は、
「うげえっ! 百貫デブ!」
でした。
とにかくお肉が余っちゃってて、洋服のゴムやベルトがいろんなところで食い込んじゃってる。特に顔は三段腹を思わせる。顔が腹なんだからそりゃデブだわな。
我が家のDS3は、大胆かつ繊細にしてオシャレさんなエクステリアが自慢だけど、それに比べるとC5エアクロスはとっても大味。お砂糖をタップリかけたフルーツ菓子パンみたいなルックスだ。
このぶくぶくしたボディーのイメージのせいで、運転席に座るとなんだかとっても太ったクルマに乗ってるみたいで、すっごく取りまわしが悪く感じる。余ったお肉部分が実際以上にプックリはみ出ているように感じてしまうのです。実際にはサイズはそんなに大きくないんだけど。
うわ、調べたら全長わずか4500mm、全幅なんかたったの1850mmじゃんか! 「RAV4」より小さいやんけ! 信じられん。
ハイドロというよりマシュマロ
でもってC5エアクロスでは、ファンに惜しまれつつ消滅したシトロエンのハイドロ系サスが復活している。PSAが“新世代のハイドロ”と称するサスペンション技術「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)」だ。
なにせ不肖ワタクシ、ハイドロ好きで御座いますからね。「エグザンティアブレーク」に7年、「C5セダン」に2年、合計9年間ハイドロ車を普段の足にしておりました。あのシトロエンの世界遺産的な技術が新世代に生まれ変わったと聞けば、試さずにおらりょうか。
で、その第一印象はというと、
「フワッフワやんけ~!」
でした。
これはハイドロというよりマシュマロだ。考えてみりゃエクステリアもマシュマロマン! そーか、このデザインは乗り味を表現していたのか! さすがシトロエン、奥が深う御座います。
確かにシトロエンのハイドロ系サスといえば、乗り心地がソフトというイメージがビンビンだけど、これは明らかに質が違う。ハイドロは空飛ぶじゅうたんだったけど、これは船! 船だから波(凹凸)が来るとどわ~んと揺れる。
ちょっとブレーキ踏めばぶわ~んと前のめりになる。前のめりになりすぎて、カルカルのブレーキペダルのコントロールにシッパイしてカックンになっちゃうくらいフワッフワ。
かつてのハイドロ系サスは、高速道路を巡行中に路面の大きなうねりを乗り越えると、前後サスがつながってるみたいに(実際オイルでつながってるけど)水平を保ったままフワーンと上下にスイングして、それがメッチャ気持ちよくて、もっと揺すって揺すって! って感じだったけど、これは違う。根本的に違う!
未体験のフワフワ感
このソフトさはなんだろう。接地感は常にあるし、バネがストロークするにつれて抑えは効いてきて、芯はしっかりしてるんだけど、サスの中立付近(って言わないか)がめっちゃフワフワなの。ちょっと体験したことのないフワフワ感。これは新しいスイーツ体験でちゅ!
ただ、かつてのハイドロと比べてどっちが好きかって言われたら、オレは断然ハイドロだな。あの水平を保つ魔法のじゅうたん感には、「この瞬間がハイドロだよね」っていう歴史の重みや、マニア的な優越感が詰まっていた。一方PHC、これはよくできた新世代のマシュマロでちゅね。
そういえば、我が家のDS3は、ものすごくサスが硬いんです。もうビックリするくらいスポーティーなんです。買う前にちょっと試乗して、「こんなだったっけ!?」ってビビッたけど、見た目がオシャレだし、登録済み未使用車ですっごくお買い得だったし、3気筒1.2リッターターボの低速トルクモリモリ感が大好きだったので、思わず買ってしまいました。買ってから「乗り心地が硬すぎる!」と辟易(へきえき)して、せめてもの改善策としてタイヤをフワッフワの「ブリヂストン・レグノ」に変えたくらい乗り心地が硬いんです。
ついこの間までシトロエンって、そういうクルマつくってたんだよね。これってフランス車のドイツ車コンプレックス時代の名残だよな……。
それに比べると、C5エアクロスのサスは、とにもかくにも「シトロエンのサスは柔らかいはず!」という期待に応えてくれている。それはとってもステキなことだ。ウチのDS3にもPHC付けてくんないか。んでもってマシュマロにしちゃってもらえないか。ムリか。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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