ルノー・メガーヌ プレミアムライン(FF/CVT)/GTライン(FF/CVT)【試乗記】
メガーヌ買うならプレミアム 2011.06.20 試乗記 ルノー・メガーヌ プレミアムライン(FF/CVT)/GTライン(FF/CVT)……268万円/275万円
3代目に生まれ変わった「ルノー・メガーヌ」。先代モデルのオーナーが、進化の度合いを確かめた。
色男は老けやすい?
『webCG』編集部のM氏より「自分のメガーヌで来て比べよ」との指令を受けたので、2005年型(つまり先代のマイチェン前)のメガーヌ1.6(5MT)で新型「メガーヌ」の試乗会場に向かった。
前のモデルに乗っている人が新型について書く試乗記には、ひとつのパターンがある。
すなわち、「ほれ込んで従来型を購入した私は、新型がなんぼのもんじゃいという思いを抱きながら試乗に臨む」→「新型の洗練されたメカニズムが、固く閉ざされた私の心をやさしくときほぐす」→「試乗を終える頃には新型を認めるどころか、羨望(せんぼう)のまなざしで見ている私に気付く」といった流れだ。はたしてどうなるか。
新旧2台を並べて写真を撮りながら、心のメモ帳に「旧型、圧勝」と記す。新型メガーヌのデザインは、随分フツーになってしまった。特に従来型のフルフェイスのヘルメットをモチーフにしたリアの造形は……、って、そんなこと書いても読者のみなさんには関係ないわけですが。
ただし、従来型はモデル初期こそ大人気だったけれど、ヨーロッパ市場ではモデル末期の売り上げの落ち込みが激しかったとのこと。その理由のひとつがデザインで、「インパクトはあるけれど飽きられやすい」「好き嫌いがわかれる」という反省にたって新型をデザインしたという。だから総選挙をやれば新型に軍配があがるのかもしれない。あと、「色男は老けやすい」という言葉も思い出した。いや、「ブ男は老けない」だったかもしれない。
日本における新型メガーヌのラインナップは、「メガーヌ プレミアムライン」と「同GTライン」のふたつ。いずれも2リッターの直列4気筒エンジン(140ps)にCVTを組み合わせ、後者は足まわりやタイヤがスポーティな設定となる。
まずは「プレミアムライン」の運転席に収まり、ベージュ基調の明るいインテリアを見わたす。少し傾斜のついたメーターパネル以外、特筆すべき“仕掛け”はない。プラスチック類の質感も、今のこのクラスの標準といったところ。
ただし、一見なんの変哲もないけれど座ればわかるシートのほっこり感は大したものだ。
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だれにでも薦められるようになった
6年落ちのすっかりヤレたマイカーと比べることに意味はないけれど、それでも走り出してすぐに、電動パワステの手応えがはるかにすっきりしていることに気付く。今まで81.2MHzで聴いていたJ-WAVEが、きちんと81.3MHzに合った感じ。
ステアリングギアボックスのギア比が従来型の17:1から16:1へと若干クイックになったほか、各種センサーをはじめとするシステム全体を見直したという。
一般道から首都高速、そして中央道から富士山周辺のワインディングロードと、あらゆる速度域、いろんな路面で乗り心地は抜群にいい。低速域ではソフトで快適、高速ではそこに姿勢をフラットに保つという美点が加わる。ステアリングホイールの繊細な手応えや、ホールドしていないと見せかけて実はやさしく体を包むシートとあいまって、このまま500kmぐらいはノンストップで突っ走りたくなる。基本シャシーは従来型のキャリーオーバー、サスペンション形式も変更はない。おそらく、これが熟成が進んだということなのだろう。普通のプリンが、なめらかプリンになったぐらいの違いがある。今回の“民生用”の前に日本に導入された「メガーヌ ルノースポール(RS)」の足まわりの出来のよさにびっくりしたことを思い出した。
ルノー・日産連合で共同開発したエンジンとCVTによる動力性能やフィーリングは、ごく普通だ。フィーリング的に素晴らしい部分はないけれど、加速してほしいところで加速してくれる。
これは、ホメ言葉です。ヘンテコなところで変速して、しかも変速ショックも大きかった従来型の4ATは、「スーパーファミコン」ぐらい古かった。けれども、今度は「プレステ2」ぐらいまで来た。正直、ライバルの中には「プレステ3」までいってるメーカーもあるけれど、それでもだれにでも薦められるようになったのだから大きな前進だ。
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まるで性格の異なる2台
しばらく乗っていると、CVTのまったりした加速と、ふんわり軽い乗り心地が絶妙のコンビだと思えてきた。急がない争わない、ピースフルな雰囲気はドイツ勢にはない味だ。
ただしこれはけがの功名と言うべきで、実際は2リッターのガソリンエンジンと組み合わせることができるトランスミッションは世界中でこのCVTしかなかったとのこと。しかしこのクラスでは、ツインクラッチ式の2ペダルMTが主流になりつつあるので、さらなる精進が望まれる。
ここで、「GTライン」に乗り換える。黒基調のインテリア、体をぐっと拘束するシート、そして締め上げられたサスペンションと17インチのタイヤ(プレミアムラインは16インチ)。きびきびとした手応えは「プレミアムライン」とは別モノだ。
ステアリングホイールの操舵(そうだ)に対する応答は正確無比、前後バランスのよいロール姿勢を保ちながらコーナーを抜けるあたり、「メガーヌRS」との血縁を感じさせる。
ただし、ここでひとつ問題が。ギュンというコーナリングと、ほのぼのとしたCVTの相性が悪いのだ。ここはやっぱり、切れ味の鋭いトランスミッションがほしくなる。
ということで、「プレミアムライン」はだれにでも薦められるばかりか、先鋭的なフランス車マニアも面白がれるクルマに仕上がっている。従来型より後席が広くなっているのは、直接比べたから間違いない。見かけは普通だけれど中身はおフレンチという、先祖にあたる「ルノー19」の伝統も継承している(?)。一方で、「GTライン」は個人的にいまいち存在意義がわからなかった。
それにしても「プレミアムライン」の乗り心地はよかったなあ(遠い目)。なんて、試乗記の定型におちてしまった。
(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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