マツダ3ファストバックXバーガンディーセレクション(4WD/6MT)/マツダ3ファストバックXバーガンディーセレクション(FF/6AT)
上品革命 2019.11.27 試乗記 次世代エンジンとして注目を集めてきた「スカイアクティブX」を搭載した「マツダ3」が、いよいよ日本の道を走りだす。既存の2リッターエンジン比でおよそ70万円アップ、夢のエンジンに投じるお金でどんな世界が見られるのだろうか。夢のエンジンの第一歩
これは問題作である。出来栄えに問題があるということではない。それどころか素晴らしい。そのココロは、抱腹絶倒のコメディーや涙必至の悲劇、あるいは勧善懲悪の時代物などは分かりやすく観客に訴えるが、難しい問題に正面から取り組んだ作品は、最初のうちは評価が分かれ、あとからじんわりその上質さや深みが染み込んでくるということ。しかも、待たされた分だけ期待がさらに大きく膨れ上がった中での登場である。火花点火制御圧縮着火(SPCCI)を実現し、内燃機関の効率追求の次のステップに踏み出した革新的エンジン、その名もスカイアクティブXエンジンを搭載した「アクセラ」改めマツダ3の価値は那辺にありや? ということでいやが上にも注目が集まるのは当然だ。
その熱気に水を差すようだが、上述したようにXは分かりやすい、パンチが利いたコッテリ味ではないことをまず言っておかなければならない。マツダはもはや以前のマツダではなく、強烈な加速やナイフのように鋭いハンドリングに一点張りしたクルマは作らない。ボリュームや高価な食材などで“映える”ことのみを重視した料理ではなく、言ってみれば繊細で丁寧な和定食のように、シンプルながらしみじみうまい料理を提供する店である。それにしては高いじゃないか、というあなたもそんなに先回りしないでください。
いや、実は高価な食材も使われている。スカイアクティブXエンジンには、24V駆動のマイルドハイブリッドシステム(モーターのみの走行は不可)や70MPaという高圧燃料噴射システム(フォルクスワーゲンやBMWの最新直噴ターボでも35MPaだからその倍だ!)、高応答エアサプライシステム(スーパーチャージャー)など、どう見てもコストアップにつながる特別なコンポーネントが採用されている。SPCCIを実現し、上質さを追求するには必要な構成技術だという。プレミアムガソリン仕様(緊急時にはレギュラーも使用可能)としたことで発売が予定よりも2カ月遅れたというXは、結局最高出力180PS(132kW)/6000rpm、最大トルク224N・m(22.8kgf・m)/3000rpmと、欧州仕様のXとまったく同じスペックでデビューした。ただし、圧縮比は欧州仕様の16.3に対して日本仕様は15.0:1となっている。その点も含めて細かい部分まで取材する時間が試乗会ではなかったのが残念だ。
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美しく走る
Xは同じく2リッターのスカイアクティブGに対して全域で10%以上のトルク改善を実現し、また10~20%燃費を向上させたという。実用燃費は分からないが(試乗した「ファストバックXバーガンディーセレクション」のFWD・6段AT仕様のWLTCモード燃費は17.2km/リッター)、トルクは確かに力強く、“ツキ”もいい。とはいえ、もともとスカイアクティブG 2.0は平板で線が細いからその分は差し引いて考える必要がある。スペックも156PS(115kW)/6000rpm、199N・m(20.3kgf・m)/4000rpmのGと正直、それほど大差があるわけではない。だがXは静かでもある。本来はやかましくて当然だが、すっぽりカプセル状にエンジンを覆うカバーなど遮音処理を徹底しているせいか、静かでスムーズでストレスなく健康的にトップエンドまで吹け上がる。
センターのモニターには火花着火か圧縮着火か燃焼状態が表示されるようになっているが、それで判断する限りでは、かなり深く(8割程度)スロットルペダルを踏み込んで加速しても圧縮着火状態を維持するようだ。もはや燃焼状態の移行はシームレスで、ショックやノイズで気づくようなものではない。MT車の場合は、6.5PSのモーターを備えるベルト駆動のISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)が回転を同調(回転を抑えて)させてくれるので、ギクシャクすることなくスッとシフトアップ(シフトダウン時のブリッパーは備わらない)。同じくアイドリングストップからの再始動の際も振動などは皆無と言っていい。
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見ても触っても緻密
デザインやフィニッシュのレベルについては、特に私のようにかつてのマツダを知るものからすれば、もはや素直に感心するしかない。形や色という意味でのデザインには個人の好みがあるのは事実だが、クオリティーは好き嫌いの問題ではない。複雑な曲面を実現したエクステリアや簡潔で緻密なインテリアデザイン、スイッチ類の操作感を含めた機能性、表面処理などの入念な作り込みなどについては、日本車の中では群を抜いたトップランナーだろう。「トヨタ・クラウン」などと比べても次元が違う。新世代モデルとして「CX-5」が最初に登場してから10年足らずの間によくぞここまで、と感心するほどである。
装備も充実している。何か突出した個性ではなく、全方位的に上質さを目指し、その結果としてプレミアムモデルと評価されることを真剣に目指しているのだということがうかがえる。
軽やかで上品
分かりやすいスポーティーさを狙っていないことは、ステアリングが意外にクイックではないことにも表れている。電動パワーステアリングが常識となった今時では珍しく、ロックトゥロックはほとんど3回転近く回る。実際に従来型よりもレシオを10%ほど遅くしたという。スパッと切れ込む鋭さではなく、切った分だけ素直にリニアに向きを変える一体感が軽やかですがすがしい。
もっとも、乗り心地についてはちょっと保留としたいのが正直な気持ちである。短時間だけ試乗したファストバックのMT・4WD車では文句なし、と感じたが、それ以外のクルマではやはり低速でのゴツゴツしたリアの突き上げが気になった。ご存じのように、マツダ3ではリアサスペンションが従来のマルチリンクからトーションビームに改められており、だからといって乗り心地に影響があるとは思えないのだが、試乗車によってバラツキがあったことは事実である。全体を貫く上質感に小さな異物が混じったような違和感があり、もう少し、さまざま場面で試さないと判断できない。
マツダ3はラインナップが豊富であり、セダン/ファストバックの車形に加えてエンジンはガソリン1.5リッターと2リッター、そして2リッターのXにディーゼルターボのD 1.8もあり、さらにFWD/4WD、6AT/6MTも選べる。Xは同等グレードのG 2.0と比べるとざっと70万円、D 1.8との比較では40万円ほど高い。選択肢が多いせいでかえって悩むのかもしれないが、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の上級グレードと比べると決して高いとは言えない。そう、マツダ3は今やそういうクルマである。とはいえ、自分たちが良いもの正しいものと信じていても、それが顧客に受け入れられなければメーカーとしては意味がない。高い志が独善的にならぬよう、この静かな革命を謙虚に進めていってほしい。今はとにかくもっと乗ってみたい。そう感じさせるクルマは久しぶりなのである。
(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
マツダ3ファストバックXバーガンディーセレクション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4460×1795×1440mm
ホイールベース:2725mm
車重:1480kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ スーパーチャージャー付き
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段MT
エンジン最高出力:180PS(132kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:224N・m(22.8kgf・m)/3000rpm
モーター最高出力:6.5PS(4.8KW)/1000rpm
モーター最大トルク:61N・m(6.2kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)215/45R18 89W/(後)215/45R18 89W(トーヨー・プロクセスR51A)
燃費:16.8km/リッター(WLTCモード)
価格:368万8463円/テスト車=391万8343円
オプション装備:ボディーカラー<ソウルレッドクリスタルメタリック>(6万6000円)/Boseサウンドシステム<オーディオパイロット2+センターポイント2>+12スピーカー(7万7000円)/360°ビューモニター+ドライバーモニタリング(8万6880円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:962km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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マツダ3ファストバックXバーガンディーセレクション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4460×1795×1440mm
ホイールベース:2725mm
車重:1440kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ スーパーチャージャー付き
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:180PS(132kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:224N・m(22.8kgf・m)/3000rpm
モーター最高出力:6.5PS(4.8KW)/1000rpm
モーター最大トルク:61N・m(6.2kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)215/45R18 89W/(後)215/45R18 89W(トーヨー・プロクセスR51A)
燃費:17.2km/リッター(WLTCモード)
価格:345万1963円/テスト車=353万8843円
オプション装備:360°ビューモニター+ドライバーモニタリング(8万6880円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1022km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
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