メルセデスAMG A35 4MATIC(4WD/7AT)
抜群の切れ味 2020.01.16 試乗記 最高出力306PSという2リッター直4ターボエンジンを積む、メルセデスAMGの新たなエントリーモデル「A35 4MATIC」に試乗。パワーが抑えられた“入門用”でもAMGを名乗るにふさわしいホットな走りが楽しめるのか。山岳路に連れ出し、その出来栄えを確かめた。AMGの新エントリーモデル
1997年の初代誕生時、メルセデス・ベンツのブランド内においてエントリーモデルと位置付けられた「Aクラス」。20年以上が経過した今も、そうした立場に変わりはない。
ただし、初代および2代目モデルがコンパクトなボディーサイズに対するキャビン容積の大きさをセリングポイントとする“モノスペースカー”的なキャラクターの持ち主であったのに対し、2012年に登場した3代目以降は一転して“ワイド&ロー”のプロポーションがもたらすスタイリッシュぶりがアピールされた。このブランドの作品としては、かつてない“宗旨替え”も話題になった。
2018年に発表された現行モデルとなる4代目は、同年秋に日本導入を開始。当初、ターボ付きの1.4リッター直4直噴エンジンを搭載したハッチバックモデルのみからスタートした日本仕様の展開は、その後Aクラスとしては初となるディーゼルエンジン搭載モデル、さらには「前輪駆動アーキテクチャーを用いたメルセデス・ベンツとしては初」とうたわれる「セダン」を追加設定することで、大幅にバリエーションが拡充されるに至っている。
そうした中で、現行Aクラスとして初めて“AMG”の記号が与えられたホットモデルが、今回取り上げるA35 4MATICだ。「高次元のドライビングパフォーマンスを実現しつつ、快適性も損なわないよう開発された」と、そんなフレーズで狙いとキャラクターが紹介される、欲張りな一台でもある。
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装いは羊の皮をかぶった狼
グレード名称からも明らかなように、このモデルではFFレイアウトをベースとしながらも、より高度なトラクション能力を確保するために、電子制御式多板クラッチを用いた4WDのみの設定とされる。パワーユニットはAMGがチューニングを施したオーバー300PSを発生するターボ付きの2リッター直4直噴エンジンで、7段DCTと組み合わされている。
メルセデスAMG車特有のツインブレードを備えたフロントグリルやルーフスポイラー、大型のリアディフューザーなど一部に専用のコスメティックが施されてはいるものの、雰囲気は比較的おとなしく「羊の皮をかぶった狼」というフレーズが思い浮かぶ仕上がりだ。
ただし、発表記念の特別仕様車として設定された「エディション1」には、ウイング状のルーフスポイラーやサイドデカール、フリック付きフロントバンパーなどの専用アイテムのほか、標準モデル比で1インチ増しとなる19インチサイズのタイヤとホイールなどが与えられ、より派手なルックスを好む顧客のニーズにも対応している。
一方、すでに発表済みのトップバージョンである最高出力421PSを誇る「A45 S 4MATIC+」の場合とは異なり、搭載される心臓の組み立てはAMG流儀の“ワンマン・ワンエンジン”ではなく、メルセデスの量産工程内で行われている。高いパフォーマンスを売り物としながらもそれ一辺倒ではなく、コストも重視する姿勢がこのあたりから読み取れる。
テストドライブを行ったのは、ヘッドアップディスプレイや10スピーカーのオーディオなどから構成される「AMGアドバンストパッケージ」や、より立体的なバケット形状のフロントシートや電子制御式の可変減衰力ダンパーなどからなる「AMGパフォーマンスパッケージ」、さらにはテレビ機能付きのオンライン地図更新機能付きナビゲーションシステムや、パノラミックスライディングルーフなどのオプションアイテムを装着したモデルだった。
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日常使いもこなせる仕上がり
前述のように、一見すると比較的おとなしいこのモデルのルックスを眺めた後、まずはドライブモードで「コンフォート」を選択し走り始める。乗り味はそうした見た目とかけ離れることなく、「普通のAクラスよりもちょっと足が固い程度かな」というのが第一印象となった。
率直なところ、それでも路面の凹凸を拾った際の揺すられ感はややあり、状況によっては多少“突っ張り気味”と感じられる場面もあった。とはいえ、日常シーンで用いるにも我慢がならないほどではなく、「これならばたとえ通勤に使うにも、十分許せる」という程度の仕上がりになっている。
DCTを採用しながら、微低速シーンでもギクシャクすることなくすこぶる滑らかな加減速が実現されていたのも、そうした印象に拍車をかけた。ただし、これはあくまでも前述したオプションのAMGパフォーマンスパッケージに含まれている「AMGライドコントロールサスペンション」を装着したモデルの場合だ。未装着状態での印象は、残念ながら未知数である。
一方、先代「A45 4MATIC」のアイテムを譲り受けたというブレーキシステムがもたらすフィーリングは、日常シーンでも十分その恩恵を受けられる秀逸さだ。特に剛性感に富み、コントロール性にも優れたペダルタッチは、「普通のAクラス」に確実に差をつけた部分でもあった。
そんなコンフォートモードでの印象に対し、このモデルの走りの真骨頂というべきはもちろん、5つのポジションが用意される中にあって最もホットな「スポーツプラス」モードを選択した場面。そこでは、スパイシーな走行テイストが一気に高まることになるのだ。
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ハンドリングはシャープ
ステアリングホイールに付けられたドライブコントロールスイッチを回し「スポーツプラス」のモードを選択すると、走り始めるまでもなくその効果はすぐに実感できる。それまで700rpmほどを示していたタコメーターの針が一気に300rpmほど跳ね上がり、吐き出されるサウンドも迫力を増して、アイドリング状態にしてすでに勇ましさを演じるようになるからだ。
アグレッシブなサウンドを耳にしながらスタートすると、即座に感じられるのは路面上の小石を拾ったことすら細かく伝える、ハード化されたサスペンションのセッティングだ。同時に、シフトスピードが大幅に高められたことも、変速時のショックが増したことから教えられる。
ツインスクロール式のターボチャージャーを用いることで、より広い領域での扱いやすさを狙ったエンジンだが、それでも本格的なパワーゾーンは3000rpmをクリアしてから。決して“どっかんターボ”というわけではないが、アクセルオンと同時の瞬発力を望むのであれば、この回転数はクリアしておきたいもの。そこから6000rpm付近までが、この心臓の真のスイートスポットだ。
わずか4.7秒という0-100km/h加速タイムも示すように、絶対的な速さにはもはや何の不足もない。ただし、“演出上”の観点からすれば、レッドラインの6500rpmを前にしてオートシフトアップ機能が明確に働き、高いギアへとバトンタッチされてしまうのはちょっと物足りない。
公道上でのテストドライブゆえハンドリングの限界点は探るべくもなかったが、600kg強という後輪荷重に対して大幅に重い1tにも迫る前輪荷重であっても、“頭でっかち”的なバランスの悪さは皆無。むしろターンイン時のシャープさが強く印象に残り、「FFレイアウトに由来するマイナス面は全く意識させられない」とさえ思える。
しかし、“35”にしてここまでのポテンシャルの持ち主となると、162万円が上乗せされる“45”では一体どんなことになるのか!? そんなことが気にもなってくるメルセデスのスーパーホットハッチなのである。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
テスト車のデータ
メルセデスAMG A35 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4440×1800×1410mm
ホイールベース:2730mm
車重:1590kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:306PS(225kW)/5800-6100rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3000-4000rpm
タイヤ:(前)235/40ZR18 95Y/(後)235/40ZR18 95Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:12.2km/リッター(WLTCモード)
価格:628万円/テスト車=760万3000円
オプション装備:メタリックペイント<デジタルホワイト>(7万円)/ナビゲーションパッケージ(18万7000円)/AMGアドバンストパッケージ(35万円)/AMGパフォーマンスパッケージ(55万円)/パノラミックスライディングルーフ<はさみ込み防止機能付き>(16万6000円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:568km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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