第170回:まっすぐ走った! 矢のように!
2020.04.07 カーマニア人間国宝への道臨死体験、再び!?
「フェラーリ348」はまっすぐ走るのか!?
私がかつて乗っていた90年式「348tb」は、路面の軽い凹凸で親指が折れるほどのステアリングキックバックがさく裂し、その瞬間にクルマが横にすっ飛んでしまう臨死体験マシンだったが、今回エノテン(コーナーストーンズ代表・榎本 修氏)が仕入れた極上モノの94年式「348GTS」はどうなのか!?
いよいよ試乗の時がやってきた。
ゆっくり発進してステアリングを切った瞬間、私は「ええっ!?」となった。
「ステアリングが均等に動く~~~!」
一般の皆さんには意味がわからないだろうが、90年式の348tbは、ステアリングが均等に動かなかったのである。正確には、「ハンドルを切っていると、常にその重さが微妙に変動する」とでも申しましょうか。
が、この極上348は、フツーのクルマのようにスムーズにステアリングが回る!
そのままゆっくり加速して、40km/hくらいになった時、またしても私は叫んだ。
「これは全然違うよ店長!」
ステアリングになんのキックバックも来ず、フツーにまっすぐ走っている~~~!
私の90年式348tbは、たとえ低速域であっても、路面の微妙な凹凸に反応してステアリングが常にヒクヒクしていたが、このクルマにはその気配がナイ!
こ、こんな348があったのかぁ!
そのまま高速道路で速度を上げていっても、安心安全平穏無事。地雷(突如襲いかかる激しいキックバック)に備えてステアリングを鉄棒握りする必要はカケラもない! 片手運転楽勝! 片手2本指でもダイジョウブ! 信じられん……。
快適なネオクラシックスーパーカー
オレ:これはまっすぐ走るよ店長~~~~!
エノテン:そうでしょう! 矢のようにまっすぐ走るでしょうウフフフフ~!
さらに速度を上げていくと、ステアリングの手応えが薄くなって不安感が増すが、これはおそらく空力の問題。「328」や空冷「911」も似たようなものだ。
こ、これは、若きフェラーリオーナー、タカフミが言っていた、「高速道路では缶コーヒー片手に鼻歌交じりに走れるけれど、速度を上げるとステアリングインフォメーションが乏しくなる」っていうインプレそのものじゃないか!
タカフミの348tbは92年式だったという。つまり、少なくとも92年式くらいから、348はこういう感じになってたってこと!?
オレ:店長、ひょっとして、初期型以外の348はみんなこうなの?
エノテン:新しくなるほど、どんどんこうなっていきます。
もちろん、一般道や高速道路をフツーに走っただけでは、ワインディングやサーキットでどうなるかまではわからない。
私の348tbは、サーキットではもうひとつの臨死体験が待っていた。
それは、コーナー立ち上がりでさく裂する強烈なオーバーステアである。
それに関しては、リアサブフレーム上部にタワーバー的なワンオフ補強を行ったことで劇的な改善を見たため、「剛性不足のリアサブフレームが、荷重変化によって変形し、リアタイヤの接地が不安定になることに原因あり」と断じたのであった。
後期型348が、その点も改善されているかどうかまではわからないが、しかしまぁ公道でそこまで攻めることはないので、フツーに走る限り、後期型348は臨死体験マシンでもなんでもない! これはごく快適なネオクラシックスーパーカーだあぁぁぁ~~~!
こんな「348」があったのか!
では、初期型348がまっすぐ走らない原因は何なのか!?
それに関しては、誰が乗っても、フロントサスがおかしいと思うはずである。
後に読んだ書物には、「モノコックのフロントセクションのサスペンション取り付け位置の剛性不足、ならびにラバーブッシュに起因する弊害が原因で、直進安定性などに深刻な問題が出た」みたいなことが書いてあったが、実に納得だった。
つまり、フロントサスの付け根部が、路面の凹凸による入力で、自由気ままに動いてしまうのだと推測される。
当時私は、リアより先に、フロントサス付近のフレームを補強する左右貫通型バーを入れて対策したが、そっちはほとんど効果がなかった。我が補強バーは、弱いポイントからは外れていたのだろう。
試乗しながら私は、現時点での結論を出した。
後期型348は、少なくともフロントサスに関しては、明らかに改善されている!
リアサスはわかんないけど、公道レベルではこれで何の問題もナイ!
ああ、オレは27年間、348は欠陥車だと思い込んでいたけど、後期型はそうでもなかったのかあぁぁぁぁぁぁぁ~!
オレ:店長、348にはまっすぐ走るのもありましたぁ! ここに訂正と謝罪をいたします!!
エノテン:ありがとうございますウフフフフ~! 348に乗る清水先生は水を得た魚のようで、20年若返って見えました! おかえりなさい清水先生!
その時私の中で突き上げてきたもの。それは、「自分はもう一度、348を買わねばイカンのではないか」という思いだった。
もう一度348を買って、我がカーマニア人生の原点に戻り、原点を探るべきではないか。それがカーマニアとしての義務ではないか!!
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第342回:どうしてこんなに高いんですか 2026.8.17 清水草一の話題の連載。BYDが日本の軽自動車市場に向けて独自開発した電気自動車「ラッコ」が上陸した。早速、愛車「ダイハツ・タント」の後継として検討すべく、近所のディーラーで試乗することに。果たしてその印象は?
-
第341回:「スカイアクティブZ」は大丈夫か 2026.8.3 清水草一の話題の連載。夜の首都高に新型「マツダCX-5」で出撃した。マイルドハイブリッドのパワートレインと進化したシャシーが織りなす走りを確かめつつ、ディーゼルエンジンがラインナップから消えた3代目CX-5について考えた。
-
第340回:一にエンジン、二にカッコ 2026.7.20 清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは?
-
第339回:駆けぬけるヨロコビは安くない 2026.7.6 清水草一の話題の連載。いつもの首都高で試乗した「BMW 120d Mスポーツ」の価格が540万円ってマジか! と思っていたら、本国ではなんと4万1750ユーロ(邦貨約770万円)⁉ 安かったころ、もっと小さかったころのBMWに思いをはせた。
-
第338回:古臭いほどイイに決まってる 2026.6.22 清水草一の話題の連載。マイナーチェンジを受けた最新の「シボレー・コルベットZ06」を夜の首都高に連れ出した。アメリカを代表するミドシップスーパーカーのステアリングを握ったフェラーリオーナーの印象やいかに。
-
NEW
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
NEW
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)
2026.8.22試乗記DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。 -
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】
2026.8.21試乗記メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。 -
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性
2026.8.21デイリーコラム欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。







































