ボルボV70 DRIVe(FF/6AT)【試乗記】
これで十分! 2011.05.13 試乗記 ボルボV70 DRIVe(FF/6AT)……504万円
ダウンサイジングの波に乗り、ボルボの基幹モデル「V70」が1.6リッターエンジンを搭載。余裕がウリの、大型ワゴンの走りはどう変わった?
初の直4、しかもテンロク
ボルボを代表するエステートといえば「V70」である。ゆったりとしたサイズのボディに、何でも飲み込んでしまいそうなゆとりあるカーゴスペースが、このクルマのアイデンティティといえるのだが、そんな余裕がウリのV70が“ダウンサイジング”へと動いた。といっても、もちろんボディが小さくなるわけではなく、エンジンの排気量を小さくするという意味でのダウンサイジングだ。
これまでのV70といえば、直列5気筒、あるいは直列6気筒エンジンを横置きにするというのが、ひとつの伝統だったが、2011年2月に追加された二つのグレードには、V70として初めて直列4気筒エンジンが採用された。しかも、エントリーグレードの「DRIVe(ドライブイー)」では、排気量がわずか1.6リッターというのだから、そのドラスティックな変化に戸惑わずにはいられない。
排気量ダウンのねらいが燃費の向上であることは言うまでもなく、「V70 DRIVe」は、6段デュアルクラッチトランスミッションの「パワーシフト」を同時に手に入れることで、10・15モード燃費12.2km/リッターを達成し、エコカー減税(50%減税)対象車になったのである。
軽快な動きに驚いた
V70 DRIVeに搭載されるエンジンは、すでに「S60 DRIVe」に搭載されている1.6リッター直4ターボと同じ。最高出力180ps/5700rpm、最大トルク24.5kgm/1600-5000rpmと、エンジンのスペックは同一だが、S60よりも120kg重いV70 DRIVeが、果たしてどんな動きを見せるのだろう?
多少の不安を抱きながら、運転席に収まると、いつものシンプルで落ち着きのあるコックピットが心を和ませてくれる。早速ダッシュボードのスタートボタンを押してエンジンを始動し、アクセルペダルを踏み込んでやると、V70は1660kgの車両重量を感じさせない軽快な動きで私を驚かせた。
走り出すと、「このエンジンで十分!」という印象がさらに強まっていく。いまどきの小排気量直噴ターボエンジンらしく、低回転から期待以上のトルクを生み出すことに加えて、アクセルに対するレスポンスに遅れはない。しかも、常用する3000rpm以下はもちろんのこと、幅広い回転域で、どこからでも必要十分な加速を見せてくれるのだ。
高速道路でもまわりの流れに後れを取ることはなく、5500rpmくらいまでストレスなく吹け上がるのもいい。パワーシフトに、デュアルクラッチトランスミッションのぎこちなさは見られず、黙っていればトルコンATと間違えそうなほどスムーズだ。アクセルペダルを踏み込んだとき、パワートレインのノイズが高まるのは、V70の車格にはふさわしくないが、弱点といえるのはこのくらい。4気筒を積むおかげで、ノーズが軽く、コーナーでは意外に軽快な動きを示すのもこのV70 DRIVeの魅力である。
|
安全のボルボは健在
最新のパワートレインを取り入れたV70 DRIVeでは、やはり最新のセーフティテクノロジー「ヒューマンセーフティ(歩行者検知機能付き追突回避・軽減フルオートブレーキシステム)」が選べるのもうれしい点。S60に搭載され注目を集めるこの先進の安全技術は、前方の車両だけでなく、歩行車をも検知して、いざというときには自動的にフルブレーキをかけるという優れモノだ。ニューモデルのS60に続き、現行型のV70をはじめ「S80」「XC60」「XC70」にも標準又はパッケージオプションとして車種の拡大に努めるのは、さすが“安全のボルボ”である。
|
V70 DRIVeの場合は、オプションの「セーフティパッケージ」(25万円)で提供され、ヒューマンセーフティに加えて、ACC(アダプティブクルーズコントロール)やBLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)、レーン・デパーチャー・ウォーニングなどが含まれるから、そう考えるとこの金額は決して高くない。
ダッシュボードの真ん中にカーナビがドーンと置かれていることや、多少ボディに緩さが見られるあたりに、やや古さを感じずにはいられないが、それでも、環境と安全については最新モデルに引けを取らないV70 DRIVe。広いカーゴスペースは欲しいけど、燃費や安全性でS60に目移りしかけていた人には、うれしい知らせだ。
|
(文=生方聡/写真=峰昌宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】 2026.10.31 ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。
-
日産フェアレディZ NISMO(FR/9AT)【試乗記】 2026.10.28 「日産フェアレディZ」のマイナーチェンジモデルが登場。改良の主眼はZが受け継いできたヘリテージのさらなる深化と性能の強化だという。もはやお値段1000万円(!)に迫らんとする「NISMO」の9段ATモデルを試す。
-
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】 2026.10.27 ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。
-
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.26 1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。
-
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.24 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
-
NEW
第348回:これでスーパーカーは完全に終わった!
2026.11.3カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。イーロン・マスクが宇宙ロケット技術をクルマに応用し空飛ぶクルマ「テスラ・ロードスター」を発表した。スラスターで姿勢を制御しつつ“飛行”する様子には度肝を抜かれ、「これでスーパーカーは完全に終わった」と思った。 -
NEW
多田さんが「わかってるね!」と感じるクルマの特徴は?
2026.11.3あの多田哲哉のクルマQ&Aトヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが、新型車に試乗して「このクルマの開発者はよくわかっているなぁ」と感じるのはどんな時か? “出来の違い”が出るポイントについて聞いてみた。 -
NEW
BYD ATTO 3 EX AWD(4WD)【試乗記】
2026.11.3試乗記BYDの「ATTO 3」がビッグマイナーチェンジで「ATTO 3 EX」に進化。EXは「EXTEND」「EXPLORE」「EXPERIENCE」を示すとのことだが、それはともかく、前輪駆動から後輪駆動に変わり、パワーも大幅にアップするなど、電気自動車(BEV)としての基本構造がまるで別物になっている。新たに追加された4WDモデルを試す。 -
いま軽自動車を選ぶなら、エンジン車とEVのどちらが得か? リアルな数値でコスパを比較・検証する
2026.11.2デイリーコラム海外ブランドまで参入するなど、近年活況をみせる軽EV。従来型の軽自動車と比べた場合の、コスト面の良しあしは? ホンダの2車種を例にとり、そのコストパフォーマンスを考えよう。 -
トヨタ・アクアGRスポーツ(FF/CVT)【試乗記】
2026.11.2試乗記「アクア」のビッグマイナーチェンジに遅れること10カ月。“最新のトヨタ顔”に変身したスポーツコンバージョンモデル「アクアGRスポーツ」が登場した。専用チューニングが施されたボディーや足まわりの仕上がりを、ワインディングロードに連れ出して確かめた。 -
ホンダ・スーパーONE(前編)
2026.11.1ミスター・スバル 辰己英治の目利き辰己英治さんが今回試すのは、ヤンチャないでたちの「ホンダ・スーパーONE」。軽規格の電気自動車(EV)「N-ONE e:」をベースに走りを鍛えた、電気で走るスポーツコンパクトだ。見た目にも楽しさがあふれる一台の魅力に、“ミスター・スバル”が迫る。































