第630回:こだわりのパーツが走りを変える これがショーワの次世代自動車技術だ!
2020.10.13 エディターから一言 拡大 |
自動車のサスペンションや電動パワーステアリングの開発を手がけるショーワが、同社初となるプレス向け製品説明会を開催した。そこで披露された、これからのクルマに生かされるであろう新技術とは……?
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軽にこそプレミアムパーツを
自動車パーツサプライヤーのショーワが軽自動車にも適用できるカーボン製プロペラシャフトを開発した。
もしもあなたが「カーボン製プロペラシャフトは超高性能車に装着してこそ価値があるのに、なんで軽自動車なんかに?」と思われたとしても無理はない。そもそも軽自動車に高価なカーボン製プロペラシャフトなんて取り付けて、コスト的に釣り合うのだろうか?
そんなことはショーワだって先刻承知。そのうえで彼らが新たにカーボン製プロペラシャフトを開発したのにはワケがある。
車体前部に搭載したエンジンの力を後輪に伝えるためのプロペラシャフトは、通常はスチールでつくられる。カーボン製よりもコスト面で有利なのがその主な理由だが、スチールでワンピースのプロペラシャフトをつくると、自動車で使用する回転域で共振を起こし、最悪の場合はプロペラシャフト自体が壊れてしまう。
これを防ぐために、プロペラシャフトは2分割とすることで共振周波数を実用粋外に追いやっているのだが、今度はこの2分割する“つなぎ目”を固定するパーツがキャビンの真下に配置されることになり、これが不快な振動や騒音を発生する原因になる。そうでなくても、重いスチール製プロペラシャフトはエンジン回転数を素早く上昇させたり下降させたりすることを阻害する(=動力性能を低下させる要因になる)うえ、同じ理由から燃費性能を悪化させる(=CO2排出量が増える)。つまり、別に超高性能モデルでなくてもプロペラシャフトをカーボン製にする価値は十分にあるのだ。
高機能でも高価じゃない
でも、いかんせんカーボン製プロペラシャフトはコストが高かった。そこでショーワはRTM(Resin Transfer Molding)という生産性の高いカーボンコンポジット製法を用いてプロペラシャフトをつくる生産プロセスを開発。実は、RTMで“中空部品”をつくるのは不可能というのがこれまでの定説だったのに、ショーワはこの常識を覆して一体型カーボン製プロペラシャフトの量産化にめどをつけたのである。しかも驚くことに、プロペラシャフト単体のコストはスチール製と同等。軽自動車にも採用可能な根拠はここにあるのだが、そのいっぽうで例の“つなぎ目”がなくなるので静粛性が向上するうえ、つなぎ目をボディーに固定する手間も省けるのでコスト的にはむしろ有利になるという。つまり、いいことずくめのプロペラシャフトなのだ。
われわれ報道陣がこの革新的なカーボン製プロペラシャフトの存在を知ったのは、同社の塩谷プルービンググラウンドで行われたショーワ技術体験取材会でのこと。ここではショーワが最も得意とするダンパーや電動パワーステアリングなどを中心とする同社の最新技術が数多く紹介されたので、特に注目の技術を中心にここでリポートしよう。
最新技術というと、とかく高機能・高性能でコストも高いと考えられがちだが、ショーワの場合はカーボン製プロペラシャフトの例でもわかるとおり、高機能・高性能だけれどもコストは従来と変わらない、という製品が少なくない。
その一例がダンパーに用いられる「S-SEES(Showa-Super Empowering Efficient Suspension)」という名のテクノロジー。ダンパーというと、とにかくフリクションが小さいほうが高品質と考えられがちだが、実は微小ストローク領域では適度なフリクションを発生させたほうが乗り味やハンドリングにしっかり感が出てくるという。意外にもヨーロッパ製ダンパーにはこのあたりを折り込んだ製品が少なくないそうだが、近年、ショーワもダンパー性能を向上させるフリクション発生技術に着目。その一部はS-SEESとしてすでに商品化されているが、今回発表されたのはその次世代版である。
「フリクションを発生させるなんて、そんなの簡単でしょ?」とあなたは思われるかもしれないが、乗り心地やハンドリングをよくするためのフリクションをつくり出すのはそう簡単なことではない。そもそもフリクションには、止まっているモノが動き出すときに発生する静摩擦と、モノが動いているときに発生する動摩擦があるが、ショーワはそのそれぞれについて「適切な状況で適切な量のフリクション」をつくり出すための努力を日夜続けているという。その労力たるや、相当のものだ。
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目指す走りは“スッキリ味”!?
これ以外にもショーワは振動周波数によって減衰力を可変させる“メカ式減衰力可変ダンパー”の「SFRD(Sensitive Frequency Response Damper)」、電子制御で減衰力を調整する「IECAS(Intelligent Electronic Control Adaptive Suspension)」などを開発。同様に、電動パワーステアリングでもクラスに応じて「DPA-EPS(Dual Pinion Assist-Electric Power Steering)」や「BRA-EPS(Belt Rack Assist-Electric Power Steering)」といった製品をラインナップし、幅広いニーズに応えている。
今回はそれらの製品を装着した試作車に試乗する機会もあったのだが、驚いたことに、どの製品にも共通の傾向というかテイストが感じられた。それをひとことで言えば、乗り心地にしてもハンドリングにしても「スッキリとしていて、妙な粘り感がなく、動き出しから優れた精度感やリニアリティーを伝えるもの」と説明できる。
よくよく考えてみればそれも当然のこと。なぜなら、こういった特徴は高強度・高精度なメカニズムに共通のものだからだ。言い換えれば、ショーワはさまざまな技術を駆使することで、適切なコストの範囲内で機械的に優れた自動車用パーツを開発・生産している、となる。
自動車の電動化や自動化が脚光を浴びる現在、ショーワが取り組む技術はややもすると地味と捉えられがちかもしれない。しかし、ヨーロッパ製の自動車は、こういった地道な部分についても手を抜くことなく、いまも確実に進化・改善している。
裏を返せば、ヨーロッパのユーザーは自動車のメカニズムが生み出すよさを確実に見分ける力を持っていることになる。意外かもしれないが、中国のユーザーでさえ自動車の質感に対するこだわりは強くなるいっぽうとの話をよく耳にする。ショーワの技術は、日本を含む世界中の市場で販売される日本車の乗り心地やハンドリングを向上させるうえで、大いに役立つことだろう。
(文=大谷達也<Little Wing>/写真=ショーワ、webCG/編集=関 顕也)
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大谷 達也
自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。
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