どうせ買うなら価値あるクルマ 値上がりしそうな新車はコレだ!
2020.12.25 デイリーコラム 拡大 |
いずれは得する? 5台の貴重車
「クルマは売っても買っても損をする」とは、故・徳大寺有恒さんの言葉だ。さすがは希代の自動車評論家にしてクルマ趣味人。誠に正論といえましょう。
興味あるクルマに対して、「いくらくらいするんですか?」とは、どうしても聞きたくなる質問だけれど、金銭的価値だけを直接的に知ろうとするのは、あまりにやぼというもの。ましてや「いずれ値上がりするクルマは……?」とウの目タカの目になるのは趣味の道を踏み外している。
とはいえ、かつて自分が所有していたクルマが思いのほか高価で取引されていて、内心、じくじたる思いを禁じえない。そんな人、多いのでは? かくいうワタシも、以前アシにしていた「930」こと「ポルシェ911」(1988年型のクーペ、MT車)と同じ仕様のクルマが700万円台で売られていて、ひっくり返ったことがある。ウン十年前の購入時には、いわゆる“ビカもの”(極上品)ながら200万円を切った金額だったから、その高騰ぶりにビックリ!
このたびのコロナ禍によって、趣味的中古車の価格上昇が止まるか、反転下落するか、はたまた上がり続けるか、それはわからない。ステイホームの暇つぶし(?)に、「大事に取っておいたら価値が出そうな、いま新車で買えるクルマ」を、個人的かつ趣味的視点から5台ピックアップしてみました(順不同)。ポルシェやフェラーリ、ランボルギーニといった、ガチな投資物件は除外しています。
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■ホンダS660
言わずと知れた軽のミドシップスポーツ。約30年前に登場した「ビート」は絶対的な動力面ではいささか頼りなかったが、「S660」は3気筒に過給機を得て存分に「スポーツ」を楽しめる。203万1700円からと軽自動車にしては高価だが、丈夫なボディーとリーズナブルな維持費ゆえ、手元に残しやすいクルマなのでは? 3ペダル式のMTが選べるのもうれしい。
キャラクターを“走り”に振り過ぎたせいか、ビートほどライフスタイルに広がりを感じさせないきらいはあるものの、峠をひと走りすればそんなことは忘れてしまう。世界的にも珍しいマイクロスポーツ保存の観点からも、オーナーの方にはぜひ大事に乗っていただきたい。うらやましいぞ。
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不安の先によろこびが
■アルピーヌA110
最後尾から来たレトロカー……なんて、好き過ぎてついケチをつけたくなるフレンチスポーツ。ボディーを大幅に拡大し、エンジン搭載位置をリアからミドに変えながら、みごとにオリジナル“ワンテン”のイメージを移植した。
2018年の日本発売時、試乗したほぼすべての人が手放しで絶賛するのに、「どうして『日本カー・オブ・ザ・イヤー』にノミネートされないんだろう?」と不思議がっていたワタシはバカでした。アレ、メーカーがエントリーしないと候補車リストに載らないんですって。
スーパースポーツと呼ぶには控えめな1.8リッター直4ターボを搭載。799万円からの価格も、この手のクルマとしては抑え気味。手ごろなサイズ、扱いやすい動力系、なにより圧倒的なファン・トゥ・ドライブの持ち主なので、走行距離がドンドン伸びるのがオーナーの悩み、かも。
最近、めでたくラリーフィールドへの復帰が報告されたが、本家ルノーの経営がグラつくなか、デュエップも安閑とはしていられない。エンスージアストの熱狂的な支持を得ながらはかなく消えていった新生アルピーヌ……ということにならないよう切に祈ります。本当に。懐に余裕があるクルマ好きの方は、新車で買えるうちに買っておいて……って、不吉過ぎるか!?
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■マツダMX-30
「あまり売れないだろうな」とメーカー自ら予想しながら、それでもキッチリ商品化したのがエラい。やたらスカしたクルマが多いマツダ車のなかにあって、脱力系の顔つきはそれだけで高得点。
最大の特徴たる観音開きの前後ドアは、後部座席の人にとっては不便でしかないが、それはクルマの使い方が間違っている。「MX-30」は“変わりボディー”のパーソナルカーなのだ。
開口部の大きな車体構造ゆえ、長年使ってもボディーがいささかもゆがまず、ドアをスムーズに開閉できるか、一抹の不安は残る。が、将来にわたってリアシートに人を乗せるたび、「観音開きはやっぱり不便でねぇ」と同じ話題で盛り上がれること請け合い。鉄板ネタを持つクルマ。
ちょっと類を見ない“変なSUV”として、数十年後には評価が上がっている、はず。たぶん。ガレージに「RX-8」と一緒に止めておくと、「わかりやすい人」と安心されることでしょう。
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小さくても輝いている
■フィアット・パンダ クロス4×4
「シャコタカの法則」と勝手に呼んでいるのだが、比較的凡庸な見かけのクルマでも、車高を上げてアウトドアテイストをまぶしたとたん、アラ不思議。にわかにオシャレ感が漂ってきて、日常の伴侶としての魅力がアップする。「フィアット・パンダ」をオフロード仕様にした「パンダ クロス4×4」が直近のサンプルだ。
これがイイ! 全体に安っぽい質感(失礼)。「簡素」を「すてき」に変換するイタリアンマジック。ショボいフィールが笑わす2気筒を、3ペダル式の、しかしぜいたくな6段MTでブン回して走らせる。楽しい!! “ちょっと古い”フィアット好きなどは、懐かしさで目頭が熱くなることでしょう。ワタシはなりました。
4WDがパートタイム式でないのが、シンプルさの点で残念だが、まあ、なんやかやいって四駆は安心だからヨシとしましょう。長く愛用していると、ちょうど初代パンダの4×4モデルのようなコレクターズアイテムになるに違いない。
263万円という、輸入4WDモデルとしてはリーズナブルな価格がありがたい。150台の限定販売というから……もう売り切れているかも!?
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■三菱i-MiEV
2020年に生産が中止されたピュアEV。三菱自動車のホームページにまだ載っているから、若干の流通在庫が残っているのだろう。
ベースとなった「i」に遅れること約3年。2009年に販売が開始された。「軽」規格に縛られた狭い横幅がもったいないけれど、10年以上を経たいまでも、エクステリアの近未来感はいささかも衰えない。傑作だと思う。一方で、高度なデザインや革新的なレイアウトが、ハイトワゴンに代表される「実用」に敗れ去った苦い経験として、自動車メーカー関係者の脳裏には深く刻まれているはずだ。残念。
実際問題として、EVを長く愛用するのは難しいし、中古のEVに手を出すのはちゅうちょされる。言うまでもなくバッテリーの劣化が問題で、元の容量が小さいi-MiEVで航続距離の短縮は深刻だ。
まったくの希望にして願望なのですが、スリーダイヤモンド自ら、保証期間または保証走行距離を超えた個体に対して、バッテリーリフレッシュまたは交換処理を施してもらえないものでしょうか。「203X年までにピュア内燃機関車を禁止」との政治的アピールが盛んになされる昨今、時流に合ってません?
「ホンダNSX」を草分けとして、「マツダ(ユーノス)・ロードスター」「日産スカイラインGT-R」に、メーカー自らレストアを施すサービスが提供されている。絶版車用欠番パーツの限定再生産がニュースになったりもする。自社のレガシィ(遺産)を見直し、活用する動きに、三菱も乗ってくれないかなァ。わが国初の本格量産EVとして、i-MiEVにはその資格がきっとある。カッコいいし。まだ間に合うはずだ。
(文=青木禎之/写真=ポルシェ、本田技研工業、アルピーヌ・ジャポン、FCAジャパン、三菱自動車、webCG/編集=関 顕也)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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