予約注文が1カ月で1000台を突破 新型「ゴルフ」はスタートダッシュに成功したのか!?
2021.03.31 デイリーコラム2015年までは不動のベストセラー
8代目となる新型「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の国内発売時期は、公式には今のところ「2021年内」としか言及されていないが、ネットなどで出回っている販売現場情報によると、2021年6月あたり……いうのが有力だ。そんななか、日本のインポーターであるフォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)は2月9日に新型ゴルフの先行予約受注を開始した。
新型ゴルフの日本仕様に用意されるパワートレインは、ひとまず1リッター3気筒ターボと1.5リッター4気筒ターボの2種類で、全車が48Vマイルドハイブリッドと組み合わせられる。また、10.25インチのフル液晶メーターパネル「デジタルコックピットプロ」も全車標準装備になるとか。
ゴルフはいうまでもなく、つい最近まで不動の輸入車人気1位だった。ある記録によれば、2代目当時の1988年から7代目途中の2015年まで、ゴルフは幾度のモデルチェンジも乗り越えて、28年連続で「外国メーカー車モデル別新車販売台数1位」であり続けた。2016年以降はその座を「MINI」に明け渡してしまっているのだが、そのMINIの台数には主力のハッチバック系のほか、実質的にひとクラス上の「クロスオーバー」や「クラブマン」が含まれていることは考慮すべきだろう。しかも、ゴルフは2016年以降もMINIに続く2位にピタリとつけていたわけだから、それはゴルフの失速というより、MINIの躍進と捉えたほうが正確かもしれない。
そして、2021年3月9日、VGJは先行受注開始からちょうど1カ月が経過した時点での新型ゴルフの先行受注台数が、1000台を突破したと発表した。VGJ自身はこれをもって「予約注文好調」としているから、悪くない数字であることは事実なのだろう。しかし、歴代ゴルフの先行受注台数は定かではなく、またゴルフがピーク時に1年間で3万台以上を売り上げていたことを考えると、この1000台という数を本当のところはどう評価すべきか……は判断に迷うところではある。
2020年は3位に転落
ただ、ゴルフについては国内販売台数で単純にMINIに抜かれてしまった以上に、以前とは異なる兆候がいくつかある。
ひとつは、ここ数年の国内販売台数の明確な下降である。ゴルフの国内販売は順位としてはMINIに抜かれた2016年でも、台数そのものは2万台を大きく超えていた。しかし、その翌々年の2018年以降、ゴルフの販売台数は3年連続で2万台を下回っている。これ以前の年間販売2万台割れは、6代目末期の2012年だけだったことを考えると、以前とはなにかが変わってきていると考えるのが自然かもしれない。しかも、直近の2020年にいたっては、その販売台数がほぼ1万台にまで落ち込んで、2018年発売の「メルセデス・ベンツAクラス」にも抜かれて、なんと3位(!)にまで落ちてしまったのだ。
ご承知のように、2020年は新型コロナですべてが混乱した一年だった。しかも、ゴルフの場合は、欧州ではすでにフルモデルチェンジしているのに、日本で売られたのは実質旧型だったわけだから、ある程度の落ち込みは想定内だろう。しかし、こうした本国とのモデルチェンジ時期のズレは今回にかぎったことではなく、それでも年間2万台を売り上げて、旧型だろうがMINIが束になってかかってこようが、揺るがなかったのがゴルフというクルマでもあったわけで……。
山が動く日は近い
地元の欧州市場での新型ゴルフは、発売初年度となった2020年も30万台以上を売り上げて見事にベストセラーの座を守ることに成功した。それはまことに良いことなのだが、年明け2021年は、1月が前年比4割ダウンの4位、2月が3割ダウンの3位……と明確に失速している。もうひとつの気になる兆候はそこだ。
余談だが、2020年の欧州2位は同じくモデルチェンジしたばかりの「ルノー・クリオ(日本名:ルーテシア)」だったが、こちらも年明けは前年比3~4割ダウンとなり、1月は7位、2月は6位と大失速している。もしかしたら、ともに2020年のベストセラー獲得のために強引な販売をした反動かもしれない。さらに余談でいうと、1月に欧州販売1位となったのはわれらが「トヨタ・ヤリス」。そして1月が2位、2月が1位と安定して連続ゴルフ超えを果たして絶好調なのが「プジョー208」である。
さて、6月ともいわれる新型の国内発売から一気に追い上げるはずのゴルフの2021年の販売成績は、どうなるのだろうか。VGJも満を持しての果敢な販売攻勢に出ることは間違いなく、最終的にはトップをうかがうレベルになる可能性は高い。しかし、いっぽうで新型のデキとは別に、ゴルフだからといって黙っていても売れる時代ではなくなりつつあることも間違いないだろう。
なんだかんだいっても、国内でもっとも売れたVW車は2020年もゴルフだったのだが、2番手はいつもの「ポロ」ではなかった。ゴルフの次に売れたVWはコンパクトSUVの「Tクロス」であり、しかもゴルフとはわずか1000台強の差しかなかった。やはり、地殻変動は近いのか。
(文=佐野弘宗/写真=フォルクスワーゲン、BMW/編集=藤沢 勝)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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