ホンダ・ヴェゼルG(4WD/CVT)
去る者は追わず 2021.07.12 試乗記 電動化! ハイブリッド! で攻勢をかけている新型「ホンダ・ヴェゼル」だが、注目度の低い(?)純ガソリンエンジン搭載モデルがあるのをご存じだろうか。この最廉価グレードはヴェゼルファンに対するホンダの良心か、それとも……?わずか7%のレアなヴェゼル
発売以来、販売好調が伝えられる新型ヴェゼル。今回取り上げるのは、非電動のガソリンモデル「G」である。
1.5リッターハイブリッドは3グレードあるが、無垢の1.5リッターエンジンはこのワングレードのみ。その甲斐あって(?)、立ち上がりの受注は93%がハイブリッドだという。
GにもFFと4WDが用意され、試乗車の4WDで249万9200円。FFの22万円高だが、一番安いハイブリッドの4WDよりは38万円ほど安い。モデルチェンジ直後は高いグレードが売れるのが通り相場だから、これから売れてくる可能性はある。ちなみに先代のハイブリッド販売比率はトータルで65%だったという。
あらかじめお断りしておくと、この時点で筆者はハイブリッドのヴェゼルには未試乗だった。そんな資格でGを評価していいのかという見方もあろうが、それだけにこのレアヴェゼルだけをまっすぐ観察できるという見方もあると思う。
なにより、筆者はもともとベーシックモデル好きである。特に欧州車はベーシックグレードにこそ“福”があると思ってきた。もちろんヴェゼルは欧州車ではなく、日本車なのだが。
そこそこのパワーと乗り心地
ハイブリッドの上級モデルは、内装も加飾パネルなどで演出されるが、Gの室内はほぼ黒一色。SUVとしてはビジネスライクである。降坂支援装置のヒルディセントコントロールが付いている。そのスイッチが4WDの目印かと思ったが、GのFFを始め、全グレードに標準装備だった。「ホンダセンシング」の主要な機能はもちろんGにも備わる。
1.5リッター4気筒はなぜか直噴からポート噴射に変わり、最大トルクは増えたが、最高出力は129PSから118PSにドロップしている。
特にパンチのあるエンジンではないが、1330kgの車重に対して、パワーは必要十分だ。CVTには有段変速のステップが設けられている。ひとり乗車時だと、フルスロットルで6600rpmあたりまで昇りつめたあと、70km/hでATのようにシフトアップする。平たん路での100km/h時の回転数は2000rpm前後。だが120km/hまで上げると、少々やかましくなり、もう1段、オーバードライブ的に高いギアがほしくなる。
乗り心地はちょっと残念だった。アシが十全に仕事をして、揺れやショックをボディーには伝えないというような、いわゆるフラットさに欠けるのだ。Gのホイールはハイブリッドの最廉価版「X」とともに16インチ(ほかは18インチ)で、大きなホイールハウスに対して、いかにもタイヤが小さく見えるが、実際、乗っていてもタイヤが“豊か”な感じはしない。それやこれやで、乗り心地の品質感がいまひとつに思えた。
使いでのあるリアシート
目の詰んだ横じまのフロントグリルをボディーと同色にして、走行風を取り込む必要がないEVっぽさを演出するなど、これまでのイメージを一新したニューボディーは、居住まいも新鮮だ。
特におもしろいのはリアシートだ。ヘッドルームはそれほど広くないが、レッグルームは抜群に広い。リアドアは長く、しかもウエストラインがまっすぐだから、リアシートに座ると、後席空間が京都の町屋みたいに長い。座面も高めで、見晴らしがいい。ヴェゼルに接するチャンスがあったら、ぜひリアシートに座っていただきたい。
側面のフォルムも旧型とは別物だ。ルーフは後端まで平らで、テールゲートは強く寝ている。センタータンクレイアウトによる低いフロアは健在で、後席背もたれをダイブダウンすると、たっぷりした荷室になる。テールゲートのヒンジが奥へ移動したため、開口面積は広くなり、かさのある荷物の出し入れはやりやすい。キャンプなどでは使いやすいクルマだろう。
ダッシュボード両端に付く「そよ風アウトレット」と呼ばれるエアコンの吹き出し口は、間接照明ならぬ間接送風という感じで、わるくなかった。
リアドアが長いため、後端の高い位置に埋まる縦置きのドアハンドルは使いにくいと思った。
カタログに載っていないカタログモデル
約360kmを走って、燃費は10.6km/リッター(満タン法)だった。ハイブリッドモデルのあるクルマであえてノンハイブリッドを選ぶのは、車両価格+燃料代のトータルコストを考えてのことだと思うが、それにしても1.5リッター車で10km/リッター台とはかんばしくない。webCGですでに取り上げているハイブリッドの「e:HEV PLaY」(FF車)は21.4km/リッターを記録している。同じ経路をたどった比較テストではないから、比べるのはアンフェアだが、やはりそれにしてもの大差である。
燃料経済性も含めて、今回の結論。新型ヴェゼルはハイブリッドのほうがいい。ベーシックモデル好きとしては、ほめてやろうと腕まくりして試乗に臨んだのだが、残念ながらこのクルマのパワートレインと足まわりには判官びいきのポイントが見いだせなかった。
そもそも46ページにもわたる新型ヴェゼルのカタログには、Gの写真が1枚もない。「いたの?」というような扱いである。
ホンダは日本車メーカーとしてはいち早く2040年という期日を明示してEVと燃料電池車への全面移行を表明した。そのタイムスケジュールのなかで、純エンジン車はこうやってフェードアウトしていくのか。そんなことを強く感じさせたヴェゼルのGだった。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ホンダ・ヴェゼルG
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4330×1790×1590mm
ホイールベース:2610mm
車重:1330kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:118PS(87kW)/6600rpm
最大トルク:142N・m(14.5kgf・m)/4300rpm
タイヤ:(前)215/60R16 95H/(後)215/60R16 95H(ダンロップ・エナセーブEC300)
燃費:15.6km/リッター(WLTCモード)
価格:249万9200円/テスト車=284万0200円
オプション装備:ボディーカラー<プレミアムクリスタルレッドメタリック>(6万0500円) ※以下、販売店オプション Gathers 9インチプレミアムインターナビ(19万8000円)/ドライブレコーダー(5万3900円)/フロアカーペットマット(2万8600円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2451km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:362.2km
使用燃料:33.7リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:10.7km/リッター(満タン法)/10.9km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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