第218回:炎の最高速トライ
2021.10.25 カーマニア人間国宝への道ふるさとを感じる
先日、「セクシージャンボ」こと、わが「ダイハツ・ハイゼット トラック ジャンボ」(1990年式)で、伊豆半島一周の旅に出ました。
ジャンボは軽トラ。働くクルマだが、私には載せる荷物がない。たまに取材や撮影で出動したり、夜の首都高に出撃したりするくらいで、あまり活躍の場がない。ならば活躍の場をつくるしかない! よし、伊豆半島を一周しよう! 伊豆半島には高速道路がほとんどないので、一般道を激走することになる。低速兵器たるジャンボに打ってつけだ!
まずは高速道路で沼津へ。最高速度120km/hの新東名に初突入! 行くぜジャンボよ、フルスロットルだ! ブイィィィィィ~ン。
う~ん、どう頑張っても120km/hはムリか。メーター読み108km/h(GPS測定で100km/h)しか出ませんでした。
伊豆縦貫道を通り、西伊豆スカイラインへ。うおおおお、なんてすばらしい眺めだろう。ここをいろんなフェラーリで走ったなぁ。若干むちゃもやったなぁ。今はむちゃのしようがないジャンボでゆっくり流すオレ。あ~、シアワセだなぁ。
狭い峠を下って西伊豆へ。小さな漁港に入ると、そこはもう軽トラ王国。止まってるクルマの3台に1台は軽トラって感じで、故郷に帰ったような気分だ。ああ、軽トラはニッポン土着のゲタなんだなぁ。
そんな地元の軽トラのなかにも、ドレスアップしているクルマをたまに見かける。漁協前にたたずんでいた「ハイゼット デッキバン」は超カッコよかった。こういうところにフェラーリで出かけて、場違い感を楽しむのもいいけれど、軽トラで行ってふるさとを感じると、心の底から和むなぁ。
![]() |
![]() |
![]() |
ジャンボにトラブル続出
ジャンボは西伊豆の海岸沿いを軽快に駆け抜ける。石廊崎へ寄り、下田に一泊し、帰路は天城越えだ。わさび畑を横目に見ながら、天城峠の旧道に入って写真をパチリ。いやぁ、超似合う! 最高だぜジャンボ!
でも、エンジンを再始動しようとしたら、セルが回りませんでした。こ、これはバッテリー上がり!?
そういえば今日は朝から、たまにカーステレオが止まっていた。接触不良かと思ったけど、電圧が下がっていたのか。よりによってこんな山奥で止まるとは……。
そうだ、ちょうどいいあんばいに坂道だから、この傾斜を使って押しがけしよう。行き止まりの旧道だけに交通量はほぼゼロ。道幅も広い。上り坂に止まってるから、バック押しがけだ。
ギアをバックに入れてサイドブレーキを解除。多少スピードが乗ったところでクラッチを上げる。
しかし、砂利道では後輪がスリップしてダメだった。そのまましばらく惰性で下がって、舗装部まで出て再び試したら、再始動に成功しました。よかったー。
そのまま一番近いガソリンスタンドへ駆け込んで、バッテリーを交換し、無事、帰還したのでありました。
翌日。ジャンボを見ると、あれ? 左右後輪の空気が抜けてる! エアチェックしたらコンマ4しか入ってない! スローパンクチャーだ。
エンジンを始動すると、げえっ。もうバッテリーが弱ってる。バッテリーじゃなくオルタネーターの劣化だったんだ! 伊豆半島一周激走の旅で、各部がいっぺんに限界を超えたのか。
軽トラの修理費は安い
ジャンボはもう31歳。人間に換算すると90歳くらいでしょうか。そりゃ弱ってるところは逝くでしょう。
実は帰路の高速道路で、水温が異常な上昇をみせてもいた。一般道に降りると下がるという、通常とは真逆の症状だったが、あれは、高速でエンジンを回すと、電圧が足りなくなって電動ファンが止まったから?
この際だから、オイルとクーラントも交換しよう。タイヤはまだ6歳なので修理しよう。そう思って近所の修理工場へ。
「オルタネーター、11Vしか出てないです。もう新品はないので、リビルド品になりますけどいいですか?」(メカニック)
もちろんリビルド大歓迎。お値段は1万6000円。やすっ。
タイヤは「ヒビだらけで直せません」ってことで、仕方なく新品に。サイズは145R10-6PR。「インチ数が小さすぎて、ウチのチェンジャーじゃムリかな……」と言われて軽いショック。タイヤって、小さすぎても交換が難しいのね。
でもなんとかなりました。1本6000円ナリ。オイルは2.7リッターで2565円+工賃900円、クーラントは3リッターで4500円+工賃7200円。すべてコミで8万円ちょっと。やっぱ軽トラの修理はお安いなぁ。
そして、夜の首都高で試運転。
おおっ、微妙にエンジンのフケがイイ! 加速がよくなっている! これなら新東名で120km/h出るかも!
よし、いつかもう一度最高速トライしよう! 制限速度内で最高速トライができるなんて、オレは本当にシアワセ者だ……。
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第317回:「いつかはクラウン」はいつか 2025.8.25 清水草一の話題の連載。1955年に「トヨペット・クラウン」が誕生してから2025年で70周年を迎えた。16代目となる最新モデルはグローバルカーとなり、4タイプが出そろう。そんな日本を代表するモデルをカーマニアはどうみる?
-
第316回:本国より100万円安いんです 2025.8.11 清水草一の話題の連載。夜の首都高にマイルドハイブリッドシステムを搭載した「アルファ・ロメオ・ジュニア」で出撃した。かつて「155」と「147」を所有したカーマニアは、最新のイタリアンコンパクトSUVになにを感じた?
-
第315回:北極と南極 2025.7.28 清水草一の話題の連載。10年半ぶりにフルモデルチェンジした新型「ダイハツ・ムーヴ」で首都高に出撃。「フェラーリ328GTS」と「ダイハツ・タント」という自動車界の対極に位置する2台をガレージに並べるベテランカーマニアの印象は?
-
第314回:カーマニアの奇遇 2025.7.14 清水草一の話題の連載。ある夏の休日、「アウディA5」の試乗をしつつ首都高・辰巳PAに向かうと、そこには愛車「フェラーリ328」を車両火災から救ってくれた恩人の姿が! 再会の奇跡を喜びつつ、あらためて感謝を伝えることができた。
-
第313回:最高の敵役 2025.6.30 清水草一の話題の連載。間もなく生産終了となるR35型「日産GT-R」のフェアウェル試乗を行った。進化し、熟成された「GT-RプレミアムエディションT-spec」の走りを味わいながら、18年に及ぶその歴史に思いをはせた。
-
NEW
フォルクスワーゲン・ゴルフRアドバンス(前編)
2025.9.7ミスター・スバル 辰己英治の目利き「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のなかでも、走りのパフォーマンスを突き詰めたモデルとなるのが「ゴルフR」だ。かつて自身が鍛えた「スバルWRX」と同じく、高出力の4気筒ターボエンジンと4WDを組み合わせたこのマシンを、辰己英治氏はどう見るか? -
ロイヤルエンフィールド・クラシック650(6MT)【レビュー】
2025.9.6試乗記空冷2気筒エンジンを搭載した、名門ロイヤルエンフィールドの古くて新しいモーターサイクル「クラシック650」。ブランドのDNAを最も純粋に表現したという一台は、ゆっくり、ゆったり走って楽しい、余裕を持った大人のバイクに仕上がっていた。 -
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。