ダイハツ・ロッキー プレミアムG HEV(FF)
次なる進化のはじまり 2022.02.15 試乗記 コンパクトSUV「ダイハツ・ロッキー」に新設定されたシリーズ式ハイブリッド車に試乗。エンジンで発電しモーターで駆動する「e-SMART HYBRID」の走りや燃費を、さまざまなシチュエーションを織り交ぜたロングドライブで確かめてみた。ハイブリッドを自社開発した理由
ロッキーのラインナップに、ダイハツが初めて自社開発をしたハイブリッドシステムを搭載する仕様が加わったと聞いて、頭の中に「?」がともる。自分のところで開発しなくても、親会社のトヨタのハイブリッド技術を使えば、ちゃちゃっとつくれるんじゃないの、と思ったからだ。それこそシナジー効果というものでしょう。
でも、よくよく話を聞いて納得した。ダイハツは、将来的に軽自動車のサイズまでハイブリッド化することを見越しており、それには軽量・コンパクトでコストも抑えられるハイブリッドシステムを自社で開発することがマストになってくるのだ。
ここでダイハツが選んだのが、シリーズ式のハイブリッド。シリーズ式なんて書くと難しそうだけれど、エンジンは発電だけを行い、タイヤを駆動するのは100%モーターという、完全分業システムだ。エンジンが発電と駆動の2役をこなす、トヨタお得意のハイブリッドに比べて仕組みはシンプルになるし、ということは軽量・コンパクトにすることも可能で、であれば、さまざまなレイアウトに対応することができる。ちなみに、エンジンが発電、モーターで駆動、という成り立ちは、日産の「e-POWER」と共通である。
試乗したのは、最上級仕様の「ロッキー プレミアムG HEV」。エンジン仕様には4輪駆動モデルもラインナップするけれど、ハイブリッドは前輪駆動のみ。「e-SMART HYBRID」というロゴが輝くほか、「D」の文字をモチーフにしたダイハツのエンブレムにブルーをあしらったところが、外観のポイントだ。
乗り込んで、ハイブリッドシステムを起動。最初の作業はメーターパネルの表示を選ぶこと。「先進」「ワクワク」「シンプル」「アナログ」と名づけられた4種類から選ぶことになる。いずれも、いま電気を消費しているのか、それとも蓄えているのかを、感覚的に理解できる表示だ。と言いつつ、昔なじみのタコメーター風の「アナログ」表示だと落ち着いた気分になるので、これでいく。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
気持ちのいいレスポンス
スタート時は、バッテリー残量に余裕があったのでエンジンは始動せず、モーターだけのEV走行。無音で滑らかに発進する。滑らかというより、清らかと書きたくなるのは排ガスを出していないからか。
ただし、EV走行の距離を伸ばすことを第一の目的にしたシステムではない。コストを抑えるために、リチウムイオンバッテリーの容量は必要最小限に設定されているからだ。大事なことは、エンジンの発電とモーターへの電力供給という“出し入れ”を賢く組み合わせて燃費を稼ぐことで、実際、ドライブしているとこまめにエンジンをオン/オフしているのがわかる。
おもしろいのは、加速がほしいときにアクセルペダルを踏み込むと、100%モーターで駆動しているのにもかかわらず、エンジン音も連動しているかのように高まること。ぼーっと運転していると、電動車ではなくエンジン車だったっけ、と錯覚するほどだ。ただし、アクセル操作に対する反応はやはりエンジンとはひと味違い、踏めばピピッとデジタルっぽくレスポンスする。この俊敏な反応は気持ちがいい。
ここで、ペダルひとつで加速と減速をコントロールできるという触れ込みの、「スマートペダル」を試す。「S-PDL」と記されたダッシュボード上のスイッチを押すと、アクセルペダルを戻したときに、通常のエンジンブレーキよりはるかに強く減速するようになる。したがって日産が言うところのワンペダル、アクセルペダルだけで速度をコントロールできるようになるのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
スマートペダルでの運転は頭脳ゲーム
最初はアクセルをオフにしたときの減速感が強すぎる気がしたスマートペダルであるけれど、コツをつかむと快適に走れるようになる。アクセルペダルを「10→0」というように一気に戻すのではなく、「10→9→8→7→6→5→4→3→2→1→0」と、段階を踏んで戻すとスムーズだ。
いやいやそんなメンドくさいことはしたくない、何も考えずに運転してもスムーズに減速してほしい、という方は、「ノーマルモード」から「エコモード」に切り替えるといい。このモードだとアクセルをオフにしたときの減速感が穏やかになる。ただし「エコモード」だと、加速時のレスポンスも控えめになることは知っておいてもらいたい。
運転が楽しいのは、S-PDLオンのノーマルモードだ。カーブが迫ってきたときに、アクセルペダルを戻すだけでブレーキペダルに踏み替えることなくスピードをコントロール。コーナー出口でアクセルペダルを踏み込んで、モーターならでは俊敏でスムーズな加速を味わう。
これを何度も続けているとどんどん上達して加減速がスムーズになるあたり、頭を使うゲームのようで楽しくなってくる。スマートペダルはもちろん省燃費の技術で、オンにすると減速時のエネルギーを電気に変換して蓄える回生ブレーキの働きも強力になる。でもエコだけでなく、クルマと運転の新しい楽しみ方を提供してくれるとも感じる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
初めてにしては上出来
意外に感じたのは乗り心地で、サイズから想像するよりもはるかに重厚だ。どっしりとした安定感があり、路面からの衝撃もよく抑えられていて、快適だ。ほぼ同じ装備のエンジン仕様と車重を比べると、ハイブリッド仕様のほうが90kg重い。けれども、重量物の駆動用リチウムイオンバッテリーを後席下に格納しているせいか、ハンドルを切ったときの動きが緩慢になったりコーナーで外側にふくらんだりするような弊害は観察できない。
また、前を行く車両に追従するアダプティブクルーズコントロールや、車線中央を走るようにハンドル操作をアシストするレーンキープコントロールといった安全・運転支援装置は、現代のコンパクトカーとして十分な能力を備えている。このあたりの機能に、不足は感じない。
ひとつだけ気になったのは、エンジンが始動した瞬間の音量と音質、振動であるけれど、逆に言えばそうした細かいポイント以外は気になるところがなく、初めて自社開発したハイブリッドとしては上出来ではないかと思った。今後、軽自動車を含めたコンパクトカーに、幅広く展開する起点となるだろう。参考までに300kmちょっと走った今回の燃費は、満タン法で22.1km/リッターだった。
もうひとつ気づいた細かいポイントがあって、それは試乗車がオプションのアクセサリーコンセントを荷室に備えていたこと。4万4000円とちょっと高価に感じるけれど、AC100V・1500Wだから多くの家電製品に使えるはず。景色のいい場所でコーヒーを沸かしたり、ホットプレートでお好み焼きを焼いたり、マッサージガンで筋膜はがしをしたりと、夢が広がる。これも、電動車がもたらす新しいクルマの楽しみ方だ。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ダイハツ・ロッキー プレミアムG HEV
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1695×1620mm
ホイールベース:2525mm
車重:1070kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:105N・m(10.7kgf・m)/3200-5200rpm
モーター最高出力:106PS(78kW)/4372-6329rpm
モーター最大トルク:170N・m(17.3kgf・m)/0-4372rpm
タイヤ:(前)195/60R17 90H/(後)195/60R17 90H(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:28.0km/リッター(WLTCモード)
価格:234万7000円/テスト車=291万8142円
オプション装備:ボディーカラー<ブラックマイカメタリック×シャイニングホワイトパール>(7万7000円)/パノラマモニター対応純正ナビ装着用アップグレードパック(4万8400円)/ブラインドスポットモニター(6万6000円) ※以下、販売店オプション 9インチプレミアムメモリーナビ(25万1922円)/アクセサリーコンセント(4万4000円)/カーペットマット<高機能、ブルー・HEV用>(2万8226円)/ETC車載器<ビルトインモデル>(2万0834円)/ドライブレコーダー<スタンドアローンモデル>(3万4760円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2559km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:310.7km
使用燃料:14.1リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:22.1km/リッター(満タン法)/23.7km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R(FR/6MT)【試乗記】 2026.5.26 販売台数わずか200台の限定車「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」に試乗。スーパー耐久レース参戦をはじめとするマツダのモータースポーツ活動を担うサブブランドが生み出した初の市販コンプリートカーは、いかなる走りをみせるのか。
-
NEW
日産リーフB7 G(前編)
2026.5.31思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産リーフ」に試乗。初代のデビューから15年余りを経て生まれた3代目はスタイリングも中身も刷新。苦境にある日産を立て直す重責を担っている。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2026.5.30試乗記新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。 -
つまずきを糧に成功をつかみ取れ! 新型「CX-5」に宿るマツダの変革と覚悟
2026.5.29デイリーコラム既存のマツダ車とは一線を画す乗り味で、メディアをおどろかせた新型「マツダCX-5」。マツダの最量販車種は、なぜ3代目で大転換を迫られたのか? 賛否両論を巻き起こした“あのクルマ”との関係は? 新しくなったCX-5に宿る、マツダの覚悟と変革に迫る。 -
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】
2026.5.29試乗記キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】
2026.5.28試乗記前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。 -
「日産テラノ」がPHEVで復活 往年のビッグネームを継承するSUVの特徴を分析する
2026.5.28デイリーコラム日産自動車が「北京モーターショー2026」で、往年のビッグネームを継承する新型SUV「テラノPHEVコンセプト」を世界初公開した。初代「テラノ」で採用された「3スロット」を想起させる車両のデザインに加え、日産が新型テラノで狙うグローバル戦略に迫る。















































