「トヨタbZ4X」「スバル・ソルテラ」「日産アリア」 最新の国産EVを比べてみる
2022.05.18 デイリーコラム正式発表から1年たったが……
最近は国産ブランドからSUVスタイルの電気自動車が活発に登場している。「日産アリア」に続いて、2022年5月には「トヨタbZ4X」と「スバル・ソルテラ」も発売された。
二酸化炭素の排出抑制も考えると、これらは期待の新型車だが、売り方に問題が多い。まず日産アリアは、2020年7月に発表されたが、特別仕様車「リミテッド」シリーズの予約受注を開始したのは、約1年後の2021年6月だ。
しかもリミテッドシリーズで納車が始まったのは「B6リミテッド」のみ。販売店では「『B9リミテッド』などは、今でもウェブサイトで予約注文を受け付けている状態で、納車は始まっていない」という。
また特別仕様車のリミテッドを除いた一般グレードで、価格が分かって受注しているのは「B6」だけだ(2022年5月中旬時点)。「B9」などの価格は今でも公表されていない。
このようにアリアは、約2年前の2020年7月に発表された後、価格の公表や受注の開始が段階的に行われている。そのために大半のユーザーは、購入計画を立てられない。すべてのグレードと価格が分かってこそ、自分に最適な仕様が選べるからだ。
この日産のやり方について、販売店では「アリアは『リーフ』に続く渾身(こんしん)の電気自動車で、商品力は高いのに、お客さまが購入しにくい状態になっている」と述べた。
自己所有できないbZ4X
トヨタのbZ4Xは、個人向けは「KINTO」と呼ばれるサブスクリプションサービスのみの扱いで、自分で所有することはできない。この背景には、電気自動車の特性がある。電気自動車は使っていると駆動用電池の充電容量が下がり、一回の充電で走行できる距離が短くなる可能性がある。そのために日産リーフは売却額が下がり、資産価値の低さが指摘された。
そこでbZ4Xは、KINTO専用車にした。KINTOではユーザーが車両を買い取ることはできず、使用期間が終了すれば返却する。従って電気自動車であるための損失は生じない。
その代わりKINTOは、クルマを貸し出すサービスだから制約が多い。ペットの乗車や車内での喫煙、改造などは行えない。アルミホイールなどを交換したときは、元の状態に戻して返却する。走行距離の制限もあり、規定以上に距離が伸びると、精算が発生する。
しかもKINTOのbZ4Xは加入時に77万円の申込金が必要で、契約期間は10年と長い。契約してから4年以内に解約すると、補助金の制約により解約金も請求される(5年目以降は請求されない)。このようにbZ4XのKINTOは、利用しにくい制度になっている。
そうなるとSUVスタイルの電気自動車で選ぶべきは、買い取りの可能なアリアかソルテラだ。買い得グレードはアリアがB6の2WD(539万円)、ソルテラは「ET-SS」の2WD(594万円)で、いずれも申請により経済産業省から85万円の補助金が交付される(2022年度の場合)。bZ4Xとソルテラは事実上同じクルマなので、買い取りにこだわらないのであればKINTOを選んでもいい。
どちらも装備内容は充実
この2車種を比べると、運転感覚はソルテラが軽快だ。ボディーはアリアよりも少し大きいが、軽快によく曲がる。その点でアリアは運転感覚が穏やかで、乗り心地を重厚に仕上げた。ソルテラは峠道が、アリアは高速道路が得意だ。
内装を見ると、インパネの周辺はソルテラも上質だが、アリアは木目調パネルを入念につくり込み、エアコンのスイッチもこの部分に埋め込んだ。後席の足元空間は両車ともに同程度だが、座り心地は、アリアの座面サイズがタップリしていて快適だ。アリアとソルテラを比べると、前者のほうが高級感が高い。
駆動用リチウムイオン電池の容量は、アリアB6の2WDが66kWhで、一回の充電で470kmを走行できる(WLTCモード)。ソルテラET-SSの2WDは電池容量が71.4kWhで、一回の充電で567kmを走行できる(WLTCモード)。つまりソルテラは、アリアに比べて一回の充電で走れる距離が約100km長い。これはソルテラの大きなアドバンテージになる。
装備については、アリアB6の2WDは、衝突被害軽減ブレーキや後側方車両検知警報、運転支援機能の「プロパイロット」(「2.0」はオプション)、カーナビ、通信機能、19インチアルミホイールなどを標準装備する。注意したいのは、アリアには100V・1500Wの電源コンセントが用意されないこと。災害時にも役立つ装備だから、今後は標準装着、あるいはオプション設定すべきだ。
一方、ソルテラET-SSの2WDは、100V・1500Wの電源コンセントを全車に標準装着した。その代わりタイヤサイズは18インチにとどまる。進化した運転支援機能の「アイサイトX」は採用されないが、車間距離を自動制御できるレーダークルーズコントロールなどは標準装着する。
こういった点を考慮すると、両車ともに一長一短だが、価格はアリアB6の2WDが539万円で、ソルテラET-SSの2WDが594万円だから後者が55万円高い。この価格差を考慮すると、アリアが買い得になる。販売方法を改善すれば、売れ行きも伸びるだろう。
(文=渡辺陽一郎/写真=トヨタ自動車、日産自動車、スバル/編集=藤沢 勝)

渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。 1985年に出版社に入社して、担当した雑誌が自動車の購入ガイド誌であった。そのために、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、車買取、カーリースなどの取材・編集経験は、約40年間に及ぶ。また編集長を約10年間務めた自動車雑誌も、購入ガイド誌であった。その過程では新車販売店、中古車販売店などの取材も行っており、新車、中古車を問わず、自動車販売に関する沿革も把握している。 クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。
-
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探るNEW 2026.3.5 スバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。
-
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり 2026.3.4 フェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。
-
F1で絶体絶命!? アストンマーティン・ホンダになにが起きているのか? 2026.3.3 2026年のF1開催を前に、早くも苦戦が伝えられるアストンマーティン・ホンダ。プレシーズンテストでの大不振はなぜ起きたのか? ここから復活する可能性はあるのか? 栄光と挫折を繰り返してきたホンダが、ふたたびF1で輝くために必要なものを探った。
-
“エネマネ”時代に突入! 2026年のF1は「F1ではなくなる」のか? 2026.3.2 レギュレーションは大幅変更。ホンダがアストンマーティンと手を組み復帰を果たすF1の2026年シーズンは、どんな戦いになるのだろうか? 本番前のテストを経て開幕戦が近づいてきた今、その“見どころ”についてリポートする。
-
ホンダがBEV「スーパーONE」の情報を先行公開 「ブルドッグ」の再来といわれるその特徴は? 2026.2.26 ブリスターフェンダーが備わるアグレッシブなエクステリアデザインから、ファンが「シティ ターボII」の再来と色めき立ったホンダの新型電気自動車(BEV)「スーパーONE」。2026年中の発売がウワサされる最新BEVの特徴とホンダの狙いを解説する。
-
NEW
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
NEW
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。 -
F1で絶体絶命!? アストンマーティン・ホンダになにが起きているのか?
2026.3.3デイリーコラム2026年のF1開催を前に、早くも苦戦が伝えられるアストンマーティン・ホンダ。プレシーズンテストでの大不振はなぜ起きたのか? ここから復活する可能性はあるのか? 栄光と挫折を繰り返してきたホンダが、ふたたびF1で輝くために必要なものを探った。 -
電動式と機械式のパーキングブレーキ、それぞれメリットは?
2026.3.3あの多田哲哉のクルマQ&A一般化された感のある電動パーキングブレーキだが、一方で、従来型の機械式パーキングブレーキを好む声もある。では、電動式にはどんなメリットがあって普及したのか? 車両開発者の多田哲哉さんに話を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.3.3試乗記「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。






































