ボルボC40リチャージ ツイン(4WD)
ほとばしる情熱 2022.06.13 試乗記 ボルボの電気自動車(BEV)第1弾として日本上陸した「C40リチャージ」。初号機ゆえに記録に残るのはもちろんだが、そのドライブフィールは乗った人の記憶にもまた強く残ることだろう。独特なのはクーペ風のスタイリングだけではなかった。小所帯ゆえの身軽さ
すでにマイルドハイブリッド車(MHEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)による“全車電動化”を2020年に達成したボルボは、2030年までにすべてをピュアな電気自動車(BEV)にする予定である。2030年の全車BEV化とは、欧州各社が掲げる未来像のなかでも、トップクラスに急進的だ。
C40リチャージは、そんなボルボのBEV第1号として日本上陸したクルマである。2021年11月に、まずは「頭金なしの月額コミコミ11万円」という100台限定のサブスクプランで導入された。欧州BEVは今や日本でもめずらしいものではなく、やけに威勢のいいボルボのBEV計画からすると、正直「やっと1台目?」と思わなくもない。
ただ、自動車メーカーとしては“小所帯”のボルボは、いったん動きだすとスピードが速い。冒頭の全車電動化にしても、ボルボがそれを正式表明したのは2017年夏。当時の日本市場に電動ボルボは「XC90」のPHEVしかなかったから、「まさか」としか思えなかったが、結局は有言実行となった。
今回のBEVにしても、この2022年に入ってからは目まぐるしい展開を見せている。まず1月にC40リチャージがオンラインで正式販売開始。続く3月には、それまで「ツイン」と呼ばれる2モーター4WDのみだったラインナップに、電池容量を減らし(78kWh→69kWh)て、駆動方式も1モーターFWD化したエントリーモデル「プラス シングルモーター」を追加した。と同時に、既存の4WDのグレード名も「アルティメット ツインモーター」にあらためられた。そして4月には前年にサブスクで販売されたC40リチャージの第1陣が納車開始。筆者も一般ユーザー車とおぼしきC40リチャージを何度か見かけている。
さらに、5月にはボルボBEV第2号(本国では第1号だった)となる「XC40リチャージ」も発表された。同車にもC40リチャージと同じくFWDと4WDがあり、本体価格はC40より20万円安い設定となっている。
踏みすぎにご用心
とはいえ、C40のFWDもXC40リチャージも日本での納車開始は2022年秋の予定で、現時点で日本で普通に走っているボルボBEVは原則としてC40リチャージの4WDとなる。今回の試乗車も当然それである。
このクルマの一充電あたりの航続距離は、WLTCモード(現時点では予定参考値)のカタログ値で485kmだそうだが、200V普通充電器できっちり満充電に仕上げると、メーターパネルには380kmという航続距離が表示された。この数字は実際の走行実績からの予測値で、それがC40リチャージのリアルな実力ということだろう。
いわゆる古典的なスターターボタン的なものが備わらないことも、物騒なイメージとは正反対の、このクルマのオシャレでスマートな特徴だ。ドライバーはスマートキーを身につけておくだけで、クルマに近づけば自動でドアロックが解除されて、運転席に座れば着座センサーによってクルマが起動する。駐車しているC40リチャージのタイヤが転がりだすまでに実際に手を使わなければならない行為は、ドアの開閉とシフトセレクターをDレンジに入れる……という2つだけだ。
それにしても、このXC40のルーフをチョップトップしたオシャレSUVクーペに「アルティメット~」って……と、そのグレード名に違和感をもつ、つまりそこに物騒、というか武闘派のイメージを抱くのは、一部の格闘技ファンだけだろうか。ただし、このクルマの走りは、その先入観に恥じないものがある。とにかくパワフルなのだ。モノは試しに……と発進からアクセルペダルを深く踏み込むときには「首にご注意!」といいたくなる加速力。中間加速でも乱暴なアクセルワークだと、身体がいちいちのけぞってしまうほどだ。
最速クラスのBEV
最高出力204PS、最大トルク330N・mのモーターを前後に搭載したアルティメットツインモーターのシステム最高出力と同最大トルクは、そのまんま足し算した408PS、660N・mとなる。これと同等の動力性能をもつ四輪駆動BEVには、たとえば「アウディe-tronスポーツバック55クワトロ」があるが、このクルマはC40リチャージより2まわり大きく、車重は400kgも重い。さらに、あの「ポルシェ・タイカン」を例にとると、C40の値は「4」より「4S」に近い。しかも、車重はC40のほうが軽いくらいだ。これらのクルマの経験がなくても、C40リチャージの4WDが、BEVとしていかに速い部類に入るかはご想像いただけると思う。
さらに、BEVではおなじみのドライブモード的な選択肢も最小限しかない。ほかのエンジン付きボルボとは異なり、BEVのC40には「スポーツ」だの「ダイナミック」だの、あるいは「エコ」といったクルマのキャラクターを統合的に可変させる機能は用意されない。また、パワートレインにかぎっても、アクセル特性を変えるようなスイッチ、あるいはBレンジすら存在しない。
あるのはパワステの重さを2段階に切り替える機能と、「ワンペダルドライブ」を作動させるプログラムだけだ。いずれにしても加速側のチューニングは基本的に大きく変わらないようで、ワンペダル機能をオフにしたノーマル状態では回生ブレーキは利かず、アクセルペダルからアシを離しただけではスルスルと空走するコースティング走行となる。逆にワンペダル機能をオンにすると、乱暴なペダルワークではつんのめるほどの強力な回生ブレーキが利いて、ブレーキペダルを完全停止までカバーする。そのワンペダルの調律も、昨今ではなかなか強力な部類である。
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気になるところも少々
C40リチャージのパワートレインは、よくも悪くも、BEVならではのキャラやフィールを素直に表現している。足指にまで神経を行き届かせたペダルワークなら上品に走らせることは可能だが、あまりレスポンスのよくないエンジン車しか経験がないと、最初はどうしてもギクシャクさせてしまうかもしれない。
これほどパワフルでレスポンシブなパワーフィールだと、普通はハンドリングも不安定になりそうなものだが、まったくそうではないのはさすが4WD。タイトコーナーで無遠慮にアクセルペダルを踏んでも、思わず下っ腹がこそばゆくなる(のは、男性特有の現象らしいが)ほどの加速なのに、走行軌跡は一糸乱れぬオンザレール。背中が蹴っ飛ばされたくらいに蹴り出してくれるトラクション性能も文句なしだ。
ただ、そうしたトルク配分が影響するより低い領域の操縦性や乗り心地には少しばかり粗っぽい面がなくはないのは、まだBEVを始めたばかりのボルボの経験不足によるものか。あるいは、基本骨格となるCMA(コンパクトモジュラーアーキテクチャー)のクセか、はたまたショート&トールのC40リチャージのディメンションによるものか。
CMAを土台としたクルマは、XC40のエンジン車でも少しばかりヒョコヒョコとした上下動が多めだが、それは電池を床下に抱えて低重心化しているはずのC40リチャージでも基本的に変わりない。また、大きな凹凸を乗り越えたときなども、衝撃はしっかりとまろやかに吸収してくれるいっぽうで、上下動が増幅されたかのように大きくなりがちな現象は少し気になる。まあ、こうした上下動も高速になるとおさまっていくのが、これまた従来のXC40と共通する美点といえなくもない。直進性も悪くはないのだが、なんとなくステアリングの据わりが悪くコーナーや車線変更での操舵が一発で決まりにくいのは、BEVとなったC40特有のクセかもしれない。
メリハリのきいたドライブを
こうしたクセは、その多くが無意識で曖昧なドライビングのときに出がちである。逆に荷重移動でしっかりとカツを入れたときの身のこなしは、確実で安定している。なので、C40リチャージでは、そのとにかくイキのいいパワートレインを存分に生かして、ステアリングを切るときにはそれに合わせたアクセルワークを忘れないメリハリのきいた運転と、4WDのトルク配分を積極的に使うことを心がけると、気持ちよく走れるだろう。
このクルマは、もうすぐ国内でも受注開始となるXC40リチャージとともにボルボの市販BEVの第1陣である。ドライブモードのような遊び心や、インテリアデザインや機能への独自の工夫が見られないのは物足りなくもあるが、今回は自社初の本格市販BEVをとどこおりなく仕上げることに専念したということかもしれない。
まあ、その仕上がりにもアラ削りな面もなくはないが、この価格と車体サイズに、この猛烈なパワーの組み合わせは貴重である。独特のクーペデザインにひと目ボレするケースもあるだろうし、試乗さえできれば、最初の走りだしで“ひと踏みボレ”してしまう好事家も少なくないはずだ。
今後のボルボは、途中経過として2025年までにMHEVとPHEVの販売比率を全体の50%まで減少させて、かわりにBEVの販売比率を50%まで引き上げる目標を掲げている。そのために、この第1陣BEVに続いて、同じCMAベースのコンパクトBEV(車名は「○○20リチャージ」?)も計画中とか。そして、2030年に向けては、いよいよ今でいう「60シリーズ」以上のアッパークラスBEVも新開発プラットフォームで登場するのだろう。そのころにはボルボのBEVもかなり洗練されているはずで、このC40リチャージも「情熱と過激な走りがほとばしる初期ボルボBEV」とかいって、珍重される存在になっているといいなあ。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ボルボC40リチャージ ツイン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4440×1875×1595mm
ホイールベース:2700mm
車重:2160kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:204PS(150kW)/4350-1万3900rpm
フロントモーター最大トルク:330N・m(33.7kgf・m)/0-4350rpm
リアモーター最高出力:204PS(150kW)/4350-1万3900rpm
リアモーター最大トルク:330N・m(33.7kgf・m)/0-4350rpm
システム最高出力:408PS(300kW)
システム最大トルク:660N・m(67.3kgf・m)
タイヤ:(前)235/45R20 100V XL/(後)255/40R20 101V XL(ピレリPゼロELECT)
一充電走行距離:485km(WLTCモード)
交流電力量消費率:187Wh/km
価格:719万円/テスト車=736万4650円
オプション装備:ボディーカラー<フィヨルドブルーメタリック>(8万5000円) ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー<フロント&リアセット>(8万9650円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2649km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:455.3km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.2km/kWh(車載電費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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