フォルクスワーゲンTロックTSIアクティブ(FF/7AT)
堅実にブラッシュアップ 2022.08.02 試乗記 フォルクスワーゲン(VW)の「Tロック」は、デビューからわずか4年で100万台を売り上げたという世界的に人気のコンパクトクロスオーバーSUV。日本に上陸したマイナーチェンジモデルのステアリングを握り、進化のポイントやその仕上がりをチェックした。今やフォルクスワーゲンの大黒柱
2020年1月に国内発売された「Tクロス」と同年7月に上陸したTロックは、2021年上半期、および2021年の通年の国内登録台数において、輸入SUV販売のワンツーを決めた。新型コロナ禍の影響で、各社とも商品供給がなかなか思うようにいかないなか、VWは需要と供給を比較的うまくバランスさせているということだろう。
というわけで、今回の主役は“現在、日本で2番目に売れている輸入SUV”のTロック。発売後初のマイナーチェンジを受けたのだ。
日本ではほぼ同時期に発売されたTクロスが日本でも最小クラス(4115mmという全長は「スズキ・クロスビー」や「ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ」に次いで短い)なのに対して、Tロックはそれより全長が130~135mm、全幅が65mm大きいが、それでも全長は日本でいうと「トヨタ・ヤリス クロス」と「日産キックス」の中間という短さだ。しかし、全幅はじつに1825mmもあり、全高は昨今のクロスオーバーではさほど低くもないものの、全体には“ショート&ワイド&ロー”なスポーツハッチバックともいえる都会的なたたずまいとなっているのが、Tクロスに対する大きな特徴である。
今回のマイナーチェンジは、日本の感覚だとちょっと早い気もするだろう。しかし、Tロックの本国発売は2017年。おそらく8年くらいを想定しているであろうモデルライフ全体の折り返し点が今ということだ。
もっとも、Tロックの世界販売は4年で100万台超に達しており、早くも大VWを支える大黒柱のひとつとなっている。基本的に売れている商品なので、今回もがらりと変えるようなイメチェンではないが、これまでのTロックで指摘されていた課題を明確に補正する内容になっている。
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インテリアの質感が上がった
従来のTロックの課題とは、ずばり質感だ。Tロックはサイズでもパワートレインでも、そして当然のごとく価格でも、Tクロスより上級という位置づけだが、質感についてはそこまで明確な差別化ができていなかったことは否定できない。もちろん、直接比較すれば、カラー液晶メーターはTロックの特権だし、ステアリングホイールやエアコンパネルなどもひとつ上級の部品が使われており、各部のメッキもより多岐にわたる。しかし、全面が硬い樹脂で覆われたダッシュボードは正直、高級とはいいづらかったのも事実なのだ。
とくにインテリアは、ひと目で変わったことが分かる。目をひくのは、サイズを拡大(8インチ→9.2インチ)したうえに最近流行のタブレット風になったセンタータッチディスプレイである。さらには、ステアリングホイールも最新世代となり、エアコンパネルもタッチ式になっていることがすぐに分かる。
さらに、ダッシュボードやドアトリムがステッチ(風の成形)入りのソフトパッドとなったことで、視覚的にも触覚的にも温かみが増した。これまでの特徴だったダッシュ加飾パネルは健在だが、ツヤのあるカラーパネルから日本仕様ではマットなアルミ調になったのも、高級感の醸成に成功している。体感的にいうと、従来の質感が「ポロ」のちょっと下級? くらいのイメージだったとすると、新しいそれは、ポロと「ゴルフ」の中間(のちょっとポロ寄り)? に格上げされたとでもいえばいいか。
エクステリアもフロントグリルと前後バンパーのデザインが変わっている。ヘッドランプも全車でLEDとなった。フロントバンパーはよりSUVらしい意匠になり、今回の「TSIアクティブ」はそのかぎりではないが、上級グレードはフロントグリルに横一線にLEDが光る。これも最新のVW車に共通する意匠だ。また、今回の試乗車でいうと、前後バンパー両端に車体同色のパネルがあしらわれるのが効果的である。以前はここがグリルメッシュ風の黒い樹脂パネルだった。
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乗り味はゴルフよりもポロ寄り
Tロックのパワートレインはある意味でゴルフよりぜいたくなラインナップで、エントリーモデルとなる今回の「TSI」も、ゴルフだと中間エンジンとなる1.5リッター4気筒ターボを積む。従来どおりの2リッター「TDI」もしっかり残されているし、さらに今回から300PSを発生する2リッターガソリンターボと4WDを組み合わせる「R」もついに上陸となったが、それらについては別の機会をお待ちいただきたい。
走行性能や乗り味は、正直いって特筆すべき変化は感じない。ゴルフのようなマイルドハイブリッド機構は備わらないが、車重は同じエンジンを積むゴルフより40~60kg軽いので、動力性能は活発である。このエンジンには気筒休止モードも備わっており、メーターを燃費表示モードにしておくと、低負荷パーシャルスロットル時にときおり「2シリンダー」という表示が出て、気筒休止していることが分かる。このシステムも出はじめのころは切り替えの瞬間に段差感があったが、今では表示を見ないかぎり、気筒休止の瞬間に気づくことは不可能に近い。
ゴルフの場合、1.5リッター以上のエンジン搭載車はリアサスペンションが4リンク式と呼ぶ独立式となるのだが、Tロックのそれは軽量シンプルなトーションビームだ。
Tロックはパワートレインだけでなく、ホイールベースや全幅でもポロよりゴルフに近いともいえる。しかし、こと乗り味については、パリッと小気味いい乗り心地や軽快でカジュアルな回頭性は、ゴルフよりポロに近い。このあたりはゴルフほど入念でない静粛対策や、地上高の高いSUVに対応したサスペンションチューンに加えて、リアサスペンション形式の影響もなくはないだろう。
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装備は充実したけれど
このご時世もあって、Tロックもマイナーチェンジを機に価格が上がった。同じ1.5リッターTSIで比較すると、マイナーチェンジ直前は355万円~376万円だったのに対して、最新価格は394万3000円~417万9000円。今回のTSIアクティブは従来の「TSIスタイル」に相当する装備内容だから、額面では40万円以上の値上げとなっている。ただ、大型センターディスプレイを筆頭とする内外装の質感アップに加えて、先進運転支援システムのグレードアップも今回のキモのひとつになっている。さらに昨今の社会情勢も加味すれば、ある程度の価格アップは許容するしかない。
具体的には車線維持機能がこれまでの「レーンアシスト」からアダプティブクルーズコントロール(ACC)と連動した「トラフィックアシスト」に格上げされたのがハイライトで、高速ACC走行時にはクルマ側で積極的に車線中央をトレースする。ほかにも、運転手がなにかしらの理由で運転できなくなった状態を検知すると自動的に緊急停止する「エマージェンシーアシスト」も追加されたほか、このTSIアクティブでいえば「パークアシスト」が新たに標準装備となったのも、従来のTSIスタイルに対するアドバンテージだ。
この物価高のご時世、新しいTロックで唯一の400万円を切るTSIアクティブの価格は魅力なのだが、リアカメラと電動テールゲートという依存性の高い2大装備(?)が、同グレードで入手不可なのが個人的には惜しい。そうなると、これら2つが標準装備されるうえに「LEDマトリクスヘッドライト」に1インチ大きい17インチホイール、リアシーケンシャルウインカーなどもついて20万円強の価格差しかない新しい「TSIスタイル」のコスパにひかれる。いずれにせよ、もともと輸入SUVの人気モデルだけに、最初からオーダーが集まる可能性も高い。欲しいならできるだけ早めに動くのが、このご時世の鉄則である。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲンTロックTSIアクティブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4250×1825×1590mm
ホイールベース:2590mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150PS(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/60R16 95V/(後)215/60R16 95V(ブリヂストン・トランザT001)
燃費:15.5km/リッター(WLTCモード)
価格:394万3000円/テスト車=413万5500円
オプション装備:Discover Proパッケージ(15万4000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(3万8500円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:620km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:201.8km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター(満タン法)/13.3km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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