【F1 2022】ハンガリーGP続報:予選10位もスピンもなんのその フェルスタッペン圧巻の勝利
2022.08.01 自動車ニュース![]() |
2022年7月31日、ハンガリーのハンガロリンク・サーキットで行われたF1世界選手権第13戦ハンガリーGP。予選10位からマックス・フェルスタッペンが圧巻の勝利を飾る一方、フェラーリはタイヤ戦略で敗れ、メルセデスは2戦連続の2-3フィニッシュを喜んだのだった。
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“レジェンド”の引退、“レッドブル・ポルシェ”発表秒読み
ハンガリーGPを前に2つのビッグニュースが飛び込んできた。まずはセバスチャン・ベッテルの引退表明。アストンマーティン移籍2年目の今季、期待外れのマシンで苦戦が続いていた35歳のベッテルが、とうとう今シーズン限りでF1キャリアに終止符を打つことを決めた。近年は往時の面影も薄れ中団に埋もれることも多々あったが、ルイス・ハミルトンらが惜別の言葉として彼を「レジェンド」と呼んだとおり、ベッテルが歴史に名を残すドライバーであったことに疑いの余地はない。
2007年アメリカGPでBMWザウバーからGPデビューし、いきなり当時の史上最年少入賞記録を打ち立てた“ワンダー・ボーイ”。翌2008年の雨のイタリアGPでは、トロロッソで誰もが驚くポール・トゥ・ウィンを成し遂げ初優勝。レッドブル移籍2年目の2010年には最終戦アブダビGPで大逆転し初戴冠となり、V8エンジン時代最後の2013年まで破竹の4連覇を達成した。
タイトル獲得4回は、ハミルトンとミハエル・シューマッハー(7回)、ファン・マヌエル・ファンジオ(5回)に続き、アラン・プロストと肩を並べる大記録。さらに通算勝利数53回は、ハミルトン(103回)、シューマッハー(91回)に次ぐ歴代3位で、ポールポジション57回もハミルトン(103回)、シューマッハー(68回)、アイルトン・セナ(65回)に次ぐ歴代4位にランクされるなど、その戦績は輝かしいものだ。
2015年にフェラーリに電撃移籍してからはドライバーズランキング2位が2回あったが、レッドブル時代の“王者としての確たる自信”をマラネロの地で再構築することができず、2018年の母国ドイツGPで首位走行中に痛恨のコースアウトでリタイアを喫すると、メンタル面でのもろさが目立つようになった。他を寄せつけない強さを見せるかと思えば、時に感情的な部分が露呈し失敗することもあった。またマシンを降りると人柄良く冗談を飛ばすなど、愛すべきキャラクターでもあった。そんなベッテルの勇姿が見られるのも、あと10戦となった。
もうひとつのニュースは、“レッドブル・ポルシェ”誕生に向けた動きだ。すでにフォルクスワーゲン グループは、傘下のポルシェとアウディが2026年からパワーユニットサプライヤーとしてF1に参戦することにゴーサインを出しているが、いずれも具体的な発表には至っていない。このうちポルシェは、レッドブルとのパートナーシップに向けて最終段階に入っていることが報道で明らかになった。
2026年からのパワーユニットのレギュレーション確定を待ちつつ、現在は各国の反カルテル法に照らし合わせた法的手続きが進められており、このうち承認後に書類の公示が義務づけられるモロッコの文書でつまびらかになったことには、ポルシェがレッドブルF1部門の株式50%を取得することが記されていたという。レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表もポルシェとの協議を認めており、レギュレーションが正式に決まり次第、詳細が発表されると見込まれている。
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予選での大逆転劇、メルセデスのラッセルが初ポール
マックス・フェルスタッペンが初ポールを決めた2019年、あるいはエステバン・オコンが初優勝を飾った2021年と、何かと“初”ものが出やすいハンガリーGPで、今年は初ポールシッターが誕生した。
雨上がりでドライとなった予選で自身初の予選P1を奪い、史上105人目のポールシッターとなったのはジョージ・ラッセル。前日はトップから1秒遅れと最悪の出だしだったメルセデスが、誰もが驚く大逆転劇で今季初ポールを獲得した。
その後ろにはフェラーリの2台が続き、渾身(こんしん)のラップでも0.044秒差で2位に甘んじたカルロス・サインツJr.は肩を落とし、3位だったシャルル・ルクレールはタイヤがグリップする作動温度のコントロールに難儀したことが敗因と語っていた。
ランド・ノリスが4位につけマクラーレンの今季ベストタイグリッド獲得。アルピーヌは、昨年の同GP勝者オコンが5位、フェルナンド・アロンソは6位と好位置を得た。メルセデスのもう1台、ハミルトンはDRSの不調でタイムアップならず7位、6戦連続Q2落ちだったアルファ・ロメオのバルテリ・ボッタスが8位に食い込んだ。
9位につけたマクラーレンのダニエル・リカルドの後ろにはフェルスタッペン。彼のレッドブルはアタック前にパワー不足に見舞われ、また僚友セルジオ・ペレスはQ2敗退の11位と、レッドブルは抜きにくいコースで大きなハンディを背負うこととなった。
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ラッセルが首位キープ、フェルスタッペンが早々に上位へ
決勝日は前日より気温が下がり、強い風が雨の到来を予感させた。このレースの勝敗を分けたのは、タイヤ戦略。特にミディアムタイヤでスタートしたフェラーリは、のちに致命的な結末へと至るのだった。
70周レースのスタートでは、ラッセルがトップを守り、2位サインツJr.、3位ルクレール、4位ノリス、5位ハミルトンらが後に続き、そしてフェルスタッペンは8位、ペレスも9位と早くも駒を進めてきた。
ソフトタイヤを履くレッドブルの2台は10周もしないうちにフェルスタッペン6位、ペレスは7位とポジションアップ。4位ノリスのペースが伸び悩んでいたことで、12周目にはハミルトンが4位に上がり、また続いてフェルスタッペンも5位となった。
先頭のラッセルは、当初築いた2秒台のリードが徐々に削られ、16周目には2位サインツJr.が迫りはじめた。17周目、フェラーリがサインツJr.にピットインの指示を出すも、前のラッセルが先んじてピットに入ったことでコースにとどまった。フェラーリは翌周にサインツJr.をピットに呼んだのだが、順位は逆転しなかった。
上位陣は1回目のタイヤ交換でミディアムを選択。トップはラッセル、2位ルクレール、3位サインツJr.、4位フェルスタッペン、5位ハミルトン、6位ペレスと、ルクレールとフェルスタッペンがポジションアップを果たした。
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遅れるフェラーリ、フェルスタッペン大逆転勝利
2位に上がったルクレールは、ここからラッセルに猛追を仕掛け、27周目にメルセデスの真後ろにつけると、31周目のターン1でようやく首位を奪還、今度はリードを広げはじめた。
2位に落ちたラッセルにサインツJr.が近づき、さらに4位フェルスタッペンも差を詰めてきた39周目、フェルスタッペンが2度目のピットストップを実施。再びミディアムタイヤを装着し、最後のスティントへと旅立っていった。
これに続いて翌周にはルクレール、ラッセルもピットに入ったのだが、フェラーリがルクレールに与えたのはペースが遅いハードタイヤ。ここまでミディアム、ミディアムとつないできたルクレールは、別の種類のタイヤを選ばねばならなかった。ならば2セット目のミディアムでもう少し長く走り、最後にソフトを選択すればよかったものの、よりによって遅いハードに替えてしまったのだ。
ルクレールは、ミディアムで快調に飛ばしていたフェルスタッペンに抜かれ、直後にレッドブルがスピンしたことで抜き返すも、45周目には再度フェルスタッペンにオーバーテイクされてしまった。さらに54周目にはラッセルにも抜かれ3位となり、たまらずフェラーリは3度目のピットストップに踏み切り、ソフトタイヤに履き替えたルクレールは結果6位で終わるのだった。
ハミルトンは、ルクレールと同じミディアムスタートだったものの、第2スティントで多くの周回を重ねたことで最後に速いソフトを装着できたのが奏功した。サインツJr.を抜き、さらに残り6周でラッセルをもかわして見事2位でレースを締めくくり、ラッセルとともに2戦連続のメルセデス2-3フィニッシュを決めた。
しかし、この日一番の活躍を見せたのは、やはりフェルスタッペンだった。トップ4より下からのスタートで勝ったことがなかった彼は、今回9つもポジションを上げて圧巻の勝利を飾ってしまったのだ。
圧巻なのはチャンピオンシップでのリードも同じで、ランキング2位のルクレールに80点もの差をつけてサマーブレイクに突入した。メルセデスの復活がいよいよ確かなものとなってきたいま、フェラーリには大きなプレッシャーがのしかかりつつある。
次の第14戦ベルギーGP決勝は、夏休み明けの8月28日に行われる。
(文=bg)