「日本車のCVTは自動車技術のガラパゴス化?」
2011.02.19 クルマ生活Q&A トランスミッション「日本車のCVTは自動車技術のガラパゴス化?」
なぜ輸入車にはCVTを採用しているモデルが少ないのでしょうか? トルクの大きい大排気量車にCVTが不向きであることは承知していますが、小型車に限っても導入している車種がすぐには思いつきません。いっぽう日本車では、小型車はもちろん中型車にもCVTが増えています。まるで携帯電話のガラパゴス化のようで、世界から技術的に孤立してしまうようにも思えるのですが、大丈夫なのでしょうか? また、CVTのワンテンポ遅れて加速するような感覚に違和感を覚えるのですが、これは構造上やむを得ないのでしょうか?
お答えします。たしかにCVTを採用した輸入車は少ないですね。現行車種で思い浮かぶのは、メルセデス・ベンツの「Aクラス」と「Bクラス」、「アウディA4 1.8 TFSI」くらいでしょうか。対して日本車では、一部の高級車やスポーツカー&スポーティカーを除いたモデルの多くがCVTを使っています。なぜこうした違いができたのかというと、私はCVTが日本の交通事情、とくに都市部のそれにマッチしていたために独自の進化を遂げ、普及したと考えています。
CVTは構造上、MTや2ペダル式MT、トルコン式ATなどに比べて伝達効率は劣っています。しかし市街地走行でよく使うエンジン回転域、具体的には2000〜3000rpm前後のトルクをギアシフトなしに有効に使えるという利点があり、とくに最近の直噴エンジンとはマッチングがいいと言われています。これによって、日本の都市部に顕著なストップ&ゴーの多いモードでも、よりスムーズに走行することができるのです。
そしてもうひとつ、燃費でもトルコン式ATより優れているという大きなメリットもあります。加えて、もともとCVTはトルコン式ATに比べ部品点数が少なくて済むのですが、量産効果によってコストが安くつく点も採用車種が増えた一因でしょう。
CVTが日本で独自の発展を遂げたことは、ある意味ガラパゴス化かもしれませんが、それについて私は心配していません。なぜなら、日本の自動車メーカーやサプライヤーのトルコン式ATに関する技術は世界のトップレベルですし、2ペダル式MTのノウハウも持っています。CVTしかできないから仕方なく使っているというわけではないからです。
質問にあるように、CVT独特のダイレクト感に乏しいフィーリングや特有の作動音に違和感を覚えた人も少なくないでしょう。これらはご指摘のとおり構造上しかたがないものなのですが、最近のモデルではこうした弱点はかなり改善されています。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。