ポルシェ911 GT3(後編)

2022.11.03 あの多田哲哉の自動車放談 多田 哲哉 高い関心をもって長年ポルシェのスポーツカーを見つめてきた、元トヨタのチーフエンジニア多田哲哉さん。プロの技術者が一目を置く、このメーカーならではのクルマづくりとは?
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慎重かつ継続的なエボリューション

さて、新しい「911 GT3」最大の技術的特徴は、ルマンなどのレースを戦うミドシップレーシングカー「911 RSR」に由来するダブルウイッシュボーン式サスペンションが採用されていることだ。

「実は、新技術の市場導入にはとても慎重なところも、ポルシェの特徴ですね。フロントのダブルウイッシュボーンサスペンションなんてものは、他社からすれば、以前から普通にあるわけです。ポルシェもずっと昔から開発していたはずですが、市場にはこうして時間をかけて、熟成に熟成を重ねて投入するんです」

考えてみれば、911のフロントサスペンションは、それこそ1960年代の初代、ナローの時代からずっとストラット式だった。今回のGT3はいわば歴史的転換でもあるわけだ。

「もっとも、たぶん来年にはさらに進化しますよ(笑)。サスペンションの取り付け点を微妙に動かしたりして、さらに良くなっているはずです。そして、ポルシェのお客さんは毎年、それを喜んで買うわけです」

「トヨタの常識からすると『そんなところまで1年かそこらで変えちゃうの?』と思ってしまう部分を、ポルシェは平気で変えてきます。現行モデルで手を抜いているとは言いませんが、おそらく数年くらいのスパンで、なにをいつどう変えるかという緻密な計画があるんだと思います」

「一方で、われわれ日本の自動車エンジニアは毎回、“やり切った感”を重視します。そうでないと上司から怒られます(笑)。『そこは、これは、来年の一部改良にしておきましょう』などと言ったら、間違いなくどやされます」

 
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