SUV人気はいつまで続く? ブームの始まりと終わりについて考える
2023.08.24 デイリーコラムブームが日本独自のカルチャーを生む?
「今日流行(はや)ったものも明日には消える」という司会者ハイジ・クラムの決めぜりふで始まる、アメリカのファッションリアリティーショー『Project Runway』。過去を振り返ってみればファッションだけでなくクルマの世界でもさまざまな流行が巻き起こり、そして消えていった。今回はそんないくつかのブームを懐かしさとともに再考する。
白がまぶしかったハイソカーブーム
バブル前夜の昭和の時代、西暦にすれば1980年代前半に突如巻き起こったのが、ハイソカーブームだ。ハイソカーなる造語は「ハイソサエティーカー」の略とされ、ハイソサエティー、つまり上流階級向けのクルマ=高級車を指していた。歴史と伝統ある本格的なラグジュアリーカーではなく、少し高級でお金持ちっぽく見えるクルマの総称であったように思う。
その先鞭(せんべん)をつけたのが、1981年に登場した「トヨタ・ソアラ」といわれている。日本にも世界に誇れる高級車が誕生したと話題になり、世の中の上昇志向とリンクするように“ステータスシンボル”と呼ばれる高価格車にスポットが当たった。
そこから「クラウン」や「マークII」「チェイサー」「クレスタ」のいわゆるマークII三兄弟に火がついた。「コロナ」や「ブルーバード」といった大衆的なモデルではなく、「セリカ」や「シルビア」「ガゼール」などの若者向け2ドアクーペでもない、少しセレブの香り漂う大人向けの4ドアモデルに人気が集まったのだ。
それらの車種ではホワイトのボディーカラーが圧倒的に支持された。トヨタでは純白に近い「スーパーホワイト」を4代目マークIIや7代目クラウンに設定。それはさらに白さを追求した「スーパーホワイトII」に進化し、採用モデルを徐々に拡大していった。最終的にスーパーホワイトはIVまで発展した。
ハイソカーブームは折からのバブル経済を追い風にして平成にも継続。しばらくして「シーマ現象」なる言葉も生み出した「日産シーマ」や「トヨタ・セルシオ」などが憧れの対象となった高級車ブームへとつながっていった。
よりクラス感と価格の高いモデルが新たに登場すると人々の目は自然とそちらに移り、バブル崩壊後にフルモデルチェンジされた8代目マークIIにかつてほどの勢いはなかった。マークIIは9代目が最終モデルとなり、起死回生を図って車名を変更した「マークX」も2019年に2代限りで短い歴史の幕を閉じた。その後、セダンが冬の時代を迎えて久しいのはご存じのとおりである。
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速いヨンクがステーションワゴンブームをけん引
日本で人気のステーションワゴンといえば? との質問に、おそらく多くのカーマニアは「スバル・レヴォーグ」と答えるだろう。レヴォーグは、綿々とステーションワゴンをつくり続けてきたスバルの伝統を守る日本市場向けのモデルとして2013年に誕生。今日では日本ブランドで唯一のステーションワゴン専用モデルである。
その前身となるのが「レガシィ」だ。こちらはスバルの昭和を支えた「レオーネ」の後継モデルとして1989年に発表された。レオーネを含めそれまで多くのステーションワゴンは4ナンバー商用バンの乗用車版としてラインナップされていたが、レガシィに商用バンはなく、ステーションワゴン専用(セダンもあり)として販売されたのが画期的だった。
昭和の時代にもステーションワゴン愛好家は少なからず存在していた。クラウンやマークIIをはじめ、日産の「セドリック」「グロリア」「スカイライン」などにもステーションワゴンが用意されていた。しかし、多くのモデルは前述のとおり商用バンとボディーを共用していたため、人気はイマイチ。ツウが選ぶ車種だった。
それを払拭(ふっしょく)したのがレガシィである。レガシィが火付け役となったステーションワゴンブームにはセダンベースのバリエーションではない「トヨタ・カルディナ」や「日産アベニール」が加わり、オーストラリアで製造された「三菱マグナ」やアメリカで製造された「ホンダ・アコードワゴン」などの逆輸入車も脚光を浴びた。
最高出力200PSの水平対向4気筒ターボエンジンと4輪駆動を組み合わせたレガシィがステーションワゴンブームをけん引したことに異論はないが、個人的にはバブル期に、カタカナ職業と呼ばれたデザイナーやカメラマンといったフリーランスや自営業者、マスコミ関係者らが好んでいたメルセデス・ベンツやBMW、ボルボのステーションワゴンを所有するような欧米的価値観に憧れたライフスタイルが引き金になったと感じている。当時人気だったトレンディードラマの主人公が乗っていたクルマや、洗練された都会の生活といった世界観も大いに影響していたと思う。
ブームの最盛期には、コンパクトカーやハッチバック車も〇〇ワゴンと称して販売され、何にでもワゴンとつければクルマが売れた時代もあった。しかしいつしかそれは多くの人が乗れ、より荷物を積めるミニバンブームへと移行。2023年8月現在国内でステーションワゴンを製造・販売している日本ブランドは、スバル(1モデル)とトヨタ(2モデル)、マツダ(1モデル)のみとなった。
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全世界的なSUVブームはいつまで続くのか
日本にとどまらず全世界を巻き込み、現在進行中なのがSUVブームである。ジープやランドローバーといった老舗はもちろん、メルセデス・ベンツやBMW、ポルシェといったドイツ勢、フェラーリやランボルギーニ、アストンマーティン、ロールス・ロイス、ベントレーなど、これまでSUVとは無縁と思われたブランドまでもがSUVをラインナップしている。ざっと見まわして、日本に正規輸入されている有名どころでSUVを設定していないのは、アバルトとアルピーヌ、そしてマクラーレンぐらいではないか。ブームとひとことで片づけるには難しいほど、SUVのカテゴリーは成長が著しい。
SUVとひとくくりにされているものの、そのモデルは多種多様。大きくは1:本格クロスカントリーモデル、2:乗用車系プラットフォームを用いたSUV(現在はこれがメインストリームとされる)、3:クロスオーバーSUVの3つに分けられそうだ。
しかもその3つのカテゴリーにそれぞれ軽/コンパクト/ミドル/フルサイズというセグメント違いのモデルや、クーペ、オープンモデル、3列シート車、ラグジュアリーモデル、ハッチバック車やステーションワゴンの車高を引き上げたモデルなどもあり、バラエティーは実に豊か。選ぶのに迷わないほうが不思議である。
SUVという呼び名がいち早く定着した北米では、1960年代からすでにピックアップトラックと人気を二分するホットなカテゴリーだったといえる。それが世界的なものとなったのは、「BMW X5」(2000年)と「ポルシェ・カイエン」(2002年)の登場以降だろうか。日本では1994年にデビューした「トヨタRAV4」や「ホンダCR-V」を火付け役とする向きもあるようだが、両モデルとも一時的にではあるが日本市場から姿を消したことを忘れてはいけない。
季節や天候に左右されない走破性、多くの荷物が積める実用性、力強いフォルムなど、SUVがウケている要因はいくつも想像できる。また、つくり手となるメーカーに、多くのメリットをもたらす点も見逃せない。大きなボディーにはゆとりがあるため設計がしやすく、付加価値があり人気も高いのでコンパクトカーやセダンよりも利幅を確保しやすいのだという。さらにSUVであれば大量のバッテリーを(乗用車よりは)積みやすいので、電動化モデルとの親和性も高いといえる。
このまま電動化の波に乗れば、SUVはブームを超えてメインストリームに躍り出る存在になるかもしれない。子供のころにクルマの絵を描くとそろって3ボックスのセダンになったものだが、いまどきであればそれはSUVっぽいフォルムになるという。世の中が〇〇クロスだらけになって、飽きられないといいのだが。
(文=櫻井健一/写真=トヨタ自動車、日産自動車、スバル、本田技研工業、三菱自動車、BMW、ポルシェ/編集=櫻井健一)
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櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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