センターコンソールって必要ですか?

2023.11.07 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
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自動車のコンセプトモデルでは、前席間のセンターコンソールがなく、左右にウオークスルーできるくらいすっきりとしているものが多く見受けられます。ということは、それが理想なのかな……と思うのですが、現実はといえば、カップホルダーや小物入れのある立派なセンターコンソールが主流です。この部分にドライブシャフトが通っているとも限らないのに、なぜでしょう? ユーザーニーズを反映してのことでしょうか。

たしかに、センターコンソールにはもともと“ドライブシャフトのボロ隠し”ともいえる役割がありました。そこに、ちょっとした物を置くなどさまざまなアイデアが盛り込まれて、“車内の一等地”としての使い方が定まってきたという経緯があります。

ご指摘のとおり、今はフラットフロアが主流になり、メカニズム的にはセンターコンソールが必要ではないケースも多々あります。とはいえ、仮になくしてしまったら、これまでそこに置いていたモノをどこに収納したらいいのか? という問題が出てきます。

ドライバーの手の届く範囲ということで、メーターパネルの付近を“置き場”にしたとすると、今度は「急な加減速やコーナリングの際に収納物が飛んできて危ない!」という議論になります。だからといって、ふたを付けたら使い勝手が悪くなる。「万が一の際、モノが飛散して乗員に危害を加えることのないようにしなければならない」という規則は、現実には多くの国で設けられていて、運転席まわりのつくりにはけっこう縛りがあるのです。

その点、センターコンソールというのは物の置き場として絶妙です。ドライバーに近く、すぐに手が伸ばせる実にいい位置にありますから……。乗員をはさんで反対側のドア側はどうかというと、こちらは側突(横からの衝突)への安全性確保から条件が厳しく、さほど自由な設計ができません。

センターコンソールをなくしてウオークスルーも可能なデザインにするというアイデアは、いつの時代もデザイナー側から提案されるものですが、(絶対に安全といえるだけの)完璧な自動運転が確立されるまでは、利便性と安全性を両立させる今のスタイルは続くだろうと思います。

多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。