BMW X5 xDrive50e Mスポーツ(4WD/8AT)
BMWの神髄 ここにあり 2023.12.09 試乗記 「BMW X5」の最新モデルから「xDrive50e Mスポーツ」をピックアップ。伝家の宝刀である直6ユニットに強力なモーターと大容量の駆動用バッテリーを組み合わせた、リッチな電動パワートレインの魅力をリポートする。「45e」から「50e」へ
現在、日本で買えるBMWのプラグインハイブリッド車(PHEV)はMブランドの「XM」も含めると4モデル。外観的な識別点に乏しいこともあって認識が薄かったが、直近でいえばG30系「5シリーズ」の販売の過半を「523d」とともに占めていたのが「530e」だったというから、実は結構な数が走っていることになる。普通充電のみの対応ではあるものの、乗る時間や距離がある程度定まっている都市部のユーザーにとっては、環境負荷的にもランニングコスト的にも効率よく乗れるBMWということになるのだろう。
が、530eと、その下位にあたる「330e」に搭載される内燃機はB48型の2リッター直4ユニットだ。あるいは、Mが手がけるXMは純然たるM銘柄だけにS68型の4.4リッターV8を搭載している。いかにもBMWらしいストレート6を搭載するPHEVはどれかといえば、B58型を搭載するこのX5ということになる。
G05系X5は、2023年春にBMWが言うところのライフサイクルインパルス(LCI)、つまりビッグマイナーチェンジを受けているが、その際にPHEVのグレードは「45e」から「50e」へとアップデートされている。その内訳は内燃機側のパワーが286PSから313PSへと27PS向上。モーターも112PSから197PSと、85PSも向上した。結果、総合アウトプットは394PS/600N・mから489PS/700N・mとひと回り以上はパワフルになり、例えば0-100km/h加速は5.6秒から4.8秒と動力性能には歴然とした差異がもたらされている。
一方で搭載バッテリー容量の拡大と効率向上も相まって、EV走行換算距離はWLTC値で最大110kmと、45eに対して2~3割ほど延長された。その際の最高速は140km/hと、日本の高速道路なら追い越しも含めた能力が十分担保されている。ちなみにバッテリーの容量は29.5kWhと、数値的にはXMが搭載するそれと同じだ。普通充電のみの対応となるため、日本の200V・3kW仕様であれば空からの満充電には10時間程度は要することになるだろう。
端々に感じるエクストラパワー
ヘッドライトやバンパー形状、その塗り分けなどが奏功してか、LCIで精悍(せいかん)な顔立ちとなったX5。試乗車はMスポーツということもあってなおのこと顔圧が高いが、昨今のBMWのデザインからすれば望外に整って見える。「7シリーズ」やそれこそXMのようなパンクスには付き合っていられないというトラッドなファンも、これなら納得ではないだろうか。
50eは荷室床面に駆動用バッテリーを搭載する関係で、2列シート・5人乗りのみの設定となる。3列目シートは実際にはオケージョナルユースに限られるほど小さく、頻用する向きはおのずと「X7」を選ぶことになるだろうから、選択肢面での影響は小さいだろう。5人乗りとして使うぶんには、パッケージ的な制約は限りなく小さい。ドライブシャフトが前後に通されるフロア構造でありながら、うまくレイアウトしているものだと思う。
撮影場所の箱根方面までは東京からだと約100km。額面どおりであれば、モーターのみで走行できる上限に近い。というわけで最初は一般道から東名高速へと乗り入れて、淡々とモーターのみで走ってみる。動力性能はスペックから推する以上に快活で、一般道では何ら物足りないところはない。前型の45eでは住宅街や駐車場など、極低速で取り回す際に上り坂が絡むなどすると推進力に心細さを感じるところもあったが、それも解消されている。
際立つ乗り心地のよさ
Mスポーツがゆえに履くタイヤは前後異幅にして、そのサイズは「X5 M」ほどではないにせよ十分に大径で幅広い。動力性能的にもこの程度のキャパは必要かもしれないとは思うものの、車重が2.5tに達するとあらば、乗り心地的な加点要素は一切ないわけだ。しかしエアサスを標準装備することもあってか、50eの乗り心地はそういう巨漢ものとは思えないほどに洗練されている。小さな凹凸はさらりといなしつつ大きな凹凸はしかと受け止め、目地段差のような鋭利な突起でもカンカンと硬質なフィードバックが目立つことはない。そして入力音のみならず、ロードノイズの類いもしっかり整理されていることは、高速でもモーターで走行できるPHEVがゆえになおさら分かりやすく伝わってくる。ことランフラットの履きこなしにおいては、やはりBMWの右に出る者はなしということだろう。
モーター走行のみの「エレクトリック」モードや、内燃機との協調制御が加わる「ハイブリッド」モードなどを試しつつ御殿場インターチェンジにたどり着くころ、ほぼ満充電から走り始めた50eのバッテリーはちょうど空になりつつあった。センターコンソール内にはバッテリー残量をホールドするボタンも配されているので、山道用をキープしつつ高速を降りる。電費的に厳しい高速巡航をこの巨体で、しかも登坂基調な東京~御殿場間の下り方面で走ってみての電池の減り具合としてみれば、効率的には想像以上にアテにできそうな印象だ。
山坂道をどうこうというクルマではないことは承知のうえで、ちょっと流してみようかという気になったのは、以前乗ったXMの印象が鮮烈すぎたからだ。顔面波動砲のような風体にしてX5よりも明らかにひと回りは大きく重い巨艦が、それこそ拡散するどころかコーナーのインにガッツリ食い込んでグリグリと曲がっていく、その物理的な異様さが驚異として頭に残っている。
効率だけではない魅力
そのXMのメカニズム的な元ネタともいえるこの50eは、果たしてどんなキャラクターなのか。それを確かめるべく上がった山で見せてくれたのは、XMとは一線を画する穏やかな身のこなしだった。さすがにコンタクト感はXMほどではないにせよ、そのぶん低い速度域からロールやバウンドの動きにリアリティーがある。自重が自重だけにヒラヒラとまではいかないが、身の翻しも明らかに軽快だ。モーターと内燃機の協調という点においては、やはり直6という形式の効能は大きい。始動時のトルク変動による段付き感も極小に抑えられ、そこからの吹け上がりもモーターの滑らかさときれいにつながっている。
X5において、直6ガソリンの選択肢はこの50eのみ。一方で高負荷や長距離などこのクルマらしいヘビーデューティーな扱いは、50eより若干安い設定の直6ディーゼルである「35d」のほうが間違いなく向いている。自宅や勤務先に充電環境があり、平時の移動距離をモーター走行で賄える。それが50eを効率的に使う大前提となるだろう。
ただしそれがクリアできるなら、50eは効率だけではないさまざまなプラスアルファをもたらしてくれるのも確かだ。モーターと内燃機の滑らかな連携からの、中間加速域でのグイッと車体を押し込んでくれる力強いアシストは生の内燃機では味わえない感触だ。そして、そこから高回転域に向けての加速の伸び、そこにシンクロするサウンドは直6ガソリンならではの快感に満ちている。
もはやそんな時代ではないという方もずいぶんといらっしゃるだろう。でも、やっぱりBMWの神髄は直6ガソリンにある。器がPHEVであってもそう思わせるのだから、やはり内燃機の個性というのはやすやすと代替できるものではない。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
BMW X5 xDrive50e Mスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4935×2005×1770mm
ホイールベース:2975mm
車重:2500kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:313PS(230kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)/1750-4700pm
モーター最高出力:197PS(145kW)/7000rpm
モーター最大トルク:280N・m(28.6kgf・m)/100-5000rpm
システム最高出力:489PS(360kW)
システム最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)
タイヤ:(前)275/45R20 110Y/(後)305/40R20 112Y(ピレリPゼロ)
ハイブリッド燃料消費率:10.1km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:110.3km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:110km(WLTCモード)
交流電力量消費率:307Wh/km(WLTCモード)
価格:1260万円/テスト車=1444万円
オプション装備:ボディーカラー<フローズンピュアグレー>(41万3000円)/BMWインディビジュアル レザーメリノ<タルトゥーフォ×ブラック>(0円)/BMWインディビジュアル フルレザーメリノパッケージ(35万2000円)/ファーストクラスパッケージ(90万4000円)/インテグレーテッドアクティブステアリング(17万1000円)/Mアルカンターラアンソラジットルーフライニング(0円)
テスト車の年式:2023年型
テスト車の走行距離:4523km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:301.2km
使用燃料:24.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.1km/リッター(満タン法)/12.7km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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