クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

ロイヤルエンフィールド・ショットガン650(6MT)

ショットガンをぶっ放せ! 2024.01.19 試乗記 河野 正士 ロイヤルエンフィールド(以下RE)から、650ccクラスの空冷2気筒エンジンを搭載した「ショットガン650」が登場。“ボバー”的なカスタムスタイルを身にまとうニューモデルは、肩ひじ張らずに楽しめる完成度の高いロードスポーツに仕上がっていた。
【webCG】もっと高く買い取ってもらえるかも? おすすめのバイク一括査定サイト5選

兄弟モデルとは全然違う

プラットフォームを共有しながら、これほどまでにバイクのキャラクターを変えられるものなのか。それがREの新型車、ショットガン650の試乗を終えた感想だ。いや正確には、車体に跨(また)がったときにも、クラッチをつないで走り始めた瞬間にも、そう感じていた。

驚きの原因は、プラットフォームを共有するモデルが2023年春に日本でもデリバリーが開始されたクルーザーモデル「スーパーメテオ650」だったからだ。確かにスーパーメテオ650は、クルーザーとしてはコンパクトな車体と、270°クランクを採用したパラレルツインエンジンの小気味よい出力特性によって、キビキビと走るロードスター的要素も持っていた。しかしショットガン650は、前後のホイールサイズとサスペンション、それに合わせてフロントまわりのアライメントを調整したことで、完全なるロードスポーツモデルへと変貌を遂げていたのだ。

ロードスポーツと説明すると、ネイキッドスポーツやスーパースポーツをイメージするかもしれないので、もう少し突っ込んでショットガン650のスポーツ性を表現すると、それは“アメリカンスポーツ”と表現したほうがいいだろう。クルーザーモデルの血を受け継ぎながら、ワインディングロードもガンガンに走れる。ショットガン650は、そんなモデルだったのだ。

2023年12月に発表された「ロイヤルエンフィールド・ショットガン650」。「スーパーメテオ650」をベースとしたロードスポーツモデルで、独自の足まわりによりスポーティーな走りを実現している。
2023年12月に発表された「ロイヤルエンフィールド・ショットガン650」。「スーパーメテオ650」をベースとしたロードスポーツモデルで、独自の足まわりによりスポーティーな走りを実現している。拡大
エンジンは、ベース車と同じ排気量648ccの空冷並列2気筒SOHC。「コンチネンタルGT650」や「INT650」にも使われる、ロイヤルエンフィールドではおなじみのパワーユニットだ。
エンジンは、ベース車と同じ排気量648ccの空冷並列2気筒SOHC。「コンチネンタルGT650」や「INT650」にも使われる、ロイヤルエンフィールドではおなじみのパワーユニットだ。拡大
創業は英国で1901年と、非常に長い歴史を誇るロイヤルエンフィールド。現在はインドを拠点としており、特に350~650ccクラスの中排気量モデルを得意とする。
創業は英国で1901年と、非常に長い歴史を誇るロイヤルエンフィールド。現在はインドを拠点としており、特に350~650ccクラスの中排気量モデルを得意とする。拡大

走りのために足まわりを刷新

ショットガン650では、そのスポーティーなフィーリングを実現するために、前後の足まわりを完全につくり替えている。ホイールはフロント:19インチ、リア:16インチだったスーパーメテオ650から、フロント:18インチ、リア:17インチへと変更。フロントフォークは、左右でダンパー機能、スプリング機能を分け、ビッグピストンによる高い減衰特性を実現するSHOWAの「SFF-BP」であることはベース車と同じだが、フォークそのものを30mm短くし、内部にセットするスプリングや減衰力の設定も車両特性に合わせて変更している。ステアリングヘッドとフロントフォークの距離を示すフロントフォークオフセットは4mm短い42mmとし、それによってトレールは17.1mm短い101.4mmとなっている。

いっぽう、リアショックはスーパーメテオ650より30mm長くなり、ストローク量は7mm増えている。もちろん、その変更に合わせてスプリングレートや減衰圧特性も変更された。

それらスーパーメテオ650からのセッティング変更によって、ショットガン650の車体姿勢は、フロントからリアに向けて優雅に下るクルーザー的シルエットから、水平またはやや前下がりのネイキッドスポーツおよびロードスポーツ的なシルエットへと変化。またリアの車高を上げることで車体全体の重心も上がっている。これらの変化をざっと聞くだけでも、ショットガン650にスポーティーなハンドリングが与えられていることが容易に想像できるのだ。

試乗会の舞台となったのは、米ロサンゼルス。ロイヤルエンフィールドは数カ月前にも米国で「スーパーメテオ650」をローンチしており、本格的な海外進出をもくろむ彼らの気合が感じられる。
試乗会の舞台となったのは、米ロサンゼルス。ロイヤルエンフィールドは数カ月前にも米国で「スーパーメテオ650」をローンチしており、本格的な海外進出をもくろむ彼らの気合が感じられる。拡大
サスペンションは前後ともにSHOWAのもので、前がφ43mmの倒立フォーク(トラベル量120mm)、後ろが5段階のプリロード調整機構付きツインショック(トラベル量109mm)となる。タイヤサイズは前が100/90-18、後ろが150/70R17で、印シアット製のツアラー向けタイヤが装着される。
サスペンションは前後ともにSHOWAのもので、前がφ43mmの倒立フォーク(トラベル量120mm)、後ろが5段階のプリロード調整機構付きツインショック(トラベル量109mm)となる。タイヤサイズは前が100/90-18、後ろが150/70R17で、印シアット製のツアラー向けタイヤが装着される。拡大
ブレーキは印バイブレ製で、前にφ320、後ろにφ300のシングルディスクを装備。キャリパーはともにフローティングマウントの2ピストンだ。他のロイヤルエンフィールドの最新モデルと同じく、2チャンネルABSが標準装備される。
ブレーキは印バイブレ製で、前にφ320、後ろにφ300のシングルディスクを装備。キャリパーはともにフローティングマウントの2ピストンだ。他のロイヤルエンフィールドの最新モデルと同じく、2チャンネルABSが標準装備される。拡大

軽快なコーナリングと高い安定性

冒頭で触れたように、ショットガン650は跨がっただけでスーパーメテオ650からの変化が感じられた。サイドスタンドから車体を起こし、シートに腰を据えた際に感じられる車体の反応に、早くも違いを感じたのだ。

そしてタイヤが転がり始めると、ハンドル操作に対するフロントタイヤの反応のよさ、ライダーが重心を移動した際の挙動の変化などから、交差点をクリアするたび、加減速したりライン取りを変えたりするたびに、その軽快なレスポンスを強く感じることができた。フロントタイヤがライダーの近くに感じられ、コントロールしやすいことにも驚いた。こりゃスーパーメテオ650と全然違う乗り物だぞと覚悟が決まり、同時に期待感が高まっていった。

その期待は、ワインディングロードでも裏切られることはなかった。フロントタイヤが狙ったラインよりちょっと外側にいくスーパーメテオ650に対し、ショットガン650はまさに狙ったラインどおり。コーナーに向けて減速し、フロントにしっかり荷重をかけると、フロントタイヤがどんどん向きを変えていく。ステップがライダーに近いミッドコントロールなのでライディングポジションはスポーティーになったものの、ステップはすぐに地面に接地してしまう。しかし、そうした状態でも車体の安定感は高い。うねりのあるコーナーで予想よりサスペンションが速く、大きく動いてしまったときなども、サスペンションとフレームが挙動をうまく吸収し、安定が大きく損なわれることはない。

シート高は「スーパーメテオ650」より55mmも高い795mmだが、それでも足つき性は悪くない。身長170cmの筆者の場合、ご覧のとおりべったりと足が接地する。
シート高は「スーパーメテオ650」より55mmも高い795mmだが、それでも足つき性は悪くない。身長170cmの筆者の場合、ご覧のとおりべったりと足が接地する。拡大
計器類は「スーパーメテオ650」と同じで、アナログ式の速度計と、シフトインジケーターや燃料計、トリップメーターなどの機能を統合した小型ディスプレイで構成される。右に備わるのはトリッパー(矢印表示の簡易なナビゲーションシステム)のディスプレイで、専用アプリの入った携帯端末をつなぐことで使用できる。
計器類は「スーパーメテオ650」と同じで、アナログ式の速度計と、シフトインジケーターや燃料計、トリップメーターなどの機能を統合した小型ディスプレイで構成される。右に備わるのはトリッパー(矢印表示の簡易なナビゲーションシステム)のディスプレイで、専用アプリの入った携帯端末をつなぐことで使用できる。拡大
「ダウンタウンの市街地でもワインディングロードでも、ハイウェイでも優れたハンドリングを実現する」ことを目標に開発されたという「ショットガン650」。ミッドコントロールのライディングポジションも、人間工学を追求したものとなっている。
「ダウンタウンの市街地でもワインディングロードでも、ハイウェイでも優れたハンドリングを実現する」ことを目標に開発されたという「ショットガン650」。ミッドコントロールのライディングポジションも、人間工学を追求したものとなっている。拡大
ベース車とは趣を異にするスタイリングも「ショットガン650」の魅力。燃料タンク、サイドカバー、リアフェンダー、ヘッドライトナセルともにオリジナルデザインである。
ベース車とは趣を異にするスタイリングも「ショットガン650」の魅力。燃料タンク、サイドカバー、リアフェンダー、ヘッドライトナセルともにオリジナルデザインである。拡大
フローティング式のシングルシート。アクセサリーで、キャリアとしても使えるタンデムシートキットも用意される。
フローティング式のシングルシート。アクセサリーで、キャリアとしても使えるタンデムシートキットも用意される。拡大
“ボバー”とは、余計なものをそぎ落として軽量化を図る往年のカスタムスタイルだ。「ショットガン650」には、そうしたカスタムモデルが持ち合わせていた意匠と走りが、現代風に解釈して取り入れられていた。
“ボバー”とは、余計なものをそぎ落として軽量化を図る往年のカスタムスタイルだ。「ショットガン650」には、そうしたカスタムモデルが持ち合わせていた意匠と走りが、現代風に解釈して取り入れられていた。拡大

「こちらが本家では?」と思わせる完成度

2021年の「EICMA」(ミラノモーターサイクルショー)で発表された「SG650コンセプト」は、“ボバー”と呼ばれるカスタムスタイルをまとっていた。その市販バージョンであるショットガン650は、トップブリッジやアンダーブラケットと一体化して見えるヘッドライトナセルに、フローティングしたシングルシート、REのクラシックモデルからインスピレーションを得たという、スーパーメテオ650とは異なる外装類など、カスタムバイク的要素が各所にうかがえるものだった。

同時に走りのパフォーマンスにも、ボバースタイルのカスタムバイクが本来持つスポーツ性を現代的に解釈して盛り込んできた。その走りとスタイリングに見る完成度の高さや、SG650コンセプトの発表のタイミングから、「REの650モデルは、本当はショットガン650が先にあって、後でツーリングカテゴリーが派生したのではないか?」と、試乗を終えた他国のジャーナリストと話が盛り上がったほどだ。

ショットガン650は、目を三角にしなくても楽しめるスポーツバイクだ。ここ最近、そんなバイクはなかなか見当たらないのではないか。そして、そんなバイクを待ち望んでいるライダーは少なくないはずだ。日本導入の暁には、この希有(けう)な一台を是非に味わっていただきたい。

(文=河野正士/写真=ロイヤルエンフィールド/編集=堀田剛資)

ロイヤルエンフィールド・ショットガン650
ロイヤルエンフィールド・ショットガン650拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2170×820×1105mm
ホイールベース:1465mm
シート高:795mm
重量:240kg
エンジン:648cc 空冷4ストローク直列2気筒SOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:47PS(34.6kW)/7250rpm
最大トルク:52.3N・m(5.3kgf・m)/5650rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:--円

河野 正士

河野 正士

フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。

試乗記の新着記事
  • BMW 220dグランクーペMスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.9.29 「BMW 2シリーズ グランクーペ」がフルモデルチェンジ。新型を端的に表現するならば「正常進化」がふさわしい。絶妙なボディーサイズはそのままに、最新の装備類によって機能面では大幅なステップアップを果たしている。2リッターディーゼルモデルを試す。
  • ビモータKB4RC(6MT)【レビュー】 2025.9.27 イタリアに居を構えるハンドメイドのバイクメーカー、ビモータ。彼らの手になるネイキッドスポーツが「KB4RC」だ。ミドル級の軽量コンパクトな車体に、リッタークラスのエンジンを積んだ一台は、刺激的な走りと独創の美を併せ持つマシンに仕上がっていた。
  • アウディRS e-tron GTパフォーマンス(4WD)【試乗記】 2025.9.26 大幅な改良を受けた「アウディe-tron GT」のなかでも、とくに高い性能を誇る「RS e-tron GTパフォーマンス」に試乗。アウディとポルシェの合作であるハイパフォーマンスな電気自動車は、さらにアグレッシブに、かつ洗練されたモデルに進化していた。
  • ボルボEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2025.9.24 ボルボのフル電動SUV「EX30」のラインナップに、高性能4WDモデル「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」が追加設定された。「ポルシェ911」に迫るという加速力や、ブラッシュアップされたパワートレインの仕上がりをワインディングロードで確かめた。
  • マクラーレン750Sスパイダー(MR/7AT)/アルトゥーラ(MR/8AT)/GTS(MR/7AT)【試乗記】 2025.9.23 晩夏の軽井沢でマクラーレンの高性能スポーツモデル「750S」「アルトゥーラ」「GTS」に一挙試乗。乗ればキャラクターの違いがわかる、ていねいなつくり分けに感嘆するとともに、変革の時を迎えたブランドの未来に思いをはせた。
試乗記の記事をもっとみる
関連キーワード
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。