メルセデス・ベンツE200ステーションワゴン アバンギャルド(FR/9AT)【試乗記】
旅に出たくなる 2024.03.30 試乗記 2リッター直4ガソリンターボに48Vマイルドハイブリッドシステム「ISG」を組み合わせた「メルセデス・ベンツE200ステーションワゴン」に試乗。メルセデスが綿々と進化させ続けてきた安全性と快適性、そして実用性を備える最新ワゴンの仕上がりやいかに。憧れのステーションワゴン
ステーションワゴン好きのひとりとしては、日本車の選択肢がきわめて少ないのはさびしいかぎりで、その点、輸入車はいろいろ選べるのがいい。なかでも、メルセデス・ベンツのEクラス ステーションワゴンは憧れの存在であり、買える、買えないはさておき、常に気になっているモデルである。
そんなEクラスがフルモデルチェンジにより6代目に生まれ変わり、2024年2月に日本でも販売がスタートした。うれしいのは、「W214」と呼ばれる新型「セダン」だけでなく、「S214」のステーションワゴンが同時に発売されたこと。これなら、ステーションワゴン待ちの人が「いつもセダンばかり優先しやがって」と恨み言をいわずにすむ。
日本でのデビュー当初、この新型Eクラス ステーションワゴンには、2リッター直4ガソリンターボを搭載する「E200ステーションワゴン アバンギャルド」と、2リッター直4ディーゼルターボを積む「E220dステーションワゴン アバンギャルド」の2グレードが設定されていて、そのどちらにも48Vマイルドハイブリッドシステムが採用されている。トランスミッションは9段ATの「9Gトロニック」が組み合わされ、後輪駆動を採用するのは2モデルに共通だ。ちなみに、新型Eクラスにはプラグインハイブリッドの「E350e」が用意されるが、こちらはセダンのみの設定となる。
今回はこのなかからガソリンモデルのE200ステーションワゴン アバンギャルドをメディア向け試乗会でチェックすることができた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
伸びやかなルーフがもたらす広い室内
先代のEクラス ステーションワゴンが全長×全幅×全高=4955×1850×1465mmというボディーサイズだったのに対し、新型は同4960×1880×1470mmとほんのわずか大きくなった。この数字は新型Eクラス セダンとまったく同じだが、ルーフが後方まで伸びるぶん、後席のヘッドルームにより多くの余裕が生まれているのは、ステーションワゴンを選ぶ理由のひとつになるだろう。
もちろん、使い勝手の良いラゲッジルームは一番の魅力であり、VDA方式の計測でセダンより75リッター広い615リッターのスペースを確保することに加えて、テールゲートが大きく開き荷物の出し入れがしやすかったり、天井近くまで積み上げれば、後席を畳まなくても大きな荷物を飲み込めたりするのが便利。その使いやすさに慣れてしまうと、もうセダンには戻れない。
新型Eクラス ステーションワゴンのエクステリアは、一新されたデザインにより存在感を強めたのが特徴だ。これまでメルセデスのエンジン車はラジエーターグリルが独立したデザインだったが、今度のEクラスはラジエーターグリルとヘッドランプの間をグロスブラックのパネルでつなぐことで、BEVの「EQE」などと似た雰囲気に仕上げられている。
リアビューにも特徴があり、テールランプに“スリーポインテッドスター”をイメージさせるデザインを取り入れたのが新しい。試乗会で見たときには「ちょっとやりすぎではないか?」と思ったが、そのあと、たまたま街で見かける機会があり、遠くからでも新型Eクラスとわかったときには、「このデザイン、やっぱり“あり”かも!?」と考え直した私である。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ガラスのダッシュボードがEクラスにも登場
新型Eクラスのインテリアも、なかなかのインパクトだ。「EQS」などに採用されるガラスでダッシュボードを覆うデザインが、この新型Eクラスで選べるようになったのだ。全車にオプション設定される「MBUXスーパースクリーン」は、EQSなどの「MBUXハイパースクリーン」とはデザインや仕様が異なる。そのぶん価格はお手ごろ。
一方、MBUXの世代は新型Eクラスのほうが新しく、サードパーティー製のアプリが利用可能になったり、オプションの「セルフィー&ビデオカメラ」を使用して、停車中にオンライン会議に参加したりすることもできる。メーターパネルが立体的に見える「3Dコックピットディスプレイ」もオプションで用意され、違和感なく3D映像が見られるのがとても不思議である。
さて、試乗するE200には2リッター直4ガソリンターボが搭載されている。旧型に比べて排気量は0.5リッター、最高出力は20PS増えて204PSを発生する。
組み合わされるマイルドハイブリッドシステムも進化し、旧型がベルト駆動のBSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)を採用していたのに対して、この新型ではISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)に変更。これはエンジンと9段ATの間にモーターを配置するタイプで、強化されたモーターは加速時に最大で23PS、205N・mのアシストを行う。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
加速は十分だが気になるところも
さっそく走りだすと、E200のガソリンターボは低回転から十分なトルクを発生し、電気モーターのアシストがあるぶん加速にも余裕がある。アクセルペダルを深く踏み込めば4500rpmあたりからさらに力強さが増す印象で、スポーティーな走りが楽しめる。マイルドハイブリッドシステムのおかげで、アイドリングストップからスムーズにエンジンが再始動するのも見逃せない点だ。
一方、気になるところもいくつかあり、たとえばエンジンから少しガサついたノイズが耳に届くし、低速でアクセルペダルを踏んだときの反応が一瞬遅れるのが少し不満だ。その点、同じマイルドハイブリッドシステムを搭載するディーゼルターボのE220dはより太いトルクを発生し、レスポンスも良好。ノイズレベルもこのガソリンと大きくは変わらず、もし27万円のエキストラを払うことや、ディーゼルエンジンが嫌でなければ、E220dを選択肢に加えることをお勧めしたい。
E200ステーションワゴンの乗り心地は少し硬めで、19インチのスポーツ系タイヤが荒れた路面でショックを伝えがちなのも要改善項目として提案したい。それでも十分快適なレベルに仕上がっているのは確か。高速走行時の直進安定性は申し分なく、素直なハンドリングもFRならではといったところだ。
これなら長距離移動も、ワインディングロードを駆け抜ける場面でも、楽しいドライブになること請け合い。このクルマがあれば、たくさんの荷物を積んで旅に出たくなる……新型Eクラス ステーションワゴンもそんな一台である。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツE200ステーションワゴン アバンギャルド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4960×1880×1470mm
ホイールベース:2960mm
車重:1910kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/5800rpm
エンジン最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1600-4000rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)
タイヤ:(前)245/45R19 102Y XL/(後)275/40R19 105Y XL(ピレリPゼロ)
燃費:13.9km/リッター(WLTCモード)
価格:928万円/テスト車=1208万4000円
オプション装備:メタリックカラー<オパリスホワイト>(16万1000円)/AMGラインパッケージ(50万4000円)/アドバンスドパッケージ(59万円)/レザーエクスクルーシブパッケージ(85万7000円)/デジタルインテリアパッケージ(40万4000円)/パノラミックスライディングルーフ(28万8000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:235km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】 2025.12.15 フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。
-
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.13 「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2025.12.10 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
-
フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.9 フェラーリのフラッグシップモデルが刷新。フロントに伝統のV12ユニットを積むニューマシンは、ずばり「12チリンドリ」、つまり12気筒を名乗る。最高出力830PSを生み出すその能力(のごく一部)を日本の公道で味わってみた。
-
NEW
車両開発者は日本カー・オブ・ザ・イヤーをどう意識している?
2025.12.16あの多田哲哉のクルマQ&Aその年の最優秀車を決める日本カー・オブ・ザ・イヤー。同賞を、メーカーの車両開発者はどのように意識しているのだろうか? トヨタでさまざまなクルマの開発をとりまとめてきた多田哲哉さんに、話を聞いた。 -
NEW
スバル・クロストレック ツーリング ウィルダネスエディション(4WD/CVT)【試乗記】
2025.12.16試乗記これは、“本気仕様”の日本導入を前にした、観測気球なのか? スバルが数量限定・期間限定で販売した「クロストレック ウィルダネスエディション」に試乗。その強烈なアピアランスと、存外にスマートな走りをリポートする。 -
GRとレクサスから同時発表! なぜトヨタは今、スーパースポーツモデルをつくるのか?
2025.12.15デイリーコラム2027年の発売に先駆けて、スーパースポーツ「GR GT」「GR GT3」「レクサスLFAコンセプト」を同時発表したトヨタ。なぜこのタイミングでこれらの高性能車を開発するのか? その事情や背景を考察する。 -
第325回:カーマニアの闇鍋
2025.12.15カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ベースとなった「トヨタ・ランドクルーザー“250”」の倍の価格となる「レクサスGX550“オーバートレイル+”」に試乗。なぜそんなにも高いのか。どうしてそれがバカ売れするのか。夜の首都高をドライブしながら考えてみた。 -
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】
2025.12.15試乗記フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。 -
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!?
















































