ジャガーFペースR-DYNAMIC HSE P400e(4WD/8AT)
ハロー&グッバイ 2024.08.24 試乗記 ジャガーブランド自体の電気自動車(EV)専業化が迫るなか、わが国では「Fペース」のモデルラインナップにプラグインハイブリッド車(PHEV)が登場。電気のパワーとともにジャガーのエンジンを心ゆくまで味わえる、「これまで」と「これから」の橋渡しにふさわしい一台である。SUV以外は生産終了
イングランド中部ウエストミッドランズの中心都市、バーミンガムから東のコヴェントリーを目指すと、郊外の工業団地の中にひときわ目立つ飛行機が舞い上がる大きなモニュメントが見えてくる。スピットファイア・アイランドと呼ばれるそのラウンドアバウトがジャガーのキャッスル・ブロムウィッチ工場の目印である。
第2次世界大戦中はスピットファイア戦闘機やランカスター爆撃機を製造していたキャッスル・ブロムウィッチ工場は、戦後自動車のボディーパネルメーカーの工場となり、ローバーやモーリス、ジャガーなどのボディーパネルを生産していた。ジャガーの主力生産拠点となるのは1990年代末にコヴェントリーのブラウンズレーン工場から基幹モデルの生産を移管されてからである。このキャッスル・ブロムウィッチで2024年5月の末に、最後の「XE」と「XF」、そして「Fタイプ」がラインオフした。ジャガーの内燃エンジンモデルの生産工場としてのキャッスル・ブロムウィッチはその歴史を終えたのである。
ご存じのように、ジャガーは電動化を進めるメーカーのなかでもいち早く、2021年春にEV専業のラグジュアリーブランドとして再出発することを決断し、その期日を2025年と明らかにしている。英国を代表するあのジャガーが本当に踏み切れるのだろうか? などといぶかしんでいる間に時は過ぎ、もうその日は目前だ。
ほぼ20年前に、私はオールアルミニウムボディーに生まれ変わった「XJセダン」(X350)が登場した直後のキャッスル・ブロムウィッチ工場を訪れたことがある。当時は巨額の資金をつぎ込んだ最新鋭工場を自慢していたのに、諸行は無常である。キャッスル・ブロムウィッチは間もなくお披露目される新型EVジャガーのボディープレス工場として模様替えされる予定だ。ちなみに当面生産が継続されるコンパクトSUVの「Eペース」とEVの「Iペース」はオーストリアのマグナ・シュタイヤーで生産されており、Fペースは「レンジローバー・ヴェラール」と一緒にソリハル工場で生産されている。
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期待のSUVだったが
2016年に発売されたクロスオーバーSUVのFペースは、世界各国の自動車アワードを受賞するなど好評を博し、ジャガーの世界販売台数も一時は20万台を視野に入れたほどだったが、直近2023年の世界販売台数はおよそ6万4000台である。かつて何度も崖っぷちに立たされたことを思えば、私などはまだいけるのではないか、少なくともアルファ・ロメオよりは健闘しているじゃないかと考えるが、JLRのもうひとつのブランドであるランドローバーは今ではざっくり50万台規模であり、それに比べるとどうしてもお荷物感が拭えない。それが早期の決断を促したということだろう。
2024年の秋ごろには公開されるという4ドアのラグジュアリーGTを含め、ジャガーは2025年には3車種のEVを発売する計画だが、そこまでの橋渡し役がミドルクラスSUVのFペースである。そのシリーズにせっかく追加された(2023年末に限定モデルとして導入され、2024年に本格的に発売)PHEVの「R-DYNAMIC HSE P400e」(1172万円)だが、前述のように残された時間はあまりなさそうだ。ちなみに2025年はジャガーブランド設立90周年にあたり、90周年記念モデルも発売されていることから来年まではなんとか大丈夫ではないだろうか。
エンジン走行でも洗練されている
P400eは2リッター4気筒ガソリンターボ(最高出力300PS/最大トルク400N・m)に142PSと278N・mを生み出すモーター(8段ATに内蔵)を組み合わせた4WDのPHEVで、システム最高出力は404PS、同トルクは640N・mを誇る。容量17.1kWhのバッテリーを積んでWLTCモードでのEV走行換算距離は68km、ただし普通充電のみに対応する。PHEVの4WDだけに車重は2270kgとなかなかのヘビー級だが、0-100km/h加速は5.3秒という俊足である。
基本の「ハイブリッド」モード(ほかに「EV」「セーブ」あり)で普通に走ると、積極的にモーター走行を優先させるようで当然ながらスムーズで静かだが、そのぶんバッテリー残量はみるみる減っていく。バッテリーをキープしたい場合はセーブモードを選んでできるだけエンジンを回しておけばいいが、その場合もまったくうるさくはない。それどころかFペースの直4ターボは進んで回したいと思わせるような爽快さでトップエンドまで滑らかに吹け上がる。ジャガーの「インジニウム」エンジンシリーズは直6ターボも素晴らしいが、4気筒も見事な出来栄えだ。
ハイブリッド車やPHEVのなかにはエンジンが始動すると途端にやかましく、ストレスを感じさせるものも多いが、さすがはジャガーというべきか、このあたりの配慮は抜かりなく、エンジンのオンオフに関わりなく優雅に気持ちよく走ることができる。これが消えてしまうのは(ランドローバーにはまだしばらく残るが)残念と言うほかない。
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優雅で俊敏
強力なシステム出力を受け止めるべく、21インチタイヤを履く足まわりは引き締まっており、ハンドリングは想像以上に俊敏で、車名どおりにダイナミックである。ドライブモードの「ダイナミック」を選択して荒れた山道を走ると、スロットルレスポンスが鋭すぎると思うほど野性味いっぱいの挙動を見せることもあるのでちょっと注意が必要だ。
いっぽうで乗り心地はフラットで路面への当たりは滑らかながら、奥のほうにコツコツとした硬質な突き上げをやや感じさせるのはいつもながらのジャガー流だ。スポーツマンたることは当然ながら、それでもスニーカーは履かず、常にジャケットを身に着けるという家訓(?)を忘れることはない。インテリアを含めて派手さはないが上質でスポーティーというジャガーの特徴が、SUVを特に好むマーケットで“押しが弱い”と受け止められたのかもしれないが、間もなくデビューするという超高級EVにもその美点は受け継がれるはずだ。
でもやはり、新生ジャガーを待ち望む期待よりも、このままつくり続けてもいいじゃないかという気持ちが勝るのである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ジャガーFペースR-DYNAMIC HSE P400e
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4755×1930×1665mm
ホイールベース:2875mm
車重:2270kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:300PS(221kW)/5500-6000rpm
エンジン最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2000-4500rpm
モーター最高出力:142PS(105kW)/3650rpm
モーター最大トルク:278N・m(28.4kgf・m)/1000-3750rpm
システム最高出力:404PS(297kW)/5500rpm
システム最大トルク:640N・m(65.3kgf・m)/1500-4400rpm
タイヤ:(前)265/45R21 104W M+S/(後)265/45R21 104W M+S(ミシュラン・ラティチュード ツアーHP)
ハイブリッド燃料消費率:10.8km/リッター(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:68km(WLTCモード)
EV走行換算距離:68km(WLTCモード)
価格:1172万円/テスト車:1325万7180円
オプション装備:ボディーカラー<カルパチアングレー>(15万円)/4ゾーンクライメートコントロール(13万3000円)/Wi-Fi接続<データプラン付き>(2万5000円)/ラゲッジスペースパーティションネット(4万5000円)/オールシーズンタイヤ(7000円)/エクステンデッドレザーアップグレード(36万円)/14ウェイ電動パフォーマンスフロントシート<ヒーター&クーラー、メモリー機能付き>(1万9000円)/リアシートリモートリリースレバー(9000円)/21インチスタイル“5105”ホイール<グロスブラック>(0円)/スライディングパノラミックルーフ(24万3000円)/プライバシーガラス(8万1000円)/ルーフレール<グロスブラック>(5万1000円)/コールドクライメートパック(12万8000円)/ジャガードライブコントロール<アダプティブサーフェスレスポンス付き>(3万1000円)/パワージェスチャールーフブラインド(1万6000円)/40:20:40分割可倒式リアシート<ヒーター、センターアームレスト、電動リクライニング機能付き>(18万円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(5万9180円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:3182km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:364.4km
使用燃料:38.8リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.4km/リッター(満タン法)/9.6km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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