BMW 120(FF/7AT)
青い空と白い雲 2024.12.26 試乗記 BMWの「1シリーズ」がフルモデルチェンジ。通算で4代目、前輪駆動(FWD)モデルとしては第2世代となる新型に与えられた開発コードはF70。エントリーモデルのエントリーグレード、すなわち「BMW 120」の仕上がりをリポートする。ある明け方の幸福なひと時
冬晴れの12月某日、BMW 120をwebCG編集部で受け取り、駒沢通りを走り始めると、その乗り心地のよさに感嘆した。う~む。こりゃ、いいクルマだ。ストローク感があって、ボディーがしっかりしていて、とっても静か。おまけにFWDであることを意識させない。リアがどっしりしていて、ステアリングフィールがRWDみたいにスムーズで、個人的にはコンパクトなFWDのキビキビ感が大好きではあるけれど、それとはまた趣の異なる、成熟というのか落ち着きというのか……、ある種の上質さを感じさせる。これぞ、バイエルンの主張するプレミアムコンパクトセグメントの一台。と書いちゃったほうが分かりやすいかもしれない。価格も478万円とプレミアムである。
この日は自宅まで乗って帰り、翌日の早朝4時半に山梨県の河口湖に向かう。かわたれどき、すいた首都高速の環状線の日本橋あたりの中高速コーナーを通過する。そのとき、駆けぬける歓(よろこ)び、フロイデ・アム・ファーレンをそこはかとなく感じる。それはしっとり、じんわりくる歓びで、もしかしたら見逃しちゃうレベルかも……。いや、私にも分かったくらいである。誰もがじんわりくるはずだ。
低重心で、4輪が接地しながらの旋回姿勢。ドライバーは横Gを軽く感じながら、その車中にあって、ああ、なんだかこのGの感じがいいなぁ、とか思う。コーナー出口が見えてくるとステアリングを戻してアクセルを開ける。そのときの加速感、モーターを含むパワーユニットのなめらかさのなんと心地よいことか。筆者は神の視点でもって車両の姿勢をイメージしつつドライブしている自分に、ふと気づく。バイク乗りにも共通するナルシシズム、というヤツかもしれない。オレって、分かってるなぁ。みたいな想像力を刺激する力をもっているからこそプレミアムであり、それでこそBMWなのである。
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速度が上がるほど快適に
首都高速4号線の高架で次々と現れる目地段差もなんのその。新型1シリーズのスタンダードに位置づけられる120は、「120 Mスポーツ」とは異なり、可変サスペンションの「アクティブMサスペンション」を備えていない。それでも、前:ストラット、後ろ:マルチリンクの純メカサスは、速度が上がるほどにいい仕事をこなす。
標準ホイールは17インチながら、試乗車はオプションの18インチを装着している。Mライトアロイホイールという名前のそれは、カッコいいけれど、17インチだったらタイヤの当たりがもうちょっとソフトだろう。とは思わせる。試乗車のタイヤは225/45R18サイズの「グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック6」で、高性能かつ電気自動車にも適したロードノイズの低さを特徴とする。静かなのはマイルドハイブリッド化のなせる業だろうけれど、イーグルF1の貢献もあるに違いない。
1.5リッターの直列3気筒DOHCターボは最高出力156PS/5000rpm、最大トルク240N・m/1500-4400rpmで、7段DCTに仕込まれた48Vマイルドハイブリッドシステムの電気モーターは20PSと55N・mを発生する。システム最高出力は170PS、最大トルクは280N・mを誇る。
「ノーマル」モードでフツーに走っていると、7段DCTはシフトのアップとダウンを繰り返し、内燃機関の回転数を2500rpm程度に抑え込む。加速時にはモーターのアシストもあるはずで、エンジンがうなりを上げることはほぼない。「スポーツ」モードに切り替えると、液晶画面が赤く発光する。
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フツーに走るだけで楽しい
細かい話ながら、フロントのキドニーグリルに刻まれた斜めのラインがダッシュボードにも反復されていて、その斜めのラインはノーマルモードだと控えめなブルーに彩られる。スポーツモードだと、このラインがBMW Mを象徴する鮮やかな赤とブルーに変わる。
とはいえ、全開時、3気筒エンジンを豪快に叫ばせても加速フィールは穏やかというべきで、加速性能うんぬんのクルマではないことを再認識する。河口湖周辺のちょっとしたワインディングロードを駆けぬけようというとき、エイペックスを過ぎてのフル加速時に物足りなさもちょっとある。
試乗車の車重は1480kg。オプションの電動パノラマガラスサンルーフを装備するため、20kg重い。なによりモーターと電池からなるマイルドハイブリッドシステムを搭載しているため、先代F40型「118i」の1390kgと比べると、サンルーフ分を差し引いても70kg重い。DCTは7段あるとはいえ、ギア比がコンチネンタル、全体で高めなこともある。歴代の「320i」や「520i」がそうであるようにコーナリングの際はファストイン・ファストアウトを心がけねばならない。
と書いておいてなんですけれど、タイムを競うわけでなし。フツーに走ることで得られるスポーティネス、フロイデ・アム・ファーレンを楽しむ。というのが新型120の味わい方の王道だと筆者は思う。RWDもFWDもない。なのにFWDであるがゆえの居住空間とハッチバックボディーによる多用途性、後席の背もたれを倒せば広がる荷室空間を確保しているところが大いなる美点である。
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3気筒でも爽やか
実は私、2019年にデビューした先代、初めてFWD化された1シリーズのハッチバックに試乗する機会を逸しております。それゆえ、先代F40型との比較については申し上げられない。実質ビッグマイナー版ともいえる新型F70は全長がヨーロッパ仕様の数値で42mm長くなり、全高が25mmだけ高くなっている。1800mmの全幅と2670mmのホイールベースは同一で、それというのもプラットフォームは継承しているからだ。ということは、長くなった全長のほとんどはスポーツカー的なとんがりノーズに使われている、と解釈できる。
ボディー剛性はさらに高くなり、フロントサスペンションのキャスター角を20%増しにして直進安定性を高めている。ブレーキは強力で、安心感が高い。渋滞時のストップ&ゴーの繰り返しの発進時に食いつくような感があって、トランスミッションがDCTであることが分かる。それもまた楽しからずや。
室内ではドライバーの眼前に大型の液晶スクリーンが鎮座し、センターコンソールにはシフトレバーにかえて、背の低いスイッチ式のギアセレクターが採用されている。
マイルドハイブリッド化はされたけれど、BMW 120は内燃機関を主動力源としている。そこがとってもいい。3気筒のそれは、高回転まで回すと4気筒よりも野性的なサウンドを発する。スムーズネスで4気筒にヒケをとるものではないところがバイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケ、BMWのBMWたるところで、その爽やかなフィーリングは青い空と白い雲をシンボルとするBMWの、まぎれもない一員だと思わせる。ヤングとヤングアットハートな方にオススメの佳作だ。
(文=今尾直樹/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝/車両協力=BMWジャパン)
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テスト車のデータ
BMW 120
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4370×1800×1465mm
ホイールベース:2670mm
車重:1460kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:156PS(115kW)/5000rpm
エンジン最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1500-4400rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)
モーター最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)
システム最高出力:170PS(125kW)
システム最大トルク:280N・m(28.6kgf・m)
タイヤ:(前)225/45R18 95Y XL/(後)225/45R18 95Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック6)
燃費:16.8km/リッター(WLTCモード)
価格:478万円/テスト車:561万7000円
オプション装備:ボディーカラー<ケープヨークグリーン>(0円)/テクノロジーパッケージ(31万3000円)/ハイラインパッケージ(25万円)/18インチMライトアロイホイール<Yスポーク・スタイリング975Mバイカラー>(10万1000円)/電動パノラマガラスサンルーフ(17万3000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1439km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:367.5km
使用燃料:24.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:14.8km/リッター(満タン法)/15.0km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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