モデルもお店もイメージチェンジ! ロータスの大変革を新しいショールームから俯瞰する
2025.01.23 デイリーコラム「新しい酒は新しい皮袋に盛れ」
2021年の「エミーラ」投入を皮切りに、続々と新世代商品群の展開を開始したロータス。第1弾となったエミーラこそ伝統的なピュアエンジンのミドシップスポーツカーだったが、その後に続くラージSUV「エレトレ」とラージセダン「エメヤ」は、ロータスの量販モデルでは初となる電気自動車(EV)だった。しかも、走りと機能の両面において電子デバイスを駆使した次世代ラグジュアリーカーに仕上げられていたことから、多くのファンを驚かせたことは記憶に新しい。
そのロータスは、今は新たなCI(コーポレートアイデンティティー)を掲げたショールームの展開も始めている。日本で最初の店舗となったのが、2025年1月にオープンしたばかりの「ロータス神戸」だ。その特徴と狙いを、ロータス カーズの担当者に尋ねた。
新CIを導入したロータス神戸は、外部からも展示車がよく見えるガラス張りのショールームを備える。オープンなイメージを受けたいっぽうで、ラグジュアリースポーツカーメーカーをうたうにしては、いささかシックとも思われた。なにしろ外観はグレー基調で、店舗に掲げられたロータスのロゴも落ち着いた色味なのだ。おなじみのロータスらしさを感じるのは、黄色ベースのサインのみ。インテリアもモノトーンを基調としたシックなもので、テーブルやイスなどの調度も同様のイメージでまとめられている。他のラグジュアリーブランドのショールームを思うに、新車価格が1500万円を超える高級車を並べるには、少々、地味ではないだろうか? この新CIの特徴と狙いは、どこにあるのだろうか。
新店舗づくりに力を注ぐメンバーのひとりである、ロータス カーズのイネス・グラス・リンジャー氏によると、新店舗のデザインをあえて控えめにしたのは、「店舗で最も輝く存在は、顧客とクルマでなくてはならないという思いから」だそうだ。ゆえにショールームはタイムレスなデザインとし、顧客の意識をクルマから奪うような調度品は一切排除したという。やや無機質に映る面もあるが、そこは花を飾るなどの控えめな演出で温かみも意識していくとしている。またリンジャー氏は、このショールームで重視しているものとして、“顧客体験”を筆頭に挙げた。
これまでとはターゲットも変わっていく
たとえばショールームのメインとなる車両展示スペースでは、自然光に近いライトを導入することで、展示車の色味をリアルに感じられるよう配慮。オープニングイベントで特別展示された「エメヤ ブロッサム」のように、見る角度によって色が変わるようなクルマの表情も、しっかりと感じてもらえるというわけだ。
もうひとつ、既存の店舗にはない特徴として挙げられるのが「デジタル化」だ。展示車のサインボードをタッチスクリーン化し、より詳細な情報を提供。店舗内でも大型スクリーンを各所に設置することで、ハードルの低い情報へのアクセスと、ショールームの雰囲気づくりに役立てている。最大の目玉は、最新式のデジタルコンフィギュレーターだ。店舗内にあるコンフィギュレータールームでは、仕様やオプションの選択による内外装の変化だけでなく、シーンの設定で“昼夜”を変更することも可能になる。リンジャー氏は、「お客さまはご自身でもウェブ上のコンフィギュレーターで大まかな仕様を選ぶことができるので、ここではよりリアルな体験を提供できるよう注力しました」と語る。
加えて、より顧客に寄り添った“おもてなし”についても言及した。「顧客へのパーソナライズされた体験の提供も大切にします。お客さまには必ずセールスが付き添うことを心がけ、収集したデータは全スタッフで共有。次回の来店時には、誰もがお客さまを知っている環境を整えます。これも、店舗で快適に過ごしてもらう大切な顧客体験のひとつと捉えています」。
これは確かに、ラグジュアリーカーのディーラーではよく行われている対応だが、クルマと同様いささかストイックな趣だったこれまでのロータスディーラーとは、イメージが大きく異なっている。そのことを伝えると、「われわれの訴求する顧客層は、今までとは変化していくと考えています。従来は、まさに男性のためのクルマというイメージでしたが、ファミリーカーを求める層や、ロータスファンのご家族の方など、今までとは異なる層も取り込んでいきたい。今のロータスなら、ラグジュアリーカーやハイパフォーマンスカーを好みつつも、スポーツカーではなくSUVを選びたい、という人にも提案ができるからです」とのことだった。
目指す道は拡大路線にあらず
リンジャー氏の言は、まさに新世代モデルによるラインナップの広がりに裏打ちされたものだ。同時に、今後の拡大路線を示唆したものとも受け取れたのだが、その点について確認したところ、これははっきりと否定された。
「店舗戦略では適切な場所とふさわしいビジネスパートナーがキーになりますが、われわれは大きなショールームではなく、小さくて機能的、そして小回りが利くショールームであることを重視します。巨大なショールームをつくり、20台もクルマを並べて……というような店づくりは考えていません。これはビジネスパートナーの投資を抑える効果だけでなく、顧客にビジネスライクではなく、フレンドリーな存在と感じてほしいからでもあります」
実際、ロータス神戸のショールームも展示できる台数は4台。併設されるピットも1台分であり、スタッフも少数となっている。まさに小回りが利くサイズ感のディーラーだ。いっぽうで、整備工場などの設備については地域にあるグループ企業の施設を活用し、万全のサービス体制を心がけるという。またロータス神戸は現状では本州最南端の拠点となるため、想定されるカバー地域も中国地方や四国までと幅広い。人員に関しては、必要となれば増強を図るとも述べていた。
以前のロータスディーラーが持ち味としたフレンドリーさを守りつつ、ラグジュアリーカーブランドとしてのサービスも意識したのが、新CIのディーラーであると理解することができた。ロータス神戸を運営するジースクエア仙台は、2025年1月25日に「ロータス仙台」もオープンさせる予定で、日本の西と東で新世代ロータスの販売を担うこととなる。現状の顧客が、生粋のクルマ好きばかりの日本において、新世代の大型EVをどのように訴求していくのだろうか? 間違いなく大きなチャレンジである。その最前線となる、ディーラー運営の手腕にも注目したい。
(文=大音安弘/写真=大音安弘、ロータス カーズ/編集=堀田剛資)
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大音 安弘
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