アウディQ6 e-tronクワトロ アドバンスト(4WD)
欠点が見当たらない 2025.06.27 試乗記 アウディの新型電気自動車(BEV)「Q6 e-tron」が、いよいよ日本に導入された。プラットフォームにパワートレイン、制御システムと、最新技術が惜しみなく投入された一台は、いかなる走りを実現しているのか? グループの未来を担う新鋭機の仕上がりを確かめた。BEVのボリュームゾーンで戦う一台
Q6 e-tronはアウディのまったく新しいBEVで、スリーサイズは全長×全幅×全高=4770×1940×1695mm。全長4.7m台、全幅1.9m前後、全高1.6m台のBEVといえば、ほかには「テスラ・モデルY」を筆頭に「ポルシェ・マカン エレクトリック」「レクサスRZ」、この秋にベールを脱ぐBMWの新型「iX3」(ノイエクラッセ第1弾)、そして今はなき「ジャガーIペース」や「メルセデス・ベンツEQC」などが当てはまる。さらには、少しだけ全長が小さい「日産アリア」や、逆に少し大きい「BYDシーライオン」も、厳密には同クラスといいがたいが、同じ市場をねらっている。つまり、Q6 e-tronは現在のBEV市場で1~2を争うボリュームゾーンで勝負するアウディなのだ。
Q6 e-tronは「e-tron GT」に続いて、グループ内でポルシェ版と同時開発されたBEVである。Q6 e-tronのポルシェ版はいうまでもなくマカン エレクトリックで、そのために新開発された「PPE(プレミアムプラットフォームエレクトリック)」を、2895mmというホイールベースともども共有する。
PPEはe-tron GTや「タイカン」の「J1プラットフォーム」に続いて、800Vで駆動する。その高電圧を利して、100kWh(4WD)のバッテリー総電力量で一充電航続距離(WLTCモード)は600km台の半ば~後半という高効率を誇る。駆動方式は1モーターの後輪駆動と2モーターの四輪駆動があるが、四輪駆動のフロントには非駆動時の抵抗が少ない非同期モーターを使う。
三元系リチウムイオン電池は液冷式で、従来は電池と一括冷却されていたモーターも、今回は電池とは別に、ドライサンプ方式の油冷システムで必要な部分だけ効率的に冷却される。BEVは高効率なので冷却不要……なんて論説も、今は昔だ。
また駆動系、ドライブアシスト、安全、インフォテインメント、快適装備、コネクト機能……の全機能を、5台の高性能ECUで統合制御する「E3 1.2」なる新開発電子アーキテクチャーも、今回のPPEで初採用された。
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エクステリアにみる差別化のさじ加減
Q6 e-tronのプロポーションは、ちょっと興味深い。完全なBEV専用設計の最新モデルにもかかわらず、同様のコンセプトで先行した「Q8 e-tron」や「Q4 e-tron」とは異なり、Aピラーの付け根を後ろに引いて、明確にフロントフードを強調しているように見える。事前知識なくQ6 e-tronの実車を目の当たりにすると、そのフード下にエンジンが搭載されていると錯覚してしまうほどだ。DNAを共有するマカン エレクトリックが、同社のスポーツカーに通じる低く短いノーズを強調しているのとは好対照だ。
また、フロントエンド中央にはおなじみのシングルフレームグリル(とおぼしきもの)があしらわれているが、マカン エレクトリックが典型的なグリルレスデザインであることから想像されるように、この部分は通気口の機能をもたない。電池用ラジエーターなどへのフレッシュエア供給は、その周辺のバンパーグリルがになう。ちなみに、一見するとヘッドライトに見える上段のLEDはデイタイムランニングライトで、本物はその下に隠されている。
同様にフロントエンド中央部に通気機能がないQ4 e-tronでは、シングルフレームグリルのモチーフは継承しつつ、それ自体の表面意匠は“ただの飾りです”感を明確にしていたが、今回はあえて錯覚させようとするデザインにも見える。先述のプロポーションといい、今後のアウディは、エンジン搭載車とBEVで統一したイメージを訴求していくようだ。
いっぽうで、肉感的に4本のタイヤを主張する前後のブリスターフェンダーは、新しいアウディのエンジン搭載車には見られない意匠である。アウディによれば、これは「クワトロブリスターフェンダー」と名づけられているそうで、e-tron GTに続くモチーフだという。今後はここでBEVであることを表現していくのか。
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国内では持て余すほどの受電能力
インテリアは、デザイン、各部の質感表現ともども、先日webCGで紹介した「A5アバント」のそれに酷似する。このことからもわかるように、Q6 e-tronはかつて「A4/S4」と呼ばれていたクラスのSUV=「Q5」のBEV版という位置づけである。ただ、このクルマは「エンジン搭載車は奇数、BEVは偶数」という、つい先日までの車名ロジック下で開発されたため、Q6を名乗る。ご承知のように、その命名ロジックは「わかりにくい」との意見から、現在は撤回済み。なので、このクルマも遠からず「Q5 e-tron」に改名する……と期待しておきたい。
今回のメディア試乗会では、試乗コースにリニューアルオープンした正規販売店「アウディ厚木」への訪問が組み込まれていた。新しいアウディ厚木の敷地内には、出力150kWの蓄電池型急速充電器が2基(4口)設置されており、そこでの充電体験をしてほしいとの趣旨だった。この充電器は、もともとアウディとポルシェ、フォルクスワーゲン(そして、2025年7月からはレクサスも加わる予定)のオーナー向け充電サービス「プレミアムチャージングアライアンス(PCA)」のものであったが、2025年5月20日からは、ブランドを問わず、すべてのユーザーに開放されている。
高い充電性能を大きな売りとするのも、Q6 e-tronの最新BEVらしいところだ。最大270kWまでの充電出力に対応しており、相応の充電インフラがあれば、残量を(10%から)80%まで回復させるのに最短21分、10分で最大255km走行分の充電が可能だという。ただしこれは海外での話で、日本のCHAdeMO規格の急速充電器を使った場合、対応する充電出力はRWDで最大112.5kW、クワトロで最大135kWとなる。なお充電システムが400Vの場合は、800Vの電池を自動的に400Vずつに2分割し、高電圧ブースターなしで最大135kWの効率的な並列充電になる。
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これまでの積み上げを感じる
試乗したのは、四輪駆動の「Q6 e-tronクワトロ」だった。100kWh電池と2モーターによるシステム出力は285kW(約387PS)。ポルシェでいうと「マカン4エレクトリック」に相当する性能だ。また、今回の試乗車には、電子制御可変ダンパーとエアサスペンションを含む「ラグジュアリーパッケージ」が追加されていた。標準はコイルと最近ハヤリの周波数に応じて減衰が機械的に切り替わるFSD(フリクエンシーセレクティブダンパー)の組み合わせとなる。
試乗ルートは、神奈川県南西の山間部にある宮ケ瀬湖付近の生活道路と、新東名高速道路を中心に設定されていた。路面は総じてきれいに整備されており、乗り心地のアラが出にくい……というコンディションを差し引いても、今回の短時間試乗では、Q6 e-tronクワトロのフットワークに、エアサス特有の突っ張るようなクセは感じられなかった。あるいは、初期のBEVにあった、フロアだけがやけに硬いアンバランスさもない。新開発のPPEではそうしたロール剛性のバランスにも配慮したといい、欧州メーカーではきっちりと、BEVづくりの知見が積み上がっていることがわかる。
シフトセレクターをBレンジにすると、ブレーキペダルを踏まずとも完全停止までする“ワンペダルドライブ”が可能となる。最近の日本車では同機能をもたないBEVが増えてきたが、アウディは「これを望むユーザーも確実にいる」との理由で残している。このあたりも日本メーカーは参考にすべきか。
フロントが非同期モーターであることから想像できるように、低負荷巡航のQ6 e-tronクワトロは後輪駆動で走る。前走車がいなくなったスキにアクセルペダルをガバ踏みしてみたが、コーナリングラインに一糸の乱れもなく、駆動配分している様子もまったく感じ取れないシームレスさだ。アウディ渾身の最新BEVの完成度は高い。撮影込み2時間半程度の試乗でツッコミを入れるのは困難をきわめる。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
アウディQ6 e-tronクワトロ アドバンスト
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1965×1670mm
ホイールベース:2895mm
車重:2450kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流誘導電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:275N・m(28.0kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:580N・m(59.1kgf・m)
システム最高出力:387PS(285kW)
タイヤ:(前)255/50R20 109W XL/(後)285/45R20 112W XL(ピレリPゼロ PZ4エレクト)
一充電走行距離:644km(WLTCモード)
交流電力量消費率:167Wh/km(WLTCモード)
価格:998万円/テスト車=1237万円
オプション装備:ボディーカラー<アスカリブルーメタリック>(22万円)/パノラマサンルーフ(25万円)/MMIパッセンジャーディスプレイ(13万円)/MMI experience pro<Bang&Olufsen 3Dプレミアムサウンドシステム[16スピーカー]+ARヘッドアップディスプレイ+アンビエントライティングプロ+ダイナミックインタラクションライト+USBクイックチャージング[フロント60W/リア100W]>(59万円)/S lineパッケージ<S lineエクステリア+Sスポーツサスペンション+e-tronスポーツサウンド+アルミホイール 5アームストラクチャー グラファイトグレーポリッシュト フロント:8.5J×20 255/50R20タイヤ/リア:10J×20 285/45R20タイヤ+マトリクスLEDヘッドライト+ダイナミックターンインディケーター+デジタルライトシグネチャー+シートヒーター[フロント/リア]+ステアリングヒーター+スポーツシート[フロント]+ステアリングホイール 3スポーク レザー マルチファンクション パドルシフト フラットトップ&ボトム+ステンレスペダルカバー+ヘッドライニング ブラック>(56万円)/ラグジュアリーパッケージ<アダプティブエアサスペンション+e-tronスポーツサウンド+デジタルOLEDリアライト+シートベンチレーション[フロント]+電動チルト/テレスコピックステアリングコラム>(64万円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2942km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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