シトロエンC4マックス ハイブリッド(FF/6AT)
宇宙一のシトロエン 2025.08.04 試乗記 「シトロエンC4」のマイナーチェンジモデルが日本に上陸。大胆なデザイン変更が施されたばかりか、シトロエンとしては初となるマイルドハイブリッドパワートレインを搭載するなど、進化の幅は非常に大きい。盛夏の富士山麓を目指した。ライドフィールが大きく変化
あら!? ふわトロの乗り心地ではなくなっている。「シトロエンC4マックス ハイブリッド」の第一印象はコレだった。
マイナーチェンジ前のC4に筆者が試乗したのは3年前の2022年1月早々のこと。クロスオーバーSUVスタイルに一新、「BlueHDi」という1.5リッターのディーゼルだったけれど、私的にはシトロエン独自の「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)」がもたらす、生クリームみたいにふわふわ、トロトロ、とろけるような乗り心地に感動した。
ああ。それなのに、フェイスリフトを受けて、シトロエン初のマイルドハイブリッド車として登場した今次のC4マックス ハイブリッドではあのふわトロのサスペンションがグッと引き締められている。ファーム、といってよいほどに。もしかして、ふわトロすぎ、という反省があったのか、あるいは、わずか10kgとはいえ、モーターと電池の追加による重量増に対応するためのセッティング変更、かもしれない。
ただし、である。安心してください。「たぶん宇宙一快適なクルマ」とシトロエンが『YouTube』等の広告で控えめに主張しているように、グッと引き締められてはいるけれど、PHCらしさは路面の凸凹を通過する際の、ふわり、といういなし方にしっかり残っている。クルマの側から4つのタイヤを路面に向かって軽く押しているみたいなバネ感があるのに、首都高速によくある目地段差も苦にしない。ダダン、ダダン、ダダン、というリズミカルな小さなショックだけを乗員のお尻と耳に残して、こともなげに通過していく。段差が待ち遠しいほどに心地よい。ファームなのに路面コンタクトのふわりとした、やさしい感じは、60という、いまどきとしては空気のいっぱい詰まった偏平率の、195mm&18インチのミシュランも大いに貢献しているはずだ。もちろん標準のアルミホイールも。
落ち着いた浮遊感
それと、もうひとつ、「アドバンストコンフォートシート」の存在を強調しておかねばならない。形状そのものは、マイチェン前よりフツウの自動車のシートっぽくなっているけれど、座面内部に用いられた15mm厚のフォームパッドは従来型と比べて細かくブロック化されているようで、感覚としてはとりわけ腰のあたりと座面の反発力が強くなっている。「空気が入っているでしょ、これ」と編集部のFさんが指で触って確認したほど、むっちりしている。空気は入ってないと思うけど……と筆者は返したものの、そういえば、その昔の「AE86」とかのシートにはシュポシュポ押して空気を入れることにより、サポート性能を変えるシステムが付いていた。
ということはさておき、ともかくお尻は下からいくつかの風船で浮かべられているような感覚がある。だからといって安心してください。不安な浮遊感ではない。健康サンダルのイボイボの、もうちょっとやさしい、落ち着いた浮遊感、という表現は「丸い四角」のようでもあるけれど、バランスボールに腰を下ろしたときのような、そういう意味ではなじみのある感覚をもたらしてくれる。
PHCとアドバンストコンフォートシートにより、「たぶん宇宙一の快適さ」は担保されている。実際、高速巡航は新型C4でも得意科目で、1.2リッターの3気筒ターボをむお~んと4000rpmあたりまで回しつつ走っていると、いまや40年ほども前の夏の終わりに菅平までドライブした「GS1200パラス」のことを思い出した。あれはよかったなぁ。筆者の最初のマイカーであるGSで、真冬に東京から宝塚まで走ったこともある。めちゃくちゃ寒かった。ヒーターを入れるとガソリン臭かったからだ。宇宙一の快適さとはいえないものの、宇宙一の楽しさだった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
必要にして十分なパワー
筆者的には初体験となるステランティスの1.2リッターマイルドハイブリッドは、現代の基準をもってするとパワフルではない。1199ccの直列3気筒ターボは最高出力136PS/5500rpm、最大トルク230N・m/1750rpmで、48Vのマイルドハイブリッドシステムのモーターは22PSと51N・mを発生する。システム最高出力は145PS。車重は1370kgだから、数値上は十分以上、にも思える。高速道路の料金所を通過時とかにアクセルを深々と踏み込むと、前輪が踊ることがあるからトルキーではある。ただし、フツウに乗っているときの出力特性はまろやかで、そのまろやかさはGSの空冷フラット4 OHVを思わせないこともない。けっしてパワフルではない。ちょっと頑張って走らせるところにフランス車らしさを筆者は見る。
エンジンと6段DCTとの間に電気モーターを挟み込んだステランティスのハイブリッドシステムは、モーターとエンジンの間にもクラッチを備えている。マイルドハイブリッドながら、このクラッチを切り離してEV走行もできちゃうスグレモノで、タコメーターによると、75km/h以上だとエンジンはつねに回っており、それ以下だとときおり停止して燃費を稼ぐ。マイルドハイブリッドの特徴として、減速時にはヒュィイイインという電子音が聞こえてくる。小排気量ゆえだろう、100km/h巡航がトップで2000rpmと意外と高回転なのに、輸入車のCセグメントにおいてトップの燃費性能、と主張される低燃費を誇る。
この3気筒ターボ、回してもわりかし静かで、路面にもよるけれど、ロードノイズも風切り音も低い。優れた静粛性が「たぶん宇宙一の快適さ」にもつながっている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
シトロエンの呪縛
弱点らしい弱点は、街なか、ストップ&ゴーの際にギクシャクすることだ。初期のDCTに見られた、発進時に引っかかるみたいなこの動きを許容する度量、あるいは覚悟がオーナーになる方には求められる。求められてはいないにしても、あったほうが受け入れやすい。
1919年に作成されたオリジナルの楕円(だえん)形ロゴの再解釈。とされる新しいダブルシェブロンのマークを中心に置いた新しい顔は、モスラの幼虫みたいだったフェイスリフト前よりシンプルで、シトロエンであることがひと目で分かって、しかも違和感なくまとまっている。
シトロエンは、シトロエンらしくあらねばならない、という呪縛に翻弄(ほんろう)されているようにも見受けられることもまた確かである。それでも、筆者は現代のシトロエニスト諸兄姉にこう伝えたい。新しいC4マックス ハイブリッドは、たぶんではなくて、やっぱり宇宙一シトロエンらしいシトロエンである、と。21世紀の前衛たらむとしているではないか、と。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=ステランティス ジャパン)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
シトロエンC4マックス ハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4375×1800×1530mm
ホイールベース:2665mm
車重:1370kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:136PS(100kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:230N・m(23.4kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:22PS(16kW)/4264rpm
モーター最大トルク:51N・m(5.2kgf・m)/750-2499rpm
システム最高出力:145PS(107kW)
タイヤ:(前)195/60R18 96H XL(後)195/60R18 96H XL(ミシュランeプライマシー)
燃費:23.2km/リッター(WLTCモード)
価格:432万円/テスト車=438万0500円
オプション装備:ボディーカラー<マンハッタングリーン>(6万0500円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:4652km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:302.6km
使用燃料:21.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:14.4km/リッター(満タン法)/14.2km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
-
日産フェアレディZ NISMO(FR/9AT)【試乗記】 2026.10.28 「日産フェアレディZ」のマイナーチェンジモデルが登場。改良の主眼はZが受け継いできたヘリテージのさらなる深化と性能の強化だという。もはやお値段1000万円(!)に迫らんとする「NISMO」の9段ATモデルを試す。
-
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】 2026.10.27 ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。
-
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.26 1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。
-
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.24 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
-
マツダCX-30 25エアエディション(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.23 マツダのコンパクトクロスオーバー「CX-30」に、一部改良で2.5リッターガソリンモデルが登場。新たなパワートレインを得た最新型は、過去のモデルからどのような進化を遂げているのか? 装備全部盛りの最上級グレードで確かめた。
-
NEW
思わずなでたくなってくる 丸いデザインのクルマ特集
2026.11.1日刊!名車列伝最近のクルマのデザインは、シャープなラインが特徴だったり、造形そのものが複雑だったり……。今月は、つるりと丸い、シンプルなエクステリアが印象的な世界の名車を日替わりで紹介します。 -
NEW
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】
2026.10.31試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。 -
「BYDラッコ」がアジアにはばたく!? ニッポンの軽自動車規格が海外勢に奪われる日
2026.10.30デイリーコラム中国のBYDが、軽BEVの「ラッコ」を日本以外でも販売すると発表! 日本独自のスモールカー規格は、はたして海外でも受け入れられるのか? 本家・日本のメーカーが、海外展開に及び腰だった理由とは? BYDが食指を動かす、軽自動車の秘めた可能性を探る。 -
メルセデスのトップからのまさかの転身 BMW日本法人の上野金太郎社長にインタビュー
2026.10.29デイリーコラムメルセデス・ベンツ日本からビー・エム・ダブリューのトップへ。いわば巨人の四番から阪神の四番のような異例の転身を遂げた上野金太郎社長。両ブランドの文化や製品の違い、今後の販売戦略などについて話を聞いた。 -
ボルボEX90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(後編)
2026.10.29あの多田哲哉の自動車放談ボルボの新世代EV「EX90」に、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが試乗。ちょっと気になったところと、クルマとしての魅力を感じたポイントについて熱く語る。 -
写真で解説する「メルセデス・ベンツ・エレクトリックGLC」
2026.10.28画像・写真メルセデス・ベンツの新たなフル電動SUV「エレクトリックGLC」がデビュー。2026年10月28日に国内での注文受け付けがスタートした。一体どんなクルマなのか、その見どころを写真とともに解説する。














































