ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ マイルドハイブリッド(FF/7AT)
センスよく 華がある 2025.07.23 試乗記 大胆なフェイスリフトにマイルドハイブリッドの追加、そして「エスプリ アルピーヌ」の設定と、話題が多かった「ルノー・キャプチャー」の大幅改良。筋金入りのフランス車好きは、これをどう見るか? 長年にわたりルノー車を愛顧する“専門家”が語る。この道30年以上の愛好家が語る
マイナーチェンジを受けたルノー・キャプチャーのアピールポイントは、いろいろある。なかでも個人的には、一新された顔つき、マイルドハイブリッドのパワーユニット設定、エスプリ アルピーヌの追加……の3点が目立っていると思う。日本車やドイツ車と比較して購入するような一般的なユーザーなら、どれも歓迎すべきポイントだろう。エッジの効いたフロントマスクは日本人好みだと思うし、マイルドハイブリッドによる実燃費の改善もありがたい。アルピーヌというブランドが加わったことも、価値を高めていると感じられる。
ではコアなフランス車好きにとってはどう映るのか? 参考になるかどうかはわからないけれど、この国のクルマと付き合い始めて30年以上になる僕の、個人的な印象をつづっていきたい。
まずフロントマスクは好印象だ。これまでルノーブランドのチーフデザイナーを務めてきたローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏がグループ全体を見る立場になり、代わりにプジョーからきたジル・ヴィダル氏がブランドのチーフデザイナーになったのが一新の理由だというが、ひとことで言えば建築物っぽいのがいい。
アッカー氏が見ていた時期のルノーは、ダイナミズムを前面に押し出していた記憶がある。でもその前にチーフデザイナーを務めていたパトリック・ルケモン氏の作品は、建築っぽかった。僕が20年以上所有する「アヴァンタイム」も好例だ。その前にルノーのデザインを統括し、4年前に残念ながらこの世を去ったロベール・オプロン氏も、彼が描いた当時のフラッグシップ「25(ヴァンサンク)」を例に出せば、共通するものがあると理解してもらえるのではないだろうか。
いずれにしても、新しいキャプチャーのデザインは、1980年代から2000年代にかけてのルノーの雰囲気に近づいたような感じがする。
それでいて懐古趣味というわけでもない。ヴィダル氏がルノーに入ってから発表された、新しいロザンジュのエンブレム、電気自動車(BEV)として生まれ変わった「ルノー5(サンク)E-TECHエレクトリック」もそうだが、新型キャプチャーもフロントのエンブレムから左右に波紋が広がるようなグラフィックなど、かなり凝っている。
彼がこれからどんなルノーを描き出してくれるのか、個人的にも楽しみだ。
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人の手で速さを引き出す楽しさがある
2点目のマイルドハイブリッドは、当然のことながら既存のフルハイブリッドとはメカニズムがまったく異なることもあり、以前からラインナップされていた「フルハイブリッドE-TECH」とはキャラクターがかなり違うのが印象的だ。
E-TECHでは、1.6リッター直4ガソリンエンジンに2軸4段、メインモーターに1軸2段のドッグクラッチ式のギアを接続。スタータージェネレーターとして働くサブモーターも加えるという、フランスらしい独創的な成り立ちだ。その加速にこれといったピークはないけれど、レスポンスは全域で不満ないうえに、燃費は20km/リッター以上を当然のようにたたき出す。そして個人的には、この総合性能の高さを日本車とはまったく異なる技術で生み出しているところに惹かれている。
いっぽうのマイルドハイブリッドは、1.3リッター直4ガソリンターボエンジンにアイドリングストップや加速アシスト、減速時のエネルギー回生を行うモーターを接続し、7段EDC(エフィシェント・デュアル・クラッチ)を組み合わせるという、純エンジン車に近い内容となる。パドルシフトが用意されることも、E-TECHとの違いだ。
このユニットは、同じSUVでは「アルカナ」にも搭載されているが、キャプチャーはそれより車両重量が軽いので、モーターアシストの体感は控えめ。逆にターボのパンチは明確に感じられる。しかもパドルでギアを変えていけるので、ドライバーが速さを引き出していくというドライビングスタイルも受け付けてくれる。
つまりハイブリッドという言葉とは裏腹に、昔ながらの操る喜びを味わえるユニットだった。史上初めてF1にターボを持ち込んだルノーらしく、熟成を感じさせつつ魅力も残すというチューニングが絶妙だ。
これら2項が好印象となると、問題(?)はエスプリ アルピーヌ、ということになるだろうか。すでに日本にはアルカナで導入されているので、初上陸というわけではないものの、いずれにせよ微妙な気持ちでこの仕様を眺めているフレンチフリークはいるかもしれない。
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控えめな演出がうれしい
そもそもマニアと呼ばれる人種は、常人では気づかないような部分に「らしさ」を感じて萌(も)えたりするもの。自分がマニアかはわからないけれど、愛車アヴァンタイムのブランド名はルノーだが、メーカーズプレートは生産を担当したマトラのもので、なぜか運転席下に装着されていることがプチ自慢ポイントだったりする。いっぽうキャプチャーのエスプリ アルピーヌには、たしかにそういう仕立てはない。
それでもこのモデルにフランスらしさを感じるのは、これ見よがしな演出ではないところだ。外観ではコンパクトなBセグメントSUVには身分不相応に思える、19インチのアルミホイールがただならぬ雰囲気を発散するが、それ以外はドアの前で青く光るAのロゴマークが控えめに主張するぐらい。「スポーツシック」というコンセプトのとおり、必要以上に自己主張していない。
キャビンもステアリングにトリコロール、それ以外にブルーとホワイトのステッチが入り、インストゥルメントパネルの助手席側とフロントシートには三色旗、さらにシートにはAのロゴマークも加わるが、すべて存在を誇示するタイプではない。それでいてステッチはセンターコンソールやドアトリムなど、かなり細部まで施されているし、シートベルトも両端にブルーのストライプを入れている。
極めつきはインパネ助手席側のブラックとブルーのグラデーションだ。アルピーヌのイメージカラーのブルーをこういう手法で取り入れた発想に感心したし、スポーツモデルだからといってカーボンパネルを選ばないセンスにも引かれた。
そんなエスプリ アルピーヌは、E-TECHとマイルドハイブリッドの両ユニットで選べるが、両方乗った経験からいえば、マイルドハイブリッドのほうが似合っていると思った。積極的に速さを引き出していけるキャラクターが、そう感じさせたのだ。
“素”の「テクノ」も気になる
それでもエスプリ アルピーヌに違和感を覚える人がいるとしたら、それは新生アルピーヌの第1弾として登場した「A110」が、あまりにも完璧なスポーツカーだったからだろう。
エンジンこそルノー・日産アライアンスの1.8リッターにターボを装着したもので、またトランスミッションも2ペダル限定ではあるけれど、軽量なアルミ製プラットフォームは公道でも楽しめるハンドリングと快適な乗り心地を両立し、同じくアルミ製のボディーは、コンパクトであるうえにクラシックA110のツボを押さえたスタイリングが素晴らしすぎる。それが証拠に、クラシックA110を持ちながら現行A110も買ったという人が、僕のまわりだけでも数人いる。熱心なファンに認められているというのは最大の財産だ。
もちろん、アルピーヌもこれ1台でブランドを継続できるとは思っていないので、かつてのアルピーヌと同じように、リアシートを持ち実用性を高めた「A290」や「A390」をリリースしている。これらの車種が発散するアルピーヌのエッセンスを、どのようなあんばいでルノーの車種にフィードバックしていくか。個人的には、キャプチャーのエスプリ アルピーヌは実にセンスよくまとまっていると感じられた。
と、ここまでエスプリ アルピーヌを語り尽くしてきておいて「なんだよ」と言われそうだが、昔からフランス車を愛してきたひとりとして最後に付け加えさせていただくと、マイルドハイブリッドのもうひとつのグレード、「テクノ」もまた気になる。
こちらはもちろんAのエンブレムもトリコロールのステッチもグラデーションのパネルもない。ホイールは18インチでデザインもカジュアルになるし、グレーのファブリックシートを組み合わせたインテリアからは、かつてのルノーに通じる合理主義が伝わってくる。それでいてシートのステッチはイエローとするなど、無味乾燥にはなっていない。
エスプリ アルピーヌのような華はないけれど、逆にフランスの実用車らしさにあふれている。こういう仕立てを生み出せるルノーも、それをラインナップに含めるルノー・ジャポンも、マニアの気持ちをわかっていると思った。
(文=森口将之/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資/車両協力=ルノージャポン)
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テスト車のデータ
ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ マイルドハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4240×1795×1590mm
ホイールベース:2640mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:158PS(116kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)/1800rpm
モーター最高出力:5PS(3.6kW)/1800-2500rpm
モーター最大トルク:19.2N・m(2.0kgf・m)/1800rpm
タイヤ:(前)225/45R19 92V/(後)225/45R19 92V(ミシュランeプライマシー2)
燃費:17.4km/リッター(WLTCモード)
価格:409万円/テスト車=423万4690円(2026年3月1日現在の本体価格:414万円)
オプション装備:ボディーカラー<グリ ラファルM>(5万9000円) ※以下、販売店オプション フロアマットプレミアム<ブラックステッチ>(2万9040円)/ETC1.0<ディスチャージレジスター含む>(2万3650円)/エマージェンシーキット(3万3000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1968.6km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:592.1km
使用燃料:39.44リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:15.0km/リッター(満タン法)/16.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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