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トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】

中流の星 2025.09.16 試乗記 今尾 直樹 人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。
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ノワールなムードを醸し出す

トヨタの中型クロスオーバーSUV、ハリアーが一部改良を受けると同時に、“ナイトシェード”なる特別仕様車が新たに設定され、2025年6月に発売された。一部改良は、ステアリングヒーターとシートヒーターを全グレードで、「おくだけ充電」を上級グレードで標準装備するとともに、プリクラッシュセーフティーの検知範囲を広げて交差点左折時の自転車に対応するなど、運転支援関連のアップデートを図っている。

これらを踏まえた最上級仕様の「Z」をベースに仕立てたのが特別仕様車の“ナイトシェード”で、夜の陰、ノワールなムードを醸し出すべく、LEDヘッドライトをダーク仕様に、グリルの一部をブラックメタリック塗装に、バンパーのロワー部分をつやありブラック塗装に、さらに車名のエンブレムとホイールをブラック塗装にしている。

Zグレードにはプラグインハイブリッドとハイブリッドの2タイプがあり、さらにこの2つのパワートレインにはFWDと電動4WD「E-Four」の設定がある。今回試乗したのは、ハイブリッドのZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”のE-Fourである。ボディー色は試乗車の「プレシャスブラックパール」だけかと思いきや、「ブラック」、それに「プラチナホワイトパールマイカ」、すなわち白もある。プレシャスブラックパールは5.5万円、プラチナホワイトパールマイカは3.85万円のオプションとなる。

車両価格はZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”のE-Fourで、541.09万円。FWDは519万円。特別仕様車ではないハイブリッドの「Z“レザーパッケージ”」はE-Fourが531.08万円、FWDが509.08万円だから、“ナイトシェード”代はおよそ10万円になる。

今回の試乗車は「トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”」。2025年6月の一部改良時に追加設定された特別仕様車だ。
今回の試乗車は「トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”」。2025年6月の一部改良時に追加設定された特別仕様車だ。拡大
“ナイトシェード”だけにヘッドランプやアッパーグリルはダーク調でコーディネート。カタログモデルではマットブラックのバンパー下部は、つやのあるブラックで仕立てられる。
“ナイトシェード”だけにヘッドランプやアッパーグリルはダーク調でコーディネート。カタログモデルではマットブラックのバンパー下部は、つやのあるブラックで仕立てられる。拡大
ロッカーモールもつやありブラック仕上げに。こうして見るとドアパネルが凝った曲面で構成されているのがよく分かる。
ロッカーモールもつやありブラック仕上げに。こうして見るとドアパネルが凝った曲面で構成されているのがよく分かる。拡大
リアバンパーの下部もつやありブラック仕上げ。「HARRIER」と「HEV」(カーボンニュートラルバッジと呼ぶ)のエンブレムもブラックだ。
リアバンパーの下部もつやありブラック仕上げ。「HARRIER」と「HEV」(カーボンニュートラルバッジと呼ぶ)のエンブレムもブラックだ。拡大
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5年目なのに売れている

現行ハリアーは2020年に登場した4代目で、5年目を迎えたいまも売れ行きは好調だ。自販連の統計の乗用車ブランド通称名別順位によると、2025年1~6月のハリアーの販売台数は3万0457台で15位。すぐ上に「ホンダ・ヴェゼル」がいて、こちらが3万1782台、すぐ下が「スズキ・ソリオ」で、2万9121台。同クラスのライバルは? というと、「スバル・フォレスター」が25位、「トヨタRAV4」が27位、「マツダCX-5」は29位、「ホンダZR-V」が31位、「日産エクストレイル」が34位。RAV4とCX-5は新型が発表済みで、あとは国内発売を待つばかり。という状況とはいえ、ハリアーの強さが光る。フォレスターの1万3798台の2倍以上の売れ行きを5年目にして維持しているのだから。

そういう強さを維持したうえでの今回の一部改良と特別仕様車の登場である。『黒の試走車』(梶山季之著/岩波現代文庫)を読了したばかりの筆者としてはナゴヤ自動車、おそるべし! と感嘆せざるを得ない。『黒の試走車』は1960年代初めの自動車メーカーの熾烈(しれつ)な新車開発競争と、その裏側で繰り広げられたスパイ合戦を描いた企業情報小説の傑作とされる。主人公のタイガー自動車・企画PR室長の朝比奈豊の目には、今回のハリアーの一部改良は2カ月後に発表される日産エクストレイルのマイナーチェンジに先駆けてのもの、に映るだろう。もっとも、1960年代と違って、勝負はすでについているわけですけれど。

一部改良の主眼は先進運転支援システムの強化。緊急被害軽減ブレーキの機能強化などが図られているが、前走車や急カーブなどに合わせて自然に緩やかなブレーキをかけてくれる「プロアクティブドライビングアシスト」の追加が大きい(全車に標準装備)。
一部改良の主眼は先進運転支援システムの強化。緊急被害軽減ブレーキの機能強化などが図られているが、前走車や急カーブなどに合わせて自然に緩やかなブレーキをかけてくれる「プロアクティブドライビングアシスト」の追加が大きい(全車に標準装備)。拡大
ホイールもブラックでコーディネート。この試乗車のタイヤ銘柄は新車装着では珍しい「トーヨー・プロクセス スポーツ」だった。
ホイールもブラックでコーディネート。この試乗車のタイヤ銘柄は新車装着では珍しい「トーヨー・プロクセス スポーツ」だった。拡大
パワーユニットは2.5リッターのハイブリッド。リアのモーターも合わせたシステム全体では最高出力222PSを発生する。
パワーユニットは2.5リッターのハイブリッド。リアのモーターも合わせたシステム全体では最高出力222PSを発生する。拡大

まさに賢い消費

閑話休題。取材前日に編集部に引き取りに行ったとき、Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”の試乗車は走行距離444kmのド新車だった。ドは強調のドなのでしょうか、それともフランス語のドで、新車のなかの新車、という意味なのでしょうか。

ともかくそのド新車の走行距離444kmのハリアーで印象的だったのは、この夏の猛暑のさなか、めちゃんこエアコンが効く。ということである。空気の粒の一つひとつがキーンと冷えている。ああ。体が凍える。幸せ。トヨタの最近の評語であるところの「幸せの量産」とはこのことではあるまいか。人命にかかわる猛暑をはね返すエアコン。ありがたや、ありがたや。

すでに見慣れた風景なので記述が遅れたけれど、室内の高級感は“レザーパッケージ”ならではである。兄弟車の「レクサスRX350h」(AWD)の709万円より、160万円以上もお求めやすい価格で、こんなにゴージャスなインテリアが手に入るのだ。賢い消費。ということばを思い浮かべるのは筆者のみにあらずだろう。

乗り心地だってRXに負けていない。国際商品のレクサスと比べると、タイヤ&ホイールはRXが21インチ、ハリアーの試乗車は19インチである。だけでなく、足まわりのセッティングがソフトに思える。ただ、ド新車ゆえ、サスペンションにあたりがついていない感もある。トーヨーの「プロクセス スポーツ」という高性能車用タイヤが選ばれていることもあるのかもしれない。ちょっとばかし底づき感というか、硬い感じがする。もっとも、これは、あえて申し上げれば、という個人の感想で、スポーティネスの表現と解することもできる。

新しい「ハリアー」の車両本体価格は2リッター純ガソリンモデル(FF)の371万0300円から。2020年のデビュー当時よりはだいぶ上がったが、この車格のクルマを300万円台からラインナップできるのはさすがトヨタだ。
新しい「ハリアー」の車両本体価格は2リッター純ガソリンモデル(FF)の371万0300円から。2020年のデビュー当時よりはだいぶ上がったが、この車格のクルマを300万円台からラインナップできるのはさすがトヨタだ。拡大
決してきらびやかではないが、室内は落ち着きのある上質な空間に仕立てられている。“レザーパッケージ”のインテリアカラーはブラウンも選べる。
決してきらびやかではないが、室内は落ち着きのある上質な空間に仕立てられている。“レザーパッケージ”のインテリアカラーはブラウンも選べる。拡大
シート表皮は本革を採用。ヒーターとベンチレーションも標準装備だ。
シート表皮は本革を採用。ヒーターとベンチレーションも標準装備だ。拡大
後席にはシートヒーターが標準で備わる。現行型のデビュー当初、トヨタは居住性はそれほど……とのアピールだったが、座面も背もたれも不満のないサイズだ。
後席にはシートヒーターが標準で備わる。現行型のデビュー当初、トヨタは居住性はそれほど……とのアピールだったが、座面も背もたれも不満のないサイズだ。拡大

ゆっくり穏やかに運転するべし

ステアリングのレスポンスは穏やかで、高速直進性がすこぶる高い。という味つけではない。日本国は新東名でも最高速120km/hだからして、それで十分。ズバーンッと、強烈に真っすぐに走ると、思わず飛ばしたくなるからご用心。キンキンに冷えた室内でゆったり、ぜいたくなレザー表皮のシートに包まれ、安全に目的地に到着すべく運転しようという、多くの方のための中型クロスオーバーSUVがハリアーであり、そういうマジメな市民の要望に見事に応えているからこそ、現行ハリアーは5年目を迎えてなお熱い支持を受けている。と筆者は考える。

そもそもハリアーは1997年発売の初代以来、高級クロスオーバーSUVのパイオニアである。前輪駆動ベースのちょっと背の高い中型ステーションワゴンの汎用(はんよう)性は、21世紀のこんにちでも揺るぎないものがある。

ハリアーに乗る際に注意すべきは、穏やかに運転する。ということである。2.5リッター直列4気筒の自然吸気エンジンを高回転まで回すようなことはなるべく避けたい。電気掃除機みたいな雑な音を発するからである。そうしなければ、室内はたいへん静かで、穏やかな心持ちで過ごせる。

“ナイトシェード”の魅力は、朝日を浴びる姿を見て知った。黒塗りのボディーと黒塗りのホイールを統一したことで、ハリアーのもともとの滑らかな塊感が強調され、よりシャープで、スタイリッシュに感じたからだ。

中流を自負する、いまどきの市民はなにを買うべきか? ハリアーである。難問に対するトヨタの完璧な答えだ。

(文=今尾直樹/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)

メーターパネルは2022年の一部改良でフル液晶化されている。ドライブモードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」の3種類のみ。
メーターパネルは2022年の一部改良でフル液晶化されている。ドライブモードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」の3種類のみ。拡大
「馬の鞍(くら)」がモチーフとされるセンターコンソールは滑らかな曲線で構成されるのが特徴だ。
「馬の鞍(くら)」がモチーフとされるセンターコンソールは滑らかな曲線で構成されるのが特徴だ。拡大
荷室の容量は408リッター。テールゲートが寝ているのは仕方ないところで、床面積はたっぷりと確保されている。
荷室の容量は408リッター。テールゲートが寝ているのは仕方ないところで、床面積はたっぷりと確保されている。拡大
後席格納時の荷室容量は1045リッター。オプションのAC100V・1500Wのコンセントは右の壁に付いている。
後席格納時の荷室容量は1045リッター。オプションのAC100V・1500Wのコンセントは右の壁に付いている。拡大

テスト車のデータ

トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4740×1855×1660mm
ホイールベース:2690mm
車重:1770kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:178PS(131kW)/5700rpm
エンジン最大トルク:221N・m(22.5kgf・m)/3600-5200rpm
フロントモーター最高出力:120PS(88kW)
フロントモーター最大トルク:202N・m(20.6kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:222PS(163kW)
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(トーヨー・プロクセス スポーツ)
燃費:21.7km/リッター(WLTCモード)
価格:541万0900円/テスト車=577万8300円
オプション装備:ボディーカラー<プレシャスブラックパール>(5万5000円)/ITSコネクト(2万7500円)/アクセサリーコンセントAC100V・100W<非常時給電システム/外部給電アタッチメント付き>(4万5100円)/調光パノラマルーフ<電動シェード&挟み込み防止機能付き>(19万8000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<エクセレントタイプ>(4万1800円)

テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:433km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:327.0km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:14.4km/リッター(車載燃費計計測値)

トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”
トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”拡大
今尾 直樹

今尾 直樹

1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。

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