クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

ボルボEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)

未来派ホットハッチ 2025.09.24 試乗記 生方 聡 ボルボのフル電動SUV「EX30」のラインナップに、高性能4WDモデル「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」が追加設定された。「ポルシェ911」に迫るという加速力や、ブラッシュアップされたパワートレインの仕上がりをワインディングロードで確かめた。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

待望の4WDは選べる2タイプ

ボルボのフル電動コンパクトSUV、EX30が一気にラインナップを拡大し、待望の4WD仕様が選べるようになった。しかも、SUVらしさを前面に押し出した「EX30クロスカントリー」と、ダイナミックな走りが自慢のEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンスの2本立てで、降雪地域のユーザーはもちろんのこと、アウトドア志向の人や、圧倒的な加速を楽しみたいと思う人など、より幅広い層にアピールできるだけに、気になっている人も多いのではないだろうか。

このうち、今回メディア向け試乗会でテストすることができたのが、2基のモーターを搭載した後者のEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス。フロントに最高出力150PS、リアに同272PSのモーターを積み4WDを実現した電気自動車(BEV)だが、外観から4WDのハイパフォーマンスモデルであることを判別するのは難しく、標準装備となる20インチホイールとテールゲートに光る「EX30」のバッジの右に小さく「TWIN PERFORMANCE」と記されるのがわずかな手がかりである。

実はEX30ツインモーターには、いまから約2年前にスペインで試乗したことがある。そのときは、後輪駆動の「EX30シングルモーター」とともにテストし、EX30シングルモーターでも十分な速さを確認したうえで、EX30ツインモーターのあまりの俊足ぶりに度肝を抜かれたのを、いまでもはっきりと覚えている。その一方で、EX30ツインモーターは反応が鋭く、乗り心地も路面によっては荒っぽい印象があって、もう少しだけマイルドになるといいなぁとも思っていた。ただ、このとき試乗できたのが、量産直前のプリプロダクションモデルだったので、今回の試乗は、その進化を確かめる好機となった。

2025年8月21日に国内導入が発表されたボルボの電気自動車「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」。ツインモーターの名称からもわかるように、前後にモーターを配置した4WD車となる。同モデルのほかに最低地上高を引き上げた「EX30クロスカントリー」なども設定され、EX30は一気に5バリエーション展開となった。
2025年8月21日に国内導入が発表されたボルボの電気自動車「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」。ツインモーターの名称からもわかるように、前後にモーターを配置した4WD車となる。同モデルのほかに最低地上高を引き上げた「EX30クロスカントリー」なども設定され、EX30は一気に5バリエーション展開となった。拡大
「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」の車両本体価格は629万円。テールゲート左下に備わる「EX30」のバッジの右側に、「TWIN PERFORMANCE」のエンブレムが追加されている。
「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」の車両本体価格は629万円。テールゲート左下に備わる「EX30」のバッジの右側に、「TWIN PERFORMANCE」のエンブレムが追加されている。拡大
グリルレスのフロントマスク左右に、ボルボ車でおなじみのT字型「トールハンマーLEDランプ」を配置。フロントまわりのデザインは後輪駆動の従来型と変わらず、ここからモデルを見分けることは難しい。
グリルレスのフロントマスク左右に、ボルボ車でおなじみのT字型「トールハンマーLEDランプ」を配置。フロントまわりのデザインは後輪駆動の従来型と変わらず、ここからモデルを見分けることは難しい。拡大
従来型の「EX30」と同じく、普通充電のほかにCHAdeMO方式の急速充電にも対応。充電ポートを左リアフェンダーに配置している。駆動用バッテリーの容量は69kWhで、一充電走行距離は535km(WLTPモード)と発表されている。
従来型の「EX30」と同じく、普通充電のほかにCHAdeMO方式の急速充電にも対応。充電ポートを左リアフェンダーに配置している。駆動用バッテリーの容量は69kWhで、一充電走行距離は535km(WLTPモード)と発表されている。拡大
ボルボ の中古車webCG中古車検索

シンプルでモダンなデザイン

ようやく再会できたEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンスは、外装が「クラウドブルー」と呼ばれる淡い青に包まれた車両であった。“ボルボ史上最も小さな電気自動車”をうたい、実際、そのボディーサイズは全長×全幅×全高=4235×1835×1550mmとコンパクトだが、サイズ以上に存在感があるとともに、ボルボらしいすっきりとしたエクステリアが上品で都会的な雰囲気を放つ。

エクステリア以上に好印象なのが、EX30のインテリア。シンプルでありながら、優しく洗練された雰囲気がなんともモダンで、エクステリアを含めてプレミアムコンパクトと呼ぶにふさわしい仕上がりである。

正直なところ、EX30のコックピットを初めて見たときにはあまりにシンプルで戸惑った。ドライバーの正面にメーターパネルはなく、ダッシュボード中央にある縦長の12.3インチタッチパネルに速度計やシフトインジケーターが統合されている。物理スイッチは省かれ、フロントドアにあるはずのパワーウィンドウやドアミラーのスイッチが見当たらず、どう運転を始めたらよいのか困るくらいなのだ。もちろん、慣れてしまえば、シンプルすぎるコックピットに不便は感じなくなり、このクルマに欠かせない魅力とも思えてきた。

試乗車のシートは「ブリーズ」と呼ばれるカラーで彩られ、リサイクル素材とバイオ素材が組み合わされたダッシュパネルやドアトリムがEX30の優しい雰囲気をさらに際立たせている。リサイクル素材を使用した「パーティクルパネル」も実にユニークである。

「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4235×1835×1550mmで、従来型と同数値。車重は「EX30ウルトラ シングルモーター エクステンデッドレンジ」が1790kgであるのに対してこちらは1880kgとなる。
「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4235×1835×1550mmで、従来型と同数値。車重は「EX30ウルトラ シングルモーター エクステンデッドレンジ」が1790kgであるのに対してこちらは1880kgとなる。拡大
12.3インチの縦型センターディスプレイをダッシュボードの中央に置くシンプルなコックピットは、従来モデルのデザインを踏襲。ステアリングコラム右側にレバータイプのシフトセレクターが備わるのも同じ。慣れてしまえばこの無駄のなさが「EX30」に欠かせない魅力と思えてくる。
12.3インチの縦型センターディスプレイをダッシュボードの中央に置くシンプルなコックピットは、従来モデルのデザインを踏襲。ステアリングコラム右側にレバータイプのシフトセレクターが備わるのも同じ。慣れてしまえばこの無駄のなさが「EX30」に欠かせない魅力と思えてくる。拡大
リサイクル素材とバイオ素材が組み合わされたダッシュボードパネルやドアトリムが「EX30」の優しい雰囲気をさらに際立たせている。「クラウドブルー」と「オニキスブラック」の外板色車両には、廃棄された塩化ビニールや廃ブラスチックを粉砕してつくった「パーティクル」(写真)と呼ばれるデコラティブパネルの内装が組み合わされる。
リサイクル素材とバイオ素材が組み合わされたダッシュボードパネルやドアトリムが「EX30」の優しい雰囲気をさらに際立たせている。「クラウドブルー」と「オニキスブラック」の外板色車両には、廃棄された塩化ビニールや廃ブラスチックを粉砕してつくった「パーティクル」(写真)と呼ばれるデコラティブパネルの内装が組み合わされる。拡大

本格スポーツカー顔負けの加速力

EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンスには「レンジ」「標準」「パフォーマンス」の3つの走行モードが用意されている。標準モードの場合は、ふだんはほぼリアモーターだけで走り、路面状況やアクセルペダルの踏み方によってフロントモーターが加勢する。まずは標準モードで走りだすと、軽くアクセルペダルを踏むかぎりは穏やかな動きをみせ、スポーツモデルであることを意識せずに済む。もちろんその場合でも、加速の素早さや、余裕あるトルクなどのおかげで、ストレスなくドライブできるのは、BEVならではの魅力である。

一方、アクセルペダルにのせた右足に力を込めると、一気にトルクを増し、鋭い加速をみせる変貌ぶりに驚かされる。圧巻はパフォーマンスモードで、切り替えた瞬間から力強さを増すとともにアクセルレスポンスが高まり、ここからアクセルペダルを踏み込めば、まさにスポーツカー顔負けの加速により、上半身がシートバックに押しつけられる。カタログによればパフォーマンスモードでの0-100km/h加速は3.6秒。「ポルシェ911カレラS/911カレラ4S」のタイムが3.5秒だから、ほぼ同じダッシュ力を、このコンパクトなSUVで味わえるのはなかなか痛快である。

それでいて、一充電走行距離は535kmであり、これは同じサイズのバッテリーを搭載する後輪駆動の「EX30プラス シングルモーター エクステンデッドレンジ」に対して25km短いだけである。パワーが増え4WDになっても、電費や一充電走行距離への影響が小さいのは最新のBEVらしいところだ。

「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」には、「レンジ」「標準」「パフォーマンス」の3つの走行モードが用意されている。モードの切り替えは、タッチ式のセンターディスプレイを介して行う。
「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」には、「レンジ」「標準」「パフォーマンス」の3つの走行モードが用意されている。モードの切り替えは、タッチ式のセンターディスプレイを介して行う。拡大
「パフォーマンス」モードを選択した「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」の0-100km/h加速は3.6秒。「ポルシェ911カレラS/911カレラ4S」とほぼ同じダッシュ力を、このコンパクトなSUVで味わえるのはなかなか痛快である。
「パフォーマンス」モードを選択した「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」の0-100km/h加速は3.6秒。「ポルシェ911カレラS/911カレラ4S」とほぼ同じダッシュ力を、このコンパクトなSUVで味わえるのはなかなか痛快である。拡大
床面が2段階の調整式となる後部荷室の容量は318リッター。フロントのボンネット下にも充電ケーブルなどを収容可能な「フランク」と呼ばれる収納スペースが設けられている。
床面が2段階の調整式となる後部荷室の容量は318リッター。フロントのボンネット下にも充電ケーブルなどを収容可能な「フランク」と呼ばれる収納スペースが設けられている。拡大
今回の試乗車は、標準で装備されるダイヤモンドカットとブラックのコンビネーションデザインが目を引く20インチホイールに、前後とも245/40R20サイズの「グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンスSUV」タイヤを組み合わせていた。
今回の試乗車は、標準で装備されるダイヤモンドカットとブラックのコンビネーションデザインが目を引く20インチホイールに、前後とも245/40R20サイズの「グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンスSUV」タイヤを組み合わせていた。拡大

ブラッシュアップされた走り

EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンスの足まわりは、フロントがマクファーソンストラット式、リアがマルチリンク式で、構造は後輪駆動と同じだが、フロントモーターの追加にともなう重量増やパワーアップに対応するためにスプリングやダンパーが強化されている。そのため、乗り心地は多少硬めの印象で、路面によってはショックを拾い、それが気になることもあった。それでも、十分に快適なレベルを確保。スペインで試乗したプリプロダクションモデルに比べて明らかにブラッシュアップされており、まずはひと安心である。

ブラッシュアップされたといえば、BEVには欠かせない回生ブレーキも、プリプロダクションモデルや導入初期モデルに比べて扱いやすくなったのがうれしいところ。ウルトラ ツインモーター パフォーマンスを含めたEX30の最新版では、回生ブレーキの強さが「OFF」「低」「高」の3段階とされ、アクセルをオフしたときに「高」なら以前よりも強いレベルの回生ブレーキが使える一方、「OFF」ならいわゆるコースティングさせることができるようになるなど、好みの設定が選べるようになった。ステアリングホイール左の「カスタマイズボタン」にショートカットを登録しておけば、回生ブレーキの強さをボタンひとつで切り替えられるのも便利である。

さらに、導入当初には急速充電中の電力が表示されず不便だったのが、最新版ではリアルタイムでわかるようになったり、アダプティブクルーズコントロールの距離設定が乗るたびに毎回リセットされていたのが保持されるようになったりと、不満に感じていたことが次々と解消され、しかも、すでに販売済みの車両に関しても、OTA(Over-The-Air)アップデートで対応できるというのもうれしい。

ちなみに、2基のモーターによってシステム最高出力422PSを発生するパワートレインはEX30クロスカントリーと同じである。タフな印象のエクステリアや高めの最低地上高などが気に入ればEX30クロスカントリー、都会的なデザインやスポーティーさを重視すればEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンスというすみ分けになるだろう。さらに、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用するエントリーモデルの「EX30プラス シングルモーター」なども加わったことで、日本のBEV市場において、EX30が一気に存在感を高めそうな予感である。

(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を含めた最新のEX30では、回生ブレーキの利き方を「OFF」「低」「高」の3段階から選択できるようになった。
「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を含めた最新のEX30では、回生ブレーキの利き方を「OFF」「低」「高」の3段階から選択できるようになった。拡大
明るいブルー系の「ブリーズ」と呼ばれるカラーで、シート表皮やドアのインナーパネルがコーディネートされた試乗車のインテリア。「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」では、フロントシートにヒーター機能が標準で装備される。
明るいブルー系の「ブリーズ」と呼ばれるカラーで、シート表皮やドアのインナーパネルがコーディネートされた試乗車のインテリア。「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」では、フロントシートにヒーター機能が標準で装備される。拡大
後席スペースは、後輪駆動モデルの「EX30」と同じく、広くはないが大人がきちんと座れる空間が確保されている。背もたれには60:40の分割可倒機構が備わり、積載物に合わせてアレンジが可能だ。
後席スペースは、後輪駆動モデルの「EX30」と同じく、広くはないが大人がきちんと座れる空間が確保されている。背もたれには60:40の分割可倒機構が備わり、積載物に合わせてアレンジが可能だ。拡大
センターコンソールに2段階で引き出せるドリンクホルダーを内蔵。その下部にはカバー付きの収納スペースも用意されている。
センターコンソールに2段階で引き出せるドリンクホルダーを内蔵。その下部にはカバー付きの収納スペースも用意されている。拡大
2基のモーターによってシステム最高出力422PSを発生する4WDのパワートレインは、同時に導入された「EX30クロスカントリー」と同一。乗り心地はEX30クロスカントリーよりも硬めの印象だが、十分に快適といえるレベルを確保している。
2基のモーターによってシステム最高出力422PSを発生する4WDのパワートレインは、同時に導入された「EX30クロスカントリー」と同一。乗り心地はEX30クロスカントリーよりも硬めの印象だが、十分に快適といえるレベルを確保している。拡大

テスト車のデータ

ボルボEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4235×1835×1550mm
ホイールベース:2650mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
モーター:永久磁石同期電動機
フロントモーター最高出力:156PS(115kW)/6000-6500rpm
フロントモーター最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/5000rpm
リアモーター最高出力:272PS(200kW)/6500-8000rpm
リアモーター最大トルク:343N・m(35.0kgf・m)/5345rpm
タイヤ:(前)245/40R20 99V/(後)245/40R20 99V(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンスSUV)
一充電走行距離:535km(WLTCモード)
交流電力量消費率:145Wh/km(WLTCモード)
価格:629万円/テスト車=651万2750円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー<スタンダード>(17万3250円)/UV&IRカットフィルム(4万9500円)

テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1327km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

ボルボEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス
ボルボEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス拡大
 
ボルボEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】の画像拡大
生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

試乗記の新着記事
試乗記の記事をもっとみる
ボルボ の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。